三井不動産が無断改変したとされるアート作品、覆っていたシートの剥離作業が完了 「カッターナイフと思われる傷」……(1/2 ページ)

2月に被害を訴え、4月に作品が返還されていました。

» 2023年09月19日 14時55分 公開
[ねとらぼ]

 アーティストの吉田朗さんは、三井不動産らにラッピングシートなどを用いて無断で改変されたと訴えていたアート作品(関連記事)について、約5カ月間におよぶラッピングシートの剥離作業が完了した、と公式サイトとSNSで公表しました。これから本格的な作品の修復作業に入るとしています。

三井不動産ら 無断改変か 吉田朗さん 渋谷猫張り子 ラッピングシートの剥離作業が完了した「渋谷猫張り子」(画像は特設サイトより)

 吉田さんとそのマネジメントを手がけるユカリアート代表の三潴ゆかりさんが「まるで別の姿に無断で改変された」と訴えていたのは、巨大な招き猫のような見た目の「渋谷猫張り子」。三井不動産が所有する商業施設やホテルなどが一体となった「sequence MIYASHITAPARK」(東京都渋谷区)の最上階にあるバー「SOAK」に設置されていました。

 吉田さんらが2023年2月に公式サイトなどに掲載した声明によると、吉田さんは2019年8月、設置当時SOAKの運営会社だったBAKERU(当時は東京ピストル)から制作依頼を受け、作品を制作。その約2年後の2022年9月、ユカリアートのスタッフがSOAKのInstagram投稿を見て、作品の改変に気づいたといいます。

 その改変は、白色の文字やマークが多数描かれた真っ黒なラッピングシートで、作品全体と台座部分を覆い隠すというものでした。吉田さんは著作権や著作者人格権は納品後も作者に帰属しているため、作品に変更を加える場合は許可が必要にもかかわらず、無断で作品が改変されたと主張していました。

 吉田さんらがその当時、BAKERUに連絡すると、SOAKの事業をマザーエンタテイメントに譲渡したと知らされたとのこと。また、改変はマザーエンタテイメントが三井不動産の許可を得たうえで実施したとの回答を、三井不動産とマザーエンターテインメントの両社から得たとしています。

除去作業中に「カッターナイフと思われる数多くの傷」を目にすることに

 その後、2023年3月、吉田さんらはオンライン署名サイト「Change.org」で三井不動産に作品の返還と所有権の作者への返還を求める署名活動を開始。1万筆超の署名が集まり、4月12日に吉田さんのもとに作品が返還されました。

 吉田さんは作品の状態を確認および記録した後、4月末からラッピングシートの除去を開始しました。吉田さんによると、ラッピングシートの接着には下地剤として、時間の経過とともに接着力を増す「ダイノックプライマー」が使用されていたといいます。そのため、無理に除去を進めると作品の塗膜ごと剥がれてしまう恐れがあり、小さな面積ごとにヒートガンで温めながらの作業を約5カ月間繰り返したとのこと。それでも、何カ所かは塗膜ごと剥がれてしまったと振り返りました。

三井不動産ら 無断改変か 吉田朗さん 渋谷猫張り子 一部は塗膜ごと剥がれてしまった作品の正面(画像は特設サイトより)
三井不動産ら 無断改変か 吉田朗さん 渋谷猫張り子 一部は塗膜ごと剥がれてしまった作品の背面(画像は特設サイトより)

 吉田さんは「剥離作業を進めていく中で、カッターナイフによって付けられたと思われる、数多くの傷を目にすることになりました。おそらく、ラッピングフィルムを貼る際に継ぎ目のラインを整えるために、作品に直接カッターナイフを当ててフィルムをカットしたものだと思われます。このような、明らかに傷が残る工法での改変を行なっていることから、作品を元の姿に戻すことを一切想定していない、不可逆的な改変が行われたのだということを、改めて感じながら剥離を行う日々でした」と、その苦労を明かしています。

 また、応援してくれた人々などに対して、「作品の返還のためにいただいた1万超に渡る署名や、SNSで頂いた多くのコメントなど、たくさんの方からの応援が心の支えになりました。作品修復は剥離が終わっただけで、まだ折り返し地点ではありますが、今一度、御礼申し上げます」と感謝を示しました。今後については、「これから改めて作品に加えられたダメージ状態の記録をとり、傷つけられた作品の修復作業に入っていこうと思います」と述べています。

 なお、ねとらぼ編集部が2月末(記事は3月1日に掲載)に、三井不動産およびマザーエンタテイメントに事実関係や今後の対応などについて問い合わせたところ、三井不動産の広報担当者は「この度は、弊社運営施設に設置されたアートに関し、アーティストおよび関係者の方への配慮を欠く対応を行ったことをお詫び申し上げます。本件につきましては先方と協議中のため、詳細については回答を差し控えさせていただきます」と回答。一方で、マザーエンタテイメントからは期日までには回答を得られませんでした。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/21/news027.jpg 大きくなったらかっこいいシェパードになると思っていたら…… 予想を上回るビフォーアフターに大反響!→さらに1年半後の今は? 飼い主に聞いた
  2. /nl/articles/2411/20/news049.jpg 高校生の時に出会った2人→つらい闘病生活を経て、10年後…… 山あり谷ありを乗り越えた“現在の姿”が話題
  3. /nl/articles/2411/20/news222.jpg ディズニーシーのお菓子が「異様に美味しい」→実は……“驚愕の事実”に9.6万いいね 「納得した」「これはガチ」
  4. /nl/articles/2411/20/news050.jpg プロが教える「PCをオフにする時はシャットダウンとスリープ、どっちがいいの?」 理想の選択肢は意外にも…… 「有益な情報ありがとう」「感動しました
  5. /nl/articles/2411/20/news054.jpg 「防音室を買ったVTuberの末路」 本格的な防音室を導入したら居住空間がとんでもないことになった新人VTuberにその後を聞いた
  6. /nl/articles/2411/20/news027.jpg 「こんなことが出来るのか」ハードオフの中古電子辞書Linux化 → “阿部寛のホームページ”にアクセス その表示速度は……「電子辞書にLinuxはロマンある」
  7. /nl/articles/2411/21/news083.jpg 間寛平、33年間乗り続ける“希少な国産愛車”を披露 大の車好きで「スカイラインGT-R R34」も所有
  8. /nl/articles/2411/21/news085.jpg 「もしかしてネタバレ?」 “timeleszオーディション”候補者がテレビ局を退社 ディズニーの“船長”としても話題
  9. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
  10. /nl/articles/2411/21/news018.jpg グルーミングが出来ない生まれたての子猫、とんでもない体勢になり…… 想像以上のへたくそっぷりに「どこにも届いてないww」「反則級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた