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「エヴァの原点はウルトラマンと巨神兵」――庵野秀明が語り尽せない「特撮」への愛「特撮博物館」にかける思い(3/4 ページ)

「エヴァの原点は、ウルトラマンと巨神兵。」――庵野秀明監督が“館長”を務める展覧会「特撮博物館」が開かれる。発表会では樋口真嗣監督やスタジオジブリの鈴木プロデューサーも加わり、特撮への“愛”を語った。

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「本物じゃない」面白さ――特撮の魅力は

 トークテーマは特撮の魅力に。それぞれがますます熱く語る。

樋口 一言では難しいが、本物じゃないことですかね。本物じゃないものを使って本物に見せるというのは、自分のなかでやりがいのあること。板を張り合わせて作ったビルのミニチュアなどを、本物に見せるには何が足りないか。それを考え、本物に近づけていくのが面白い。よくジブリアニメの背景は、そこまで(リアルに)やるなら実写で良いじゃないかと言われたりするように、(考えることで)本物より本物らしいものができる。

庵野 特撮の魅力は、現実のなかに空想を紛れ込ませられること。アニメは全部絵なので最初から虚構なんですよね。だからこそできることもあるが。一方、特撮は現実空間に異物を紛れ込ませられる唯一のもの。その面白さに子どもころ引きこまれた。(面白さから)ずっと卒業できないまま今に至っている。特撮やアニメを見ていなかったら、こういう仕事に至ってなかったんじゃないか。

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3人の後ろには万能戦艦マイティ号

鈴木 僕のような団塊の世代は、特撮に思い入れのある第一の世代かな。子どもの頃SF特撮映画「宇宙人東京に現わる」を見て、本当に怖かった。よくよく考えて後で見ると大したことないが、子どもにとってはとてもドキドキするもので、強烈な印象が残っている。あとモスラ! 旺文社から「中学時代一年生」という雑誌が出ていて、付録でモスラのノベライズが付いていた。映画も見に行って、その文庫もずっと大事にしていて。もう1度読みたいなあ。

樋口 鈴木さんの話と似ているのだが、僕は雑誌で好きな特撮作品の舞台裏が紹介されていたのを見たことがあるんです。その時まで映画は誰かが作っているものだと考えたことがなかったが、実は外側に人がいると知った。特撮作品で海だと思ったものは仕切られたプールなのだと。現実じゃないけど現実を作るためにものすごい現実がある――入れ子のような構造を見て、クラっときた。

「銀色に赤!」 ウルトラマンに熱狂した庵野少年

 3人が好きな特撮作品とは何だろうか。

樋口 いっぱいあるが「妖星ゴラス」かな。アイデアが面白い。バカバカしいところにも大真面目に取り組んでいる。それが頭に刷り込まれた。

庵野 僕は圧倒的にウルトラマン。あの衝撃は今も残っている。当時家の白黒テレビにいきなりあんな巨人が現れて、怪獣や宇宙人を倒して去って行くあのビジュアルのすごさ!! いやーーーーーすごいですよね。すごいんですよ!! 後に雑誌でウルトラマンを見て、銀色に赤なんだということを発見して。銀色に赤!!!!!!!!!!!!(と今も興奮を抑え切れない様子の庵野監督)

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鈴木 僕は「大魔神」を見た時のことをすごく覚えている。オヤジに連れられて映画館に行ったら、子どもがいないんですよ。観客は自分以外みんな大人で、食い入るように見てる。子どもは自分しかいないという自覚のもと見るとすごい映画だった。要するに大人の映画って感じだった。キングギドラも好きなんだけど、大魔神の魅力には勝てないですね。

万能戦艦マイティ号「これはもう僕の夢」

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 トークテーマはようやく特撮博物館の中身に移る。ステージに置かれた、東京タワー、轟天号、万能戦艦マイティ号の模型を3人が説明していく。

庵野 (東京タワーの模型を指差しながら)これはモスラのときの図面をもとに再現したもの。撮影で使ったものは残っていないが、当時と同じ人が作った。

鈴木 僕は今回初めて知ったのだが、東京タワーってパッと見て年代が分かるらしいんです。これは60年代くらい。

庵野 そうそう。第2展望台がないからねこれ。(次に万能戦艦マイティ号の前へ移動して)これはもう僕の夢ですね。本当に美しい。フォルムが好き。そしてこの大きさ! 万能っていうのが良いですね。

樋口 これ(万能戦艦マイティ号)は実物が残ってなくて、お尻と頭だけがあったので、僕らの仲間の造形師が3年がかりで完成させた。しかも当時と同じ、鉄板を叩いて曲げる作り方で作っている。

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庵野 (今度は2種類の轟天号の前へ移動して)これも単純ながら良いフォルム。こう来るかっていう発見があっていいよ。

鈴木 (司会の若い女性にも分かるよう丁寧に熱く語る庵野監督を見て)聞けばきくほど分からない(笑)

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