『ぼっち・ざ・ろっく!』から生まれた異端の「酒クズ」スピンオフ 『廣井きくりの深酒日記』作者くみちょう&原作者はまじあきインタビュー(2/3 ページ)
はまじ:「意外と真面目にバンドのこと考えてるんだなー」とかは思いました。本編で飲まないとめちゃくちゃ真面目に考え込んじゃう「素面きくり」を出したんですけど、それはくみちょう先生のネームを見てから固まったキャラクターだったりします。
くみちょう:連載の1話はきくりさんとぼっちちゃんが出会うまでの裏話なんですが、実は最初に作ったネームは1巻の最後に収録されてる7話なんです。
――作曲に行き詰ったきくりがやけ酒した結果、終電で高尾山口駅に行ってしまい山の中で作曲する回ですね。確かにシリアスになって将来のことを思い悩む姿が出てきます。
くみちょう:それまでは「高校時代は陰キャだった」って設定くらいしか出てなかったんですよね。
はまじ:これを見て本編で酒を抜いて車を運転する廣井の回を描いたんです。スピンオフとズレないように設定を固めている最中だったんですが、「素面きくり」はくみちょう先生基準で決まりました。
くみちょう:逆に私はそれを見て「きくりさん、ちゃんと飲まないこともできるんだ、よかった」って安心しました。
――ちゃんとやめられるんだ、と(笑)。『深酒日記』はあくまでギャグとしての“酒クズ”キャラを扱ってるとは思うんですけど、お酒まわりの描写で気を付けていることってありますか?
はまじ:「手の震え」とかそういう笑えなくなっちゃう描写はしないように、というのは担当さんから一貫して言われてますね。
くみちょう:そのあたりは『深酒日記』の担当さんも含めてチェックしてもらってます。
――なるほど。実は自分もお酒の飲みすぎで膵(すい)臓の病気になって長期入院したことがあって、今は禁酒してるんですけど、だからこそきくりの生き様みたいなものに共感があるんです。飲みすぎはもちろんダメだけど飲まざるをえない人もいるというか、そういうちょっと悲哀の部分にグッときます。
くみちょう:女子高生の「結束バンド」は眩しすぎる、って人たちにはやっぱりきくりさんのほうが刺さるのかもしれないですね。
はまじ:ライブハウスが舞台なので世界を広げるためにも大人キャラは必要だ、っていうのは担当さんも言ってました。確かに「結束バンド」だけの話だったらもっとかわいい感じの話でまとまってて、廣井のファンになってくれたような層は取り込めなかったのかなと思います。
最高の“ファン”だからこそ描けた本編と相互に影響しあうスピンオフ
――はまじ先生の中で「こういう廣井きくりを描きたい」という部分と『深酒日記』でイメージのズレなどはなかったですか?
はまじ:最初はぼっちちゃんの師匠ポジションで出てきてかっこいい感じにしようと思ってたんですよ。だけどどんどん面白酒クズキャラみたいになっちゃって……自分の中では思っていたように動かなくなってました(笑)。
くみちょう:言ってましたね。そこが好かれてる理由でもあると思うんですけど。
――逆にくみちょう先生が描きたい「きくり像」というのもあります?
くみちょう:面白キャラとしての“酒クズ”の面はもちろんですけど、「本質はアーティスト」っていうのはちゃんと描きたいなと思ってました。ただの酒クズじゃなくて「1番は音楽」というちゃんと芯があるかっこいいお姉さん。
はまじ:それを言われていいなって思ったし自分が間違ってたな、って思いました(笑)。
――原作者側が改心した(笑)。本編とそこまで相互に影響しあうスピンオフって珍しい気がします。
くみちょう:それ以外にもきくりさんのかわいいところや優しいところなど、いろんな魅力を出したいと思って。そのためには志麻やイライザとか巻き込まれてるキャラクターたちも好きになってもらう必要があるので、早めに「SICK HACK」の2人を好きになってもらおうと思ってましたね。
はまじ:私もスピンオフをやるってなったときに、廣井のキャラは立ってるけど他の2人は本編でもほとんど出てきてないから大丈夫かなって心配でした。
くみちょう:でも原作を読んだときにはまじ先生のキャラの作り方がやっぱりサービス精神溢れてるなと思ったんです。志麻さんとか数コマしか出てこないんですけど、きくりさんのかわりのお詫びで菓子折りを持ってくるとか。
――「ちゃんとした人なんだ」ということが分かるキャラになっている、ってことですか?
くみちょう:ただのちゃんとした人じゃなく「ここまでちゃんとしてんだ?」みたいなのがいいんです。それで大体人となりが分かるから、「日頃から事前に菓子折りを買っておく人で、菓子折りのランクも意識してる人なんだろうな」ってキャラができていく。普通はなかなかそこまでできないというか、やっぱりはまじ先生がすごいなって。
――なるほど……くみちょう先生もめちゃくちゃいい読者ですね。
はまじ:ありがたいです……! 『深酒日記』のおかげで志麻やイライザのキャラに深みが出たので、本編にもっと出しても大丈夫だなって。「SICK HACK」の3人で回す話があってもいいかもしれないです。
――そうした本編への逆輸入的なことを狙って始まったスピンオフなのかと思ってたんですが、戦略的にそうしたというよりはシンプルにくみちょう先生のキャラクター理解度が高すぎてそういう効果が生まれたと……(笑)。
はまじ:そうです。くみちょう先生が有能だから!
くみちょう:いやいやいや。いちファンとしては出しゃばりすぎかなあって思うんですが……だいぶ自由にやらせてもらってます。
はまじ:ぼっちちゃんたちが江ノ島に行ってるとき、「SICK HACK」はそうめん食べて平和に過ごしてたんだなあとか、作品をどんどん深く描いてくれるから本当にありがたいです。どんどんやってください!
【インタビュー出席者】くみちょう、はまじあき、COMIC FUZ編集部・高橋、まんがタイムきららMAX編集部・瀬古口、ねとらぼ編集部・たろちん
関連記事
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
第5子妊娠中の宮崎麗香、子どもたちとの“奇跡の1枚”が撮影される ギャップ満載な“現実”ショットも話題に
-
「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
-
「僕ですかこれ」 垢抜けたい男性が“劇的イメチェン”→その大変身に「すげええ!」「泣けたわ」と仰天
-
たまりがちなスタバ紙袋、リメイクで予想外の“便利グッズ”に大変身 580万再生のアイデアに「天才かよ」「素晴らしい……」
-
「これは思わず……」 田舎のホビーオフに1万5400円で売っていた“まさかの商品”に仰天 「何でも売ってる」
-
50代女性、尋常性白斑によりホワイトヘアに→ばっさりショートにすると…… 誰もが見惚れる姿に「どハンサム」「本当にカッコ良すぎ」
-
「コレ入れると草が生えない」 外構工事のプロがやっている“究極の雑草対策”に注目
-
“緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
-
「こんなものも売ってあるの?」 ホビーオフに13万2000円で売っていた“まさかの商品”に「超欲しい」
-
「さすがに不快」 PARCO「ラブベリ」展でファッションモデルの“ほぼ全裸”投稿に批判 主催者「削除依頼している」
- “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
- 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
- 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
- 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声
- 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
- 猛毒ガエルをしゃぶった30分後、口がとんでもないことに…… 直視できない異常症状に「死なないで」「この人が苦しむってよっぽど」
- 33歳の「西郷どん」二神光さん、バイク転倒事故での急逝に衝撃 1年前の共演者は“願い”明かし「叶わないなんて」
- 「コレ入れると草が生えない」 外構工事のプロがやっている“究極の雑草対策”に注目
- 「へー知らんかった」 わずか7年で“消えた駅” 東京メトロが明かす“知れば納得の歴史” 「だからあんなに……」
- 秋葉原のトレカ店が“買い占め被害” 近隣店とその常連客が共謀し“全口購入の人員確保” 「大変遺憾で残念な限り」
- 釣れたキジハタを1年飼ったら……飼い主も驚きの姿に「もはや魚じゃない」「もう家族やね」 半年後の現在について飼い主に聞いた
- 「もうこんな状態」 パリ五輪スケボーのメダリストが「現在のメダル」公開→たった1週間での“劣化”に衝撃
- 「コミケで出会った“金髪で毛先が水色”の子は誰?」→ネット民の集合知でスピード解決! 「優しい世界w」「オタクネットワークつよい」
- 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
- 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
- ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
- 「昔はたくさんの女性の誘いを断った」と話す父、半信半疑の娘だったが…… 当時の姿に驚きの770万いいね「タイムマシンで彼に会いに行く」【海外】
- 鯉の池で大量発生した水草を除去していたら…… 出くわした“神々しい生物”の姿に「関東圏では高額」「なんて大変な…」
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「なんでこんなに似てるの」 2つのJR駅を比較→“想像以上の激似”に「駅名だけ入れ替えても気づかなそう」