「いないいないばあっ!」のうーたんは、初めての子育ての戦友だった―― 20年間親子を見守り、卒業していく“赤ちゃんの妖精”に伝えたいこと(2/2 ページ)
うーたんはものすごく力強い味方だった
私はうーたんと一緒に息子を育ててきたといっても過言ではないかもしれない。息子は、うーたんが映ってるテレビに向かって伝い歩きをしはじめ、うーたんと一緒に歯磨きを覚え、お片付けをし、ちっちをし、いろんな「はじめて」を一緒に体験した。いつもいつも一緒だった。
理由のわからないグズリやご機嫌斜めでも、うーたんをフリフリするとたちまち笑顔になったし、予防接種や健診、車のおでかけも、うーたんさえそばにいれば、なんとかなったことも多かった。初めての育児に戸惑い、ほとんどワンオペで息子をみていて、不安で心細くてしかたがなかった私にとって、ものすごく力強い味方だった。
いつもどんなときも、元気に笑顔でカラカラ揺れながら、息子と私のそばに居てくれたうーたん。うーたんがいなかったらどうなっていたことか。こう思っているのは私だけじゃないだろう。きっと日本中の母親が、夫よりもうーたんの方が100倍頼もしい子育ての味方だと思っていたに違いない。
「うーたん、げんきげんきぃーぇぁ!」の声をまねして頑張った母親は日本にたくさんいると思う。私もかなりうーたんボイスの練習をしたものだ。「うーたんて、なんでいつも机の上にいるの?」と聞かれて、死ぬほど困ったことも、今ではいい思い出だ。
そんなうーたんがこの春、卒業か……。
うーたんの卒業を12歳の息子に伝えると……
あのころうーたんとともにぴょんぴょんしていた息子も、4月からは小学6年生、12歳だ。親友のうーたんの卒業、彼にとってもさぞかしショックだろう。泣き崩れてしまうかもしれない……。けれど、知らせない訳にはいかない。学校から帰宅後、恐る恐る知らせてみた。すると……。
「いないいないばぁっ? うーたん? わんわんのとなりにいた靴のキャラだっけ?」
すっかり忘れてるやん……!
違う! それはクックー(靴のキャラ)だ。どちらかというと「うーたんの仲間たち」的なその他のサブキャラだ。
そっか、あんなに大好きだったのに、忘れちゃったのか……。切なくて、胸がギューっとした。どうやら、うーたんへの思い入れが強いのは、息子本人よりも私の方だったみたいだ。
はじめは苦手だったけれど、日々をともに過ごし、苦手意識はいつしか感謝と尊敬に代わり、最終的には全幅の信頼を置ける子育ての戦友になっていったうーたん。息子が幼稚園に上がったころからいつの間にか見なくなっていて、7年ぶりにこうして再会を果たしたうーたんは、今も変わらず、テレビの中で元気に笑っていた。
きみってやつは!
そうやって、今までもずっとそこで子どもたちに笑いかけ続け、今も日本中の親たちの戦友でいたんだな。
うーたん。きみがいてくれて、どれだけ助かったことか。息子は今も元気にしているよ。もちろん寂しくてしょうがないけれど、感謝の気持ちでいっぱいだよ。うーたんとの日々は、初めての育児の辛さや、楽しさ、うれしさとともに、かけがえのない思い出になっているよ。
目を瞑ってあのころの息子の姿を思い浮かべると、その手や胸には、いつもうーたんのぬいぐるみが一緒にいてくれる。一緒に育ててくれて、本当にありがとう。卒業しても、これからもずっと忘れないよ。
いよいよ明日、「いないいないばあっ!」を去るうーたん。私はかつての戦友の、最後の勇姿を見届けようと思う。
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