「フジテレビかわいそう」トレンド入りも…… 前代未聞“10時間超会見”に一部で「同情論」なぜ? 現場で感じた「空気」(1/2 ページ)

フジ会見、現場で感じた空気は。

» 2025年01月28日 19時02分 公開
[佐藤庄之介ねとらぼ]

 フジテレビは一連の社内トラブル疑惑をめぐる記者会見を1月27日に実施。10時間超に及んだ会見を受け、X(Twitter)では「フジテレビかわいそう」というワードがトレンド入りするなど、一部では疑惑を追及される側への「同情論」も起こる異例の展開になった。そうした声が上がった要因はどこにあったのか。会見場で感じた空気を振り返る。

フジ 会見に登壇した港浩一前社長

SNS一部で「気の毒」の声

 1月17日にフジ側が行った記者会見は、参加できるメディアが大手媒体などに限定され、しかも生中継・生配信ができないという制約の多いものだった。同会見後にはフジ番組のスポンサー企業がCMを差し替える動きなどが相次いだ。

 27日の会見では対象メディアの制限がなくなり、400人を超える記者が参加。質疑応答においては、プライバシー配慮の観点から10分遅れでの中継・配信を求められたものの、17日の会見と比較すると、相対的にオープンな環境下で行われたものだった。

 16時に始まった会見では、最初に辞任する港浩一社長らの謝罪、一連の問題の経緯説明が行われた。その後、出席した記者からの質疑応答の時間が設けられたものの、これが長時間にわたった。途中で10分程度の休憩があった以外はほぼ「ぶっ続け」の展開となり、会見が終わったのは翌日2時20分ごろだった。

フジ 会見の様子
フジ フジテレビの遠藤龍之介副会長。3月末での辞意を表明したと報じられている。父親は作家の遠藤周作氏

 長時間に及んだ会見をめぐっては、SNS上ではさまざまな観点から議論を呼んだ。異例とも言えるのが、長時間質問に応じたフジ経営陣への同情論が、一部で集まっていることだ。

「(港社長が)気の毒で仕方なかった」

「まるで弱いものいじめ」

「見るに堪えない」

 Xでは「フジテレビかわいそう」がトレンド入りする事態となった一方で、疑惑を追及される側に同情することの危うさを指摘する声も聞かれている。

疲労感や苛立ちに満ちた空気

 一部で同情論が上がった要因はどこにあったのか。最も大きかったのは、問題を追及する記者のスタンスが、登壇者の発言や態度以上に注目される会見になったという点だろう。

 旧ジャニーズの性加害問題をはじめ、過去の大規模な記者会見でも、一部の記者が激しい口調や言葉で登壇者や司会者を問いただしたり、「野次」を飛ばしたりするようなシーンは見られた。

 今回の会見でも比較的早い段階からそうした光景は見られたが、質疑応答が長引き、テレビでの視聴率が高いとされる、いわゆるゴールデンタイム(19時〜22時)に突入したことで、多くの人がそれを目の当たりにしたとみられる。21時前後には、複数の記者が登壇者を激しく追及し、登壇者がほぼ発言しなくなるというシーンもあった。

 質問数は1人につき2問までと要請されたが、実際には、細かい項目を含めて2問以上質問しているケースも散見され、そうした事例に対して司会者も厳しく制止する様子を見せなかった。また、1人あたりの質問時間については特に制限されておらず、結果として記者の「独壇場」となる状態もたびたびあった。

 会場での不規則発言を静止するよう呼びかけた記者がネット上で称賛され、他の記者の質問内容に異論を呈した記者に拍手が起こるなど、質疑応答の内容以外で記者が「主役」になる場面もあった。

 ただ、手を挙げてもなかなか自分の質疑の番が回ってこないことに、苛立ちを隠さない記者も少なくなく、現場では疲労感やストレスに満ちた空気が充満していた。

現場で感じた課題

 一方で、フジ経営陣のスタンスは「守り」を重視していた印象だ。第三者委員会の結果待ち、事案にかかわった本人のプライバシー保護などを理由に明確な回答を避けることが多く、フジの経営に影響を持っているとされる日枝久相談役も欠席した。経営陣の受け答えは、視聴者の間で「つまらない」ものに映り、「記者に振り回されているフジ経営陣」という構図をもたらした可能性がある。

 会見では多くの課題もあった。一連の問題を受け、企業の透明性や誠意を問われる会見だった中で、上述の理由などで明確な回答を避けるなど、消極的な姿勢も目立った。10時間以上という会見の長さに対して、明らかにされた情報の量や質が見合っていたかと言えば、疑問符が付く。

 今回の会見で記者は、「疑惑の追及」と、「プライバシーの配慮」という性質の異なるものが同時に求められた。質疑応答1人目で特定の個人名が上がり、司会から制止されるという場面もあった。また、個人の特定につながるような質問も司会者からたびたび制止されたが、その基準はあいまいで、現場からは「何も質問ができない」と不満の声も漏れた。今回のようなオープンな場で2つの要素を両立するのには、限界があったのではないか。

 会見後の28日には、西松屋がCM出稿を見合わせると発表している。フジへの「同情論」が広まった一方で、企業の風当たりは依然として強いままだ。

 フジの親会社、フジ・メディア・ホールディングスの社外取締役7人は27日付で、社内のガバナンス改善などを求める提言をしている。

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