パリの日本大好き祭り「Japan Expo」で熱狂を感じてきた 会場&コスプレレポート(4/4 ページ)

» 2023年07月21日 18時01分 公開
[松岡洋ねとらぼ]
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パリにある「アニメの舞台」

 1日だけ市内観光する時間がとれたので、アニメの舞台を訪れてきました。まずはエッフェル塔。ここは「ふしぎの海のナディア」の第1話でナディアとジャンが出会った場所。また「シン・エヴァンゲリオン劇場版」ではマリがエッフェル塔を武器にして戦いました。筆者は公園側から行きましたが、公園側は柵で囲まれていたためセーヌ川からのほうが撮影に向いていました。

公園側から
セーヌ川から

 続いて凱旋門。「シン・エヴァンゲリオン」でEuro NERVが保管してあったエヴァの部品を調達するため、リツコたちが降り立った場所です。凱旋門は道路に囲まれており、地下道を通っていきます。

凱旋門
凱旋門への地下道入り口

 市内散策中に書店を見つけたので取材をお願いしました。ごく普通の書店ですが、一角にフランスのバンドデシネと漫画の棚が並んでいます。撮影しているとお母さんと女の子がやってきて、『推しの子』第1巻を大事そうに抱えて買っていきました。大好きとのことで、フランスでの『推しの子』人気恐るべし。

 バンドデシネの平台にはフランスでの視聴率100%を記録して話題になった「グレンダイザー」(フランス名ゴルドラック)のフランス人作家たちによるリメイク版が展示されており、今でもその人気のほどがうかがえます。

書店外観
バンドデシネ棚の一部
漫画棚の一部
漫画の平台
バンドデシネの平台

取材後記:ジャポニスム2.0

 幕末から明治初期にかけてパリを中心としてジャポニスムと呼ばれる日本美術ブームが起きました。異国趣味のジャポネズリーと呼ばれる前駆段階を経て、幕府と薩摩藩がパリ万博に出展した民芸品や工芸品に対してパリ庶民たちが熱狂し、ジャポニスムへと開花します。

 よく知られているのは印象派に大きな影響を与えた浮世絵ですが、庶民たちにとってはこれらの民芸品や工芸品のほうが身近な存在で、その技巧に惹かれていたのです。

 その後、1970年代に日本のアニメがフランスで放映され、熱狂的な人気となりました。特に「UFOロボ グレンダイザー」(フランス名ゴルドラック)が視聴率100%という数字をたたき出し、日本でもこのニュースが新聞で報道されました。当時テレビを見ていたフランスの子どもたち全員がゴルドラックの洗礼を受けたのみならず、フランスの影響下にあった中東地域でも同様にゴルドラックの人気が波及し、現在サウジアラビアの皇太子肝いりでリメイクが進行中です。

 以来日本のアニメとその原作としての漫画はフランスの文化の一部として組み込まれ、街の書店にBDと漫画の棚が並ぶことがごく普通の光景となっています。かつてのジャポニスムは30年ほどで終わりましたが、初音ミク姿のお母さんやグレンダイザーのシャツを着たお父さんのように親子で楽しむ姿を見ていると、すでに45年を経過したジャポニスム2.0とも言えるこの流行が、この先どのくらい続くのかが楽しみになりました。

 ジャポニスムの時代のオスカー・ワイルドの著作『Decay of Lying』の中に、このような一節があります。

「日本全体が純然たる創作であって、そんな国も人も存在しない」

 この一節は日本を理想として熱狂する知人に対し諫めたものですが、今一つ筆者の理解を超えていました。しかし、実際にパリのJapan Expoに4日間通い詰めてようやくこの一節の意味を理解できました。

 会場では連日カラオケの前に集まって日本語でアニソンを大合唱する様子など、オスカー・ワイルドが目にしたのと同種であろう“熱狂”の光景を追体験してしまったのです。あまりの熱狂ぶりに心の中では「熱狂的過ぎるでしょ、みんなちょっと鎮まって!」と。でも半分くらいまた来年来たいと思っています。


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