「出前館」崩れた寿司を素手で直す配達員 「不衛生」「怖すぎる」と物議 問題の背景にある3つの論点(2/3 ページ)
このような構造的な問題を抱えている宅配サービスだが、当然ながら食の安全は生命・健康にかかわるものであり、「問題の発生は仕方ない」では済まされないだろう。では、このような事態をどのように予防すれば良いか。さまざまな方法が考えられるが、ここでは3つだけ言及しておこう。
1. 宅配企業による配達員への研修の強化
第一に、配達員の雇用形態の見直しについても積極的に議論されるべきだが、やはり配達員に対する研修の強化は避けられない。ただ研修動画を視聴し、簡単なテストを受けるだけでなく、研修内容の強化および研修時間の拡充を図り、配達員の質の均一化を図るべきだろう。定期的に監査したりフィードバックしたりすることで、中長期の質の担保を図れるとなお良いと思われる。
また、昨今は配達員の行動はどこでも消費者に見られており、撮影され、SNSに投稿され、そして批判される可能性がある。そのようなSNS社会における適切な行動の啓発を徹底するため、過去の炎上事例についても研修内容に取り込むと良いだろう。
さらに、このような不祥事でダメージを受けるのは宅配サービスだけでなく、飲食系の企業も同様である。そのため、宅配サービスの提供企業と飲食系の企業の連携を強化し、共通の研修や情報共有を展開することで、トラブルを予防できるだろう。いざトラブルが発生したとき、スピーディな対応につなげる方法も考えられそうだ。
2.フィードバックシステムの導入と分析
第二に、フィードバックシステムの導入と分析である。現在、多くの宅配サービスで配達員の登録はかなり簡単にできると言わざるを得ない。この背景には、急速に需要が増える一方で、人手不足が慢性化していることもあるが、そのためにどうしても配達員の質には大きなムラが出てしまう。
そこで役に立つのが、消費者の評価や意見をすぐに受け取り、適切に分析して配達員の評価や教育に反映するフィードバックシステムを構築することだ。このシステムを活用することで、問題行動のあった配達員に対する再研修や指導の機会も設けやすくなる。
もちろん、利用客とのコミュニケーション手法の拡充も欠かせない。現状でもすでに大手宅配サービスでは利用客が個別に問い合わせはできるものの、さらなるアフターサービスの強化など、利用客との距離を縮める取り組みが効果的だと考えられる。
3.透明性の向上
第三に、透明性の向上だ。企業としての方針や取り組み、トラブル時の対応策などを明確にし、それを消費者に対して適切に公開する必要がある。配達員が消費者から受けた評価も、可能な限り公開されるのが望ましいだろう。
とりわけ飲食系のサービスでは透明性を向上させ、消費者が適切なサービスを受けられることは極めて重要であり、それによって信頼度を高めることは企業にとってもプラスになるはずだ。
宅配サービスは現代社会において極めて重要なサービスであり、その利便性は日常生活を豊かにしている。しかし、その裏にはさまざまな問題が潜んでおり、企業はこれらの問題に真摯(しんし)に取り組む必要がある。従業員の教育や研修、消費者とのコミュニケーションの強化など、多岐にわたる取り組みを通じて、サービスの品質と信頼性を維持・向上させる努力が求められる。
(文:山口真一 編集:上代瑠偉)
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