「無料のサイトに本気のコンテンツは載らない」――インターネット雑誌「cakes」はWebを変えるか(1/2 ページ)
週150円で読み放題。なぜメルマガとも、電子書籍とも違う「インターネット雑誌」という形を選んだのか。cakes代表・加藤貞顕氏の狙いとは。
週150円で読み放題 「インターネット雑誌」という新しい提案
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の編集者・加藤貞顕氏が立ち上げた、インターネット雑誌「cakes(ケイクス)」が注目を集めている。オープンから約1カ月半。現時点で有料会員数は「数千人」という。
ほぼ同時期にニコニコチャンネルでも有料の「ブロマガ」がスタートしたが、cakesのアプローチはまた少し異なる。購読料は1週間150円。それでサイト内の全コンテンツが読み放題になる。
執筆陣は津田大介、黒田勇樹、岡田斗司夫、山形浩生、大槻ケンヂなど数十名(敬称略)。ネットカルチャー、サブカルチャー系を中心に、大御所から若手まで幅広い顔ぶれを揃えた。11月1日時点で週間ランキングを見てみると、真実一郎氏の「グラビアアイドル鎮魂歌 〜吉木りさという光、壇蜜という影〜」、オバタカズユキ氏の「日本の自殺の不都合な真実」などが上位に並んでいる。
有料メルマガと違って、興味のない話題も目に飛び込んでくるため、読んでみると「こんな世界があったのか」という出会いがある。しかも週150円で読み放題と、cakesは安い。有料メルマガが「単行本」なら、cakesはまさに「雑誌」の感覚だ。
加藤氏はcakesについて「いまネットにあるコンテンツは、プロが宣伝のために作ったものと、アマチュアが趣味で作ったものしかない。プロが作った“ド本気”のコンテンツが載る場所を作りたかった」と語る。
ネットでお金を払うことを当たり前にしたい
独立しcakesを立ち上げる前には、アスキー、ダイヤモンド社で雑誌や書籍、Webメディア、電子書籍などの編集に携わった。その中で見えてきたのは、「電子書籍は思いのほか儲からない」「電子書籍がこのまま行けば大変なことになる」ということだった。
音楽CDはかつて5000億円市場と言われたが、今では2000億円に縮小した。かわりに音楽配信が台頭したが、それでも800億。差し引きで2200億円がどこかへ消えた形になる。同じことが出版についても起こりうるという。
「もちろん(紙媒体から)スマホやタブレットのようなデバイスで読むようなものにはなっていく。だけどその出口が電子書籍だけだと大変なことになる。出版はピーク時で2兆3000億円あったけど、最終的には1兆くらいになるのでは」(加藤氏)
だから、cakesではあえて電子書籍以外の出口を目指した。記事は基本、cakesのWebサイト上でそのまま読む形。これまでWebでコンテンツが販売が成立しなかったのは、回線も遅く、いい端末もなければ、課金の仕組みも、習慣もなかったから。しかし、スマホやタブレットの普及でようやくそれが解決しつつある。「ネットでお金を払うということをもっと普通のことにしたい。Amazonが出たころなんか、ネットでものを買うなんて考えられなかったでしょ。だけど今はそれが普通になった。Amazonはモノを売ったけど、コンテンツならそれがもっとやりやすい」と加藤氏。
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