英老舗ギャラリー、パレスチナ・ハマス紛争に言及した中国人アーティストの展覧会を直前中止 決定は「ソフトな暴力」と批判(1/2 ページ)

アイ・ウェイウェイ「自己検閲はアーティストから重要な機会を奪い、多様な声を求める時代にとって痛恨の矛盾となる」

» 2023年11月17日 18時30分 公開
[城川まちねねとらぼ]

 中国の現代美術をけん引してきた反体制派のアーティスト、アイ・ウェイウェイ(艾未未)が英ロンドンの老舗ギャラリー「リッソン・ギャラリー」で開催予定だった展覧会が直前でキャンセルになりました。現在も衝突が続いているイスラエルとハマスの紛争に関する投稿が理由とされていますが、ギャラリーとアイの主張は食い違っています。

長年中国政府の人権や民主主義への姿勢を公然と批判してきたアーティスト

中国のアーティスト、イスラエルとハマスの紛争についてSNSに投稿し英ギャラリーが展覧会キャンセル 展覧会のキャンセルを明かしたアイ・ウェイウェイ(画像はリッソン・ギャラリーのInstagramから)

 今回アイの展覧会キャンセルの原因となった投稿は、フォロワーの質問に答える形でポストされ、内容は以下のようなもの(現在は削除済み)。「ユダヤ人迫害への罪の意識は、時としてアラブ世界を相殺するために転嫁されてきた。経済的、文化的、またメディアへの影響力においても、ユダヤコミュニティーは米国で大きな存在感を示してきた。年間30億ドルのイスラエルへの援助パッケージは、何10年もの間、米国による最も価値ある投資のひとつとしてもてはやされてきたのだ。このパートナーシップは、しばしば運命共同体と表現されるものだ」と、イスラエルと米国の結び付きについて述べていました。

 ところがアイは11月14日に公開された英/米The Art Newspaper紙の記事で、この投稿によって展覧会が「事実上キャンセルされた」と告白。決定は「さらなる論争を回避することと、私自身の幸福のため」下されたとコメントしています。

 一方ギャラリー側はこの出来事に関して、開催直前のキャンセルとなったものの、アイが投稿をしたのち、両者は長く「広範囲な話し合い」を行ってきたと主張。続けて「私たちは今が彼の新しい作品群を展示する適切な時期ではないということで合意に至りました。イスラエルとパレスチナの領土、また国際的なコミュニティーにおける悲劇的な苦しみを終わらせるためみんなが努力すべきときに、反ユダヤやイスラムフォビアと捉えられるような特性について議論する余地はないのです。アイ・ウェイウェイは表現の自由を支え、虐げられた人々を擁護することで知られており、私たちは長年にわたる彼との関係を尊重し、大切に思っています」と声明を出しています。なおアイの展覧会があらためて開催されるかについては「協議中」と現時点での明言をさけています。

中国のアーティスト、イスラエルとハマスの紛争についてSNSに投稿し英ギャラリーが展覧会キャンセル 過去アイ・ウェイウェイの展覧会を何度も開催してきたリッソン・ギャラリー(画像はリッソン・ギャラリーのInstagramから)

 しかし、ギャラリー側が声明を発表後の15日に公開された米Hyperallergic紙の記事でアイは、キャンセルについては展覧会開催数日前にギャラリーからメールで通知を受け取っただけと反論。「単に、私の展覧会をキャンセルするという彼らのメッセージを承認しただけです」と、ギャラリー側が主張する“広範囲な話し合い”の存在を否定しました。

 さらにアイは同紙に向け、「私が驚いたのは、表向きは民主的で自由な社会で、文化的表現を抑え込むため暴力的な手段が使われたこと」と皮肉を込めてコメント。「文化というものがソフトパワーのひとつの形だとするなら、これは声を封じ込めることを狙ったソフトバイオレンスという方法を表しています」と意見を述べました。

 そしてこれは自身だけに向けられた問題ではないと前置き、「社会が多様な声に耐えられなくなったとき、社会は崩壊の瀬戸際に立たされている」と主張。基本的に政治的な作品を展示することが多く、政治・文化と結び付いているはずのリッソン・ギャラリーが今回下した決断について、「自己検閲はアーティストからこの重要な機会を奪い、多様な声を求める時代にとって痛恨の矛盾となる」と批判しました。

 現在66歳のアイ・ウェイウェイは、文化大革命の時代に一家で新疆ウイグル自治区の労働改造所へ送られ、幼少期の5年間を過酷な環境で過ごしています。中国政府の人権や民主主義への姿勢を公然と批判し、2008年の四川大地震の際には、校舎の下敷きになった児童のリストを独自に調査・公開する活動でも注目の的に。2011年には“経済犯”として北京空港で逮捕され81日間勾留されました。活動家であり、社会・文化評論家でもあるアイの芸術表現にはその要素が多分に含まれていることで知られています。

 今回のニュースが広がるとアイのSNSへは、「大量虐殺に反対することは反ユダヤではない。アイ・ウェイウェイ、あなたの活動に感謝します」「あまりの皮肉に驚く。中国で言論の自由のため戦い称賛されたアーティストなのに、今度は言論の自由のため戦ったら“支持者たち”から沈黙させられている」「リベラルは、あなたが中国政府を批判していたときは大好きだったけど、自分の周囲の不正を暴かれると好きではなくなるんだね」など、リッソン・ギャラリーへのシニカルなコメントが多数寄せられています。また、ギャラリーのInstagramアカウントには、批判的なコメントが数多く書き込まれています。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/21/news032.jpg 「二度と酒飲まん」 酔った勢いで通販で購入 → 後日届いた“予想外”の商品に「これ売ってるんだwww」 投稿者に話を聞いた
  2. /nl/articles/2501/21/news034.jpg 道端で拾った“松ぼっくり”をカットして、つなげていくと…… 度肝を抜かれる“完成品”が1300万再生【海外】
  3. /nl/articles/2501/22/news055.jpg 「これは惚れ直す」 高橋克典、妻の爆速“8分弁当”がおいしそう 「味がありますね」弁当箱に注目する人も【2024年の弁当・料理まとめ】
  4. /nl/articles/2501/21/news061.jpg 1人暮らし“1K9畳”の殺風景な部屋が…… 980万表示の“変身ビフォアフ”に驚がく 「これは職人」「理想的!!!」
  5. /nl/articles/2501/21/news135.jpg 「なんでうちだけダメ」 まひ&歩行困難の7歳りおなちゃん、初韓国旅行で“注意されて列並べず”……不憫に思う視聴者に母親「車いすだからという伝え方よくなかった」
  6. /nl/articles/2501/21/news077.jpg 「粋〜〜!!」 人からタッパーを借りたときは…… センス抜群の“返し方”に反響「これはうれしい」「まねします!」
  7. /nl/articles/2501/21/news094.jpg 息子は「BTSに激似」と話題沸騰 “カフェ店員”の25歳男性が両親公開 髪形維持で「毎日母親が散髪」
  8. /nl/articles/2501/20/news166.jpg 「これはひどい」 一番くじ「リコリス・リコイル」“衝撃のD賞”にファン爆笑 「見た目がやばい」「20センチ笑った」
  9. /nl/articles/2501/21/news021.jpg 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  10. /nl/articles/2501/19/news042.jpg 風呂上がりに偶然「牛乳を注ぐ女」になった人に反響 「ほぼそのままw」「盛大にふきだした」 投稿者に話を聞いた
先週の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  4. 鮮魚店で売れ残っていたタコを連れ帰り、水槽に入れたら…… ヤバすぎる光景に「こんなに可愛いなんて!」「笑ってしまった」
  5. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  6. 「まじで終わってる」 マクドナルド「エヴァ」コラボ品“高額転売”に嘆く声…… 「結局欲しい人が買えない」
  7. 母に「髪染めやピアスはダメ」と言われ続けた25歳東大女子、大変身を決意したら…… まさかの事態に「さすがにおもろい」「涙出てきた」
  8. 賞味期限「2年前」のゼリーを販売か…… 人気スーパーが謝罪「深くお詫び」 回収に協力呼びかけ
  9. 風呂上がりに偶然「牛乳を注ぐ女」になった人に反響 「ほぼそのままw」「盛大にふきだした」 投稿者に話を聞いた
  10. タンクトップ姿のパパ「昔はモテた」→娘は信じていなかったが…… かつての姿に衝撃走る「『トップガン』に出ていても納得」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」