「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」レビュー 映画史上ナンバーワンの「密度」と「飢餓感」(1/3 ページ)
「万全の態勢で見てほしい」作品。
6月16日よりアニメ映画「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」が公開されている。まず、見る前に知っていただきたいこととして、4つの注意点を挙げておきたい。
【4つの注意点】
- 「スパイダーマン:スパイダーバース」の明確な続編なので、そちらを先に見ておくことを強くおすすめする
- すさまじいアニメの表現が超高密度でぶっ続くので、体調をなるべくよくして見たほうがいい
- 上映時間が2時間20分とアニメ映画としてはかなりの長尺なので、鑑賞直前のトイレは必須
- ネタバレ注意案件なので、ネタバレを踏む前に早めに見に行った方がいい
これほどまでに、「万全の態勢で見てほしい」作品なのだ。
事実、筆者は脳が処理できる情報のキャパシティーをはるかに超えていたためか、本作を見た直後にものすごい疲労に襲われ、その数時間後に泥のように眠った。本作は同じ日に「ザ・フラッシュ」も公開され、アメコミヒーロー映画同士の真っ向からの対決となっているが、それぞれ別の日に見たほうが良いかもしれない。
「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」は海外ではすでに大ヒットを記録しており、全米では公開からわずか3日間で1億2000万ドルと、前作「スパイダーマン:スパイダーバース」の3倍以上のオープニング興行収入を記録。観客からの評価もおそろしく高く、米批評サービスのIMDbでは10点満点中9.0点、Rotten Tomatoesでは批評家支持率96%・オーディエンス支持率95%を記録。アニメ映画という枠組みどころか、全ての映画の中でトップクラスのスコアにまで到達している。
日本のSNSでの公式ハッシュタグが「#今年一番スゴいアニメの話をしよう」というのは、さすがに「感想をそんな風に統一させようとしないでよ!」「2023年はこれからも注目のアニメ映画が続々と公開されるからまだわからないだろ!」と文句も言いたくなったが、本編を見ればなるほど、そこまでのハッシュタグをつける自信のほども納得できるものだった。
なお、スパイダーマンに詳しいとより楽しめる小ネタも仕込まれているが、知らなくても物語は問題なく楽しめるので、その点は安心してほしい。最低限の予習は「スパイダーマン:スパイダーバース」だけでOKだと、あらためて告げておく。大きなネタバレにならない範囲で、さらなる魅力を記していこう。
キャラクターを“深掘り”する続編に
あらすじはこうだ。スパイダーマンとして悪党と戦う毎日を送っていたマイルス・モラレスは、15歳になり人生の進路に向き合う時期を迎え、両親との関係にも悩んでいた。ある日、彼はかつて一緒に戦ったグウェン・ステイシーに導かれ、あらゆるユニバースから集結したスパイダーマンたちと出会うのだが……。
本作はキャラクターを“深掘り”する、それだけを取り出せばスタンダードな続編ともいえる。まるで主役が交代したかのように、グウェンの暗い過去、はたまた彼女の現在進行形の危機的状況が明確に描かれ、それは前作から少し大人になったマイルスがぶつかる問題とも一時的にシンクロする。2人の悩みは現実の少年少女にとっても普遍的なものであると同時に、スパイダーマンの作品群でおなじみの「大いなる力には大いなる責任が伴う」「自らの運命に向き合う」様も描かれている。
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