君も仏にならないか! 観音コスプレで練り歩く謎の集まり「三十三間堂プロジェクト」に潜入してみた:知らぬが仏?(1/2 ページ)
町で見かけた仏たちの集団。いったい彼らはなんなんだ? いろいろ悟れるかもしれないと、仏になって町を練り歩く謎のワークショップに潜入してみた。
仏のコスプレをして町を練り歩くワークショップがある。1000体の千手観音立像が並ぶ京都の三十三間堂にちなんで「三十三間堂プロジェクト」と名付けられている。参加者はド派手な仏顔メイクを施し、観音様っぽい冠をかぶって楽しむという。仏教徒の集まりか、はたまたコスプレ厨の集まりか……一体何なんだ! 記者はこの奇妙な集まりの実態を暴くため、現場へ急行した。
それは本家「三十三間堂」へのオマージュ
三十三間堂プロジェクトは、ワークショップで仏に変身した参加者1000人分の写真を「仏像顔」として集めるというもの。三十三間堂の千手観音立像のなかには自分そっくりのものがあると言われるが、同プロジェクトはまさに“現代版の三十三間堂”を作る試みなのだ。2010年5月にスタートし、現在までの参加者は約720人にのぼる。着々と完成に近づくなか、1月29日にも「アーツ千代田3331」(東京・秋葉原)でワークショップが開催された。
主催者は多摩美術大学出身で「仏アーティスト」のTETTA(29)さん。寺院とつながりの深い檀家(だんか)の家に生まれ、子どもの頃は実家のある鎌倉の寺院で遊んでいたという生粋の「仏像好き」。高校時代に読んだ手塚治虫の漫画「ブッダ」にインスピレーションを受け、仏を専門に表現する美術作家を志した。これまでの作品では、山ほど仏像の絵を描いたり、TETTAさん自身が仏に変装したりしている。
まずは仏像講座から
今回ワークショップに参加したのは、TETTAさんのアシスタントや知人の紹介で訪れた20〜30代の女性6人。「友だちがやってて楽しそうだったから」「コスプレ願望があるから」などの理由で参加を決めたそうで、特別仏教や仏像が好きな人はいなかった。普段もネットの情報や紹介をきっかけに「面白そう」と訪ねる人がほとんどで、リピーターも多いという。参加者の3割は男性で、世代は赤ちゃんから80才までと幅広い。
化粧を始める前にTETTAさんによる仏像講座がある。仏像には「鎌倉大仏」などで有名な「如来」、千手観音像で知られる「菩薩」、如来が怒りを表した「明王」、仏教に帰依したインドの神々「天部」の4種類があり、ワークショップではもちろん三十三間堂の千手観音立像と同じ菩薩の顔を目指して化粧を施す。現存している仏像は装飾がはげてしまっているが、菩薩は本来「派手派手」なので濃いメイクが必要らしい。
仏像のイラストをもとに「仏像顔」となるポイントがレクチャーされる。仏像の眉間にある丸い膨らみ「百毫(びゃくごう)」を付け、瞑想中の「三昧(さんまい)の目」をする。すると目は半開きで、TETTAさんいわく「イッちゃってる風」だが、これでOK。口元は少しだけ微笑み「アルカイックスマイル」に。あとは「合掌」などのポーズを取れば、大体仏像顔の完成となる。
講義は1時間あり、TETTAさん流の仏像鑑賞法を教えてくれる。「セーラームーンに似ている菩薩がある」「明王の周りには炎が描かれているけど、これってスーパーサイヤ人っぽい」「仏の唇はぽってりしていて、今流行りのアヒル口に似てる」など、意外な事実のオンパレードで飽きずに楽しめた。これを知っておけば、観光などで寺院へ行っても違う楽しみ方ができそう。思わぬ豆知識が増えてうれしい。さあ、ここまで学んだところでいよいよメイク開始だ。
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