「鳥肌たった」「これこそアート」 SNSで約13万いいねを集めた1枚のイラスト、衝撃の種明かしに反響 作者に制作経緯を聞いた(2/4 ページ)

» 2024年07月06日 11時30分 公開
[河原木ねとらぼ]

発想の源となったのは「絵を描き続けることに対してのつらさ」

――「描けなくなった画家」の絵だと思いきや、実は「AIの絵を前にした画家の絵」でもあることに驚きました! このアイデアのきっかけや、制作の経緯を教えてください

らいすさん: 実はもともと「描けなくなった画家」のアイデアだけが思い浮かんでおり、AI技術を使う予定は全くありませんでした。

 「絵を好きで描いているのに、その好きなものが原因で心を病んでいく」という“絵を描き続けることへのつらさ”というのは昔も今もずっと抱えている気持ちの1つで、あの絵はそんな自分の感情から構成されたものでした。「前から描きたいな」と思っていた作品でしたが、コンセプトは思いつきつつも自分の中でまだ形があいまいで、作品にはできずにいました。

 それからしばらくして画像生成AIが世間で話題になり、せっかくならこのAIを使って作品を作りたいな、と構想を練り始めました。そこで何となく、日々何か思いつく度にかきためている絵のネタ帳をあさっていると、「描けなくなった画家」の案が飛び込んできて「これだ!」と。「描けなくなった画家」の絵だと思いきや「AIの絵を前にした画家の絵」という作品を思いついたんです。

――さまざまな解釈ができるイラストですが、一番伝えたかった思いやコンセプトについて教えてください。また、これからのAIイラスト技術について思うことがあれば語っていただけますか?

らいすさん: 前述の通り、好きだからこそ苦しめられる、そんなさまを描いた作品ではあります。一方で、当時は高クオリティーなイラストを出力するAIが出たばかりのころで「絵の仕事はAIに奪われてしまうのではないか」という意見もあり、AI技術そのものを非難する声が多数見受けられました。

 そこで、「どんなに技術が発達しても、人の心を打つために作品を作り続ける人たちがいることに変わりはない」というコンセプトを込めて、自分がこれまで培ってきた絵の技術とAI技術の両方を駆使し、作品を制作しました。

 AI技術そのものに対しては目をみはるものがあり、今後も発展を続けてほしい素晴らしい技術だな、という考えは昔も今も変わりません。ただ、AIの多大な量の学習が必要な性質上、学習元になっている作品が無断で使用されていたり、誰でもAIに簡単に学習させ出力ができる環境になってきたりと、収拾がついていない状況が現状だと思っています。

 こういう状況下なのでAIイラストを非難している方は多く、今自分の作品にAIを取り入れるメリットを正直感じていないので、あれ以降はAI技術を使用した作品は制作していません。ただ、自分はAI技術そのものは素晴らしいと思っているので、難しい課題ではありますが、いつか共存できる未来が来ると良いなと感じています。

――投稿がバズった際の心境について教えてください。リプライで寄せられた反応で、印象に残っているものはありますか?

らいすさん: ここまで語ってきてなんですが、実はあの絵は1日で描いた落書きなんです(笑)。コンセプトこそしっかりと練りましたが「熱があるうちに作ろう!」と思いついたその日に描いてその日に出し、突然その落書きが伸び始めたものですから「なになになに!?」と、驚きと困惑でいっぱいでした。正直あの作品が伸びるとは全然思っていなかったので……。

 そんな中「心に刺さった」「共感した」などのリプライがたくさん寄せられて、自分の考えがいろんな人に届いたんだな、といううれしさもありました。でもAIを使った自分だけの技術ではないイラストで、そして落書きだったというのもあり「ああ、自身の作品に対する思いは評価されたけど、絵そのものは評価されてはいないな」という悔しさも強く感じました。

 だからこそ僕は今あの作品のことは正直嫌いですが、いつか自分の実力で、自分の技術を使ってあの作品の評価を超えてやるんだ、という1つの目標ができました。そういう意味では感謝しています。

――現在も日々イラストを発表されていますが、最近のお気に入り作品や反響が大きかった作品を教えてください。

らいすさん: 最近は商業イラストに専念していることもあり、自身の作品を多くは出すことができていないため、お仕事で制作したものになるのですが、芥田レンリさんという方の楽曲「レンズフレア」のMVで、人生で初めて2Dアニメーションを制作したのが新しく記憶に残っています。

 まさか人生初の2Dアニメーションへの挑戦がお仕事になるとは思っておらず、不安だらけでしたが、芥田レンリさんの素晴らしい楽曲に感化され描き切ることができました。実際に、「レンズフレア」という楽曲は「ボカコレ」という音楽のイベントで上位ランクインするという成果を収めました。ぜひ、いろいろな方にお聴きいただきたい楽曲です。

らいすさんがMVを手掛けた楽曲「レンズフレア」

 最後に、アートの形は変化し続けています。それはきっと「アート」という文化が誕生してから、今までずっと。これからもきっとそうでしょう。変わらないものに感じる美しさもありますが、常に変わり続けていくアートの世界で、僕はクリエイターの1人として変化を恐れず精いっぱい向き合っていきたいと思います。

らいすさんの活動

 らいすさんは現在フリーランスのイラストレーターとして活動しており、Xのほか公式サイトpixivでも作品を見ることができます。

作品提供:らいす(@rice01200120)さん

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2409/18/news028.jpg 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
  2. /nl/articles/2409/18/news190.jpg 人気格闘家、アイドルと2ショット写真披露するも……表情落差がすごいアイドルにファンから励まし「仕方ない。そこでは勝てない。試合で勝とう」
  3. /nl/articles/2409/18/news137.jpg 森口博子、飛行機内でまさかのアクシデント 「気圧でこんな事に」……ビショビショになってしまった姿を見せる
  4. /nl/articles/2409/17/news102.jpg そうはならんやろ “0円の画材”と“4万円の画材”、それぞれでジョーカーを描いてみた結果に驚き【海外】
  5. /nl/articles/2409/19/news146.jpg 大沢たかお、「キングダム」で20キロ増→近影に驚きの声「王綺将軍とのギャップ……」「随分体型が変化」
  6. /nl/articles/2409/19/news049.jpg 使用済みタオルはどこに置くのが正解? ホテル従業員に“神客”と喜ばれる「チェックアウト時の行動」はこれだ!
  7. /nl/articles/2409/18/news164.jpg 売上7億円超の人気漫画『小悪魔教師サイコ』作画家・合田蛍冬氏が出版社を提訴した訴訟が和解 同一原作の後発漫画が出版されトラブルに 出版社は謝罪
  8. /nl/articles/2409/19/news019.jpg 洗濯機から発生する“わかめ”を一発で撃退できる方法! 「早くやれば良かったと後悔」する掃除術が超簡単
  9. /nl/articles/2409/17/news187.jpg 「高くて買えないので作った」 “自作過ぎるPCパーツ”が脱力感あふれるアイデアで反響「超低コスト、超軽量!!」「消費電力0」
  10. /nl/articles/2406/25/news020.jpg 雑草だらけで荒れた庭を、素人夫妻がDIY→2年後…… 目を疑う変貌ぶりに「お見事としか言いようがない」「外国の映画に出てきそう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
  2. 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
  3. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  4. 「僕ですかこれ」 垢抜けたい男性が“劇的イメチェン”→その大変身に「すげええ!」「泣けたわ」と仰天
  5. 第5子妊娠中の宮崎麗香、子どもたちとの“奇跡の1枚”が撮影される ギャップ満載な“現実”ショットも話題に
  6. そうはならんやろ “バラの絵”を芸術的に描いたら……“まさかの結果”が200万再生 「予想を超えてきた」【海外】
  7. 天皇皇后両陛下の那須静養、愛子さまが天皇陛下のため蚊を手で払う場面も…… “仲むつまじいショット”が約240万再生
  8. 「脳がおかしくなった」 新宿駅を出る→“まさかの光景”に思わず三度見 「意味わからん」「田舎者にはマジでダンジョン」
  9. 合宿前の兄たち、0歳末っ子と離れたくなくて…… メロメロな“別れの光景”に「あーもうなんて尊い」「幸せ」430万再生突破
  10. 雑草だらけの庭が“たった1台の草刈り機”で…… “見事な変化”に7000万再生 「よくやった」「まさにプロ」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ったら……飼い主も驚きの姿に「もはや魚じゃない」「もう家族やね」 半年後の現在について飼い主に聞いた
  2. 「もうこんな状態」 パリ五輪スケボーのメダリストが「現在のメダル」公開→たった1週間での“劣化”に衝撃
  3. 「コミケで出会った“金髪で毛先が水色”の子は誰?」→ネット民の集合知でスピード解決! 「優しい世界w」「オタクネットワークつよい」
  4. 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  5. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  6. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  7. 「昔はたくさんの女性の誘いを断った」と話す父、半信半疑の娘だったが…… 当時の姿に驚きの770万いいね「タイムマシンで彼に会いに行く」【海外】
  8. 鯉の池で大量発生した水草を除去していたら…… 出くわした“神々しい生物”の姿に「関東圏では高額」「なんて大変な…」
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「なんでこんなに似てるの」 2つのJR駅を比較→“想像以上の激似”に「駅名だけ入れ替えても気づかなそう」