そう来たか……! 「スマホの画面バキバキ」を世界初の解析 “まさかの国家機関”の快挙に称賛の嵐 「応用範囲の広さにびっくり」「イグノーベル賞もの」(1/3 ページ)

ゆくゆくは北極や南極の氷の割れ方にも応用できるようです。

» 2024年10月03日 16時30分 公開
[沓澤真二ねとらぼ]

 スマホをうっかり落としてしまい、画面に網目状のヒビが入って「バキバキ」状態に――。この物理現象について、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が世界で初めてシミュレーションに成功したと発表しました。畑違いの研究に聞こえますが、南極や北極の氷などに応用できる可能性があるとのことです。

これまで困難だった「強化ガラスの破壊過程」のシミュレーションに成功

 世界初の快挙を遂げたのは、JAMSTEC数理科学・先端技術研究開発センター(MAT)の研究員・廣部紗也子さん。自然現象の数理的解明に取り組むなかで、スマホなどに用いられる強化ガラスの「残留応力」に着目したといいます。

スマホバキバキ 画面がバキバキに割れたスマホのイメージ(画像:PIXTA

 応力とは物体が加重を受けたときに生じる抵抗力で、それが何らかの理由で内部に残留した状態が「残留応力」。強化ガラスは製造過程で、表面に「圧縮」の応力が、内部にはそれと釣り合う「引張(ひっぱり)」の応力が残留しているのだそうです。

 つまり、強化ガラスの表面には「縮まろうとする力」が働いているため、多少の亀裂が入っても広がらず割れないということ。ただ、傷が内部まで達すると、そこに残る「広がろうとする力」が作用して、亀裂がどんどん開きバキバキに割れてしまうわけです。

 通常のガラスは強化ガラスのように力を溜め込まないため、破壊シミュレーションでもその場で加えたエネルギーで割れ方の解析を行えます。強化ガラスは割れている途中でも強化ガラスが溜め込んだエネルギーが変化していくため、条件を再現しにくく、解析が困難だったといいます。そこを、廣部さんはPDS-FEM(粒子離散化有限要素法)という従来の手法を応用することで、シミュレーションを実現したのだといいます。

最終的には地震や氷山の解析にも応用可能?

 シミュレーションの結果は、実際に強化ガラスを傷つけた破壊実験に肉薄する精度に。廣部さんは、まだ研究の余地はあるとしつつ、再現度について一定の評価をしています。

化学強化ガラスの破壊過程 実験とシミュレーションの比較

 このシミュレーションは「割れても破片が丸く危険の少ない強化ガラス」の開発や、地震断層での破壊の起こり方、北極や南極の氷の割れ方などに応用できるとみられています。X(Twitter)でも、「まさかの国家機関」「研究しているのがJAMSTECなのが面白い」「イグノーベル賞もの」と賛辞が寄せられ、期待の声が集まっています。

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