バレンタインデーに職場や学校でばらまかれた義理チョコへのお返しをそろそろ考えなければならない。そんなホワイトデーも差し迫ってきた3月の上旬、筆者は「男グミ」なるワークショップが開催されるとの一報を手にした。
「男グミ」って何?
ワークショップ「ホワイトデー3Dワークショップ“男グミ”」は、ハイスペックな3Dプリンタや3Dスキャナを利用し、自分の全身をかたどったグミを作る企画。デジタルものづくりカフェ「FabCafe」と3D機器の販売などを手がけるケイズデザインラボが手がけた。ちなみにバレンタインの際には自分型チョコを作る企画が実施され、話題になった。
2日間のワークショップのうち、1日目はグミにしたいポーズを3Dスキャン・編集。その後、3Dプリンタで原型モデルを出力しておく。2日目は、原型モデルを元にバキューム成形されたプラスチック素材(ペットボトルと同じもの)の型を使用してグミを作る――というのが大まかな流れだ。
これは面白そう。というわけで、早速、潜入してみることにした。
これぞハイスペックマシンの“無駄遣い”
1日目、渋谷から7分ほど歩いたところにあるFabCafeに到着。会場はその2階にある、CUBEという3Dプリンタなどの展示ギャラリーだ。
使用する機材の説明を受けた後は、早速3Dスキャナを使って全身をスキャンする。スキャナは特注品で1台数千万円するらしい。そんな高価な機材の前でどんなポーズを取るか迷ったが、せっかくなのでジョジョ立ちをすることにした。しかし、ここで問題が……。どうやら腕を伸ばしたり、手で顔を隠したりすると上手くスキャンできないらしい。こうして筆者はジョジョ立ちのなかでもシンプルな部類のポージングで挑むことになった。
大画面に全身の3Dデータが表示されると、自分の足の短さや、最近無視していた腹の肉が3Dで鮮明に再現されていた。2Dデータでは表現できない残酷さが、3Dデータには存在するようだ。
続けてモデリングの機材でスキャン時に発生したノイズを除去していく。このアームの付いたペンは触感デバイスといって、画面上にある3Dデータをまるでペン先で触っているかのように編集できるのだ。例えばポインターを服の上に持ってくるとシワの凹凸によって、ペンに反動が伝わる。このモデリングツールだけで数百万円はするんだとか!
大まかな3Dデータの編集を体験し、あとはプロのスタッフさんへバトンタッチ。これで1日目は終了した。結局、この日使った機材だけで一戸建てが買えるほどのお値段。グミの型を作るにしてはハイスペックすぎるだろ……と思いながら帰路につく。
いざ、実食(共食い)
1週間後。2日目のこの日は、20度超えの気温のなか、ちょっと汗ばみつつ会場に到着。前回のスキャン時は、時間で区切られていた関係上、ほかの参加者に会うことはなかったが、今回は全員でグミ作りを行う。男ばかり8人のワークショップ。ある種異様な空気が室内には漂っていた。
渡されたグミの型は、インクジェット式の3Dプリンタで出力した原型モデルを元にバキューム成形したもの。作業はいたって簡単で、型に薄くサラダ油を塗り、グミの元を流し込み、冷やし固めるだけ。これだけで“男グミ”ができてしまう。
今回の参加者のうち2人は小学生。年齢もばらばらな8人が密室でグミを作っている光景はなかなか見ることができないので、筆者は貴重な体験をさせてもらった。しかし、なんでグミなんだろう……もっと世の中の役に立つものを沢山作れるのではないだろうか……。ただ、こうした遊び心がものづくり革命を支えているのかもしれない。
そんなことを考えていると、グミが冷え固まったようだ。各々が好きなポージングで制作したグミが完成した。自身がかたどられたグミを見つめ、参加者の大半はどうリアクションを取っていいのかわからない、という空気を発している。「ちゃんと細かいところまで再現されていますね」とディテールに注目する人も多かった。完成した“男グミ”を撮影し、試食(共食い?)し、会場は変な盛り上がりを見せ、幕を閉じた。
ドドドドドドドド……ジョジョ立ちグミの出来栄えは……!?
さて、筆者のジョジョ立ちグミの出来栄えについてもご報告したい。原型モデルとグミの型(12枚)は持ち帰ることができたので、自宅でグミを量産してみた。
冷蔵庫に入っていたものを全て取り出し、移動中に型からグミの元がこぼれるアクシデントを乗り越えて完成した10個のジョジョ立ちグミがこちら。オレンジジュース、コーラ、オレンジジュース、青汁を使った4種類のグミである。
今日(3月14日)はホワイトデー、この得体の知れないグミを職場の女性陣にお返しして、どんなリアクションが返ってくるのか、恐る恐る渡してみたいと思う。
川口いしや(@ishiya)。1986年生まれの週末ライター。サークル「ねとぽよ」にて活動中。「PLANETS vol,8」掲載の「食べログの研究」や「ねとぽよ第2号」の「JRO38」などを通して、「食とインターネット」について日々研究をしている。食べ歩きの成果か、最近お腹が出てきた。
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