要求は「商品の全廃棄」“AFURI”商標巡り酒造メーカーがトラブル告発 ラーメン店社長は反論「私、間違ってるでしょうか?」(1/2 ページ)
両者の主張は。
神奈川県伊勢原市の酒造メーカー「吉川醸造」は、ラーメンチェーン店「AFURI」(以下、AFURI社)から「AFURI」の商標を巡って提訴されたと8月22日に公式サイトで発表し、商品の完全廃棄処分を求められた経緯などを明かしました。一方で、AFURI社の社長も自身のFacebookで反論するなど、事態は泥沼の様相を呈しています。
吉川醸造は雨降山(あふりやま)の別名で知られ、「大山阿夫利(あふり)神社」で有名な「大山」がある伊勢原市の酒造メーカー。日本酒「雨降」を看板商品としています。
吉川醸造の合頭義理代表取締役名義の発表によると、2022年8月にAFURI社から日本酒「雨降(あふり)」に付された商標が、AFURI社の商標権を侵害している旨の文書を受け取ったといます。文書は「”AFURI”と記載した商標の使用は、AFURI社の著名性にフリーライドし、その商標権を侵害するもの」だとし、吉川醸造の商品を全て廃棄処分することなどを要求するものでした。その後、双方弁護士を交え協議を重ねたものの、不調に終わり、AFURI社が商標の使用差止や損害賠償等を求めて東京地方裁判所に提訴したといいます。
日本酒「雨降」の由来について吉川醸造は「丹沢大山の古名『あめふり(あふり)山』と、酒造の神を祀る近隣の大山阿夫利神社にちなんで命名したもの」だとし、ラベル「雨降」の文字も「阿夫利神社の神職に揮毫(きごう)していただいたもの」としました。
吉川醸造は「『雨降』の読み方としてローマ字のAFURIと記載していること、またそもそも『阿夫利』『あふり』は地域・歴史・文化に根差した名称であることから、当社商標の使用はAFURI社の商標権を侵害するものではないと考えている」とし、「訴訟に至ったことは誠に残念」だとしました。
また、AFURI社は現在「阿夫利」「AFURI」で構成される商標を、「ラーメン」以外に150種類以上の物品・役務で取得していると説明。さらに、「伊勢原市の施設にAFURI社に対する商標関連の苦情文が届いたと聞いたこと、また最近では『あふり』に関する名称を持つ事業を営む地元企業の代表からも不安を打ち明けられた」とし、「当社としても一定の情報開示をする責任があるのではないかと考えるに至りました」と、今回の発表意図を説明しました。
この発表に対し、ネット上では「これはAFURIいかんと思うわ」「大山も阿夫利神社もラーメン店の物じゃない」「阿夫利山を独り占めしようとすんな」など、AFURI社に対する批判的な意見が多く聞かれています。
AFURI社社長「商標ゴロみたいな無粋なことはしたくない」
一方、AFURI社代表取締役社長の中村比呂人氏も24日、自身のFacebookで今回の問題について言及しました。AFURI社は2001年に大山の麓にある神奈川県厚木市で創業。大山の天然水を使ったスープを売りに、国内16店舗を展開しています。
中村氏によると、AFURI社は「阿夫利山の麓で自分たちでオリジナルの日本酒やビールをつくれる様になる」というプロジェクトのため、「お酒」としての「AFURI」の商標を取得していたのこと。その後、吉川醸造が「雨降AFURI」ブランドの日本酒を販売したことを受け、AFURI社の商標を侵害しているとして、吉川醸造の合頭社長と、日本酒の名称変更について話し合いを行ったと説明します。
「例えば、『雨降』と書いて、『UKOU』と読ませるのはいかがですかと。そうすれば、阿夫利山は、元々は『雨降り山』から転じていると我々と同じルーツである事を伝えられるし、海外のAFURIの店舗でも吉川醸造さんの日本酒を同じ水源の仕込み水を使っている同郷の日本酒として全面的に推せますし。共にタッグを組んで世界に打って出ましょう!などなど、様々な提案をしました」
しかし、吉川醸造との話し合いはうまくいかず「本当にやむなくですが裁判所の判断を仰ぐ事にした」といいます。中村氏は「先方と話をさせていただいてから一年近く、毎日、家の窓から阿夫利山を仰ぎ見ては、自分は傲慢なのだろうかと自問自答を繰り返した」としつつ、自身の行動は正当なものだと主張しています。
「何度考えても、我々はビジネスのルールに則った正当な手続きを踏んでるだけなんですよね。毎朝、お水を変えてご挨拶をしている阿夫利神社の神様のお札の前でも、『おれ胸張って居られるな』と思うんですけどね。どうなんでしょう?私、間違ってるでしょうか?」
また、ネット上の批判についても言及し、「ネットでは、地域の名称である『あふり』を独占するなんてとんでもない!と言う事になってますが。我々は、新しいビジネスを始める際に、為すべきプロセスとして必要な分だけ商標を取得している訳で、網羅的に独占する意図がある訳では無いです。商標を取るのにはそれなりにお金も掛かりますし。何より、商標ゴロみたいな無粋なことはしたくないですし」と反論しました。
ねとらぼ編集部は、今回の吉川醸造の発表に対する公式見解をAFURI社に求めています。
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