コスプレや“薄い本”も増加中!? いまもっとも熱いローカルヒーロー「薩摩剣士隼人」は薩摩の心で悪を討つ
南の国でローカルヒーローとゆるキャラが合体。監督にも話をうかがった。
鹿児島生まれのローカルヒーローが、いまじわじわと人気を伸ばしているのをご存じだろうか。鹿児島の同人イベントではコスプレや“薄い本”の参加も多く、6月には初のオンリーイベントも開催されるという。
その名は「薩摩剣士隼人(さつまけんしはやと)」。ローカルヒーローの例に漏れず、鹿児島の文化や自然などの要素をふんだんに盛り込む一方、やたらとシュールなゆるキャラが登場するのも大きな特徴だ。あの西郷隆盛も、伝説の精霊「ダイサイゴー」として登場している。
地元・鹿児島ではバラエティ番組にまで進出する人気ぶり
番組は2011年10月から2012年末にかけ放送され、好評を受けて2013年4月からは「第2部」の撮影も始まった。オフィシャルグッズショップがオープンしたり、登場キャラが進行を務めるバラエティ番組が始まったりと、県内ではすっかり人気者だ。
作品は「ボッケモン」と呼ばれる精霊たちが古代から住まう鹿児島が舞台。かつて鹿児島人に退治された狐一族の守護神「ヤッセンボー」が復活し、暗黒の力で人々を苦しめる。そこへ謎のヒーローボッケモン「薩摩剣士・隼人」が現れ、悪者たちと剣を交えてその場を丸く収めるという内容だ。
隼人は甲冑姿の剣士。兜の装飾が鹿児島の地形を模っているなど、随所に鹿児島要素が取り入れられている。特にユニークなのが、武器「無刃剣・十字丸(むじんけん・じゅうじまる)」だ。読みのとおり刃を持たない、木刀になっている。
十字丸によって、隼人が悪者たちを傷つけることはない。これには剣を交えることで魂をぶつけ合い、悪者たちも友として迎え入れようとする、番組のテーマ「敬天愛人(けいてんあいじん)」の思想が込められている。敬天愛人とは「天を敬い人を愛する」という意味で、西郷隆盛が好んで使った言葉だ。武器ひとつとっても、ちゃんと鹿児島人の魂が込められている。
ツッコミどころ満載のシュールなゆるキャラ
さらに魅力の1つとして、大人の笑いを誘う変わったゆるキャラも出てくる。
筆頭は何と言っても、西郷隆盛を慕う人々の気持ちから生まれた3.2メートルの巨人ボッケモン「ダイサイゴー」だ。強大な力と英知で鹿児島の人々を何度も救ってきたらしく、「偉大な伝説のボッケモン」と称されるなど、これまた突き抜けた設定。
ほかにも、黒豚ボッケモン「黒豚ヴィーちゃん」は、体の右半分に「カタロース」「ヒレ」などお肉の部位名称が書かれている。「ボンタンくん」「びわちゃん」など果物ボッケモン10種類が合体した「果樹神合体 カジュカンサー」もシュールだ。全身に14個の顔を持っているうえ、肉弾戦が主な作品内で、重力をねじ曲げる「カジュウ念力」という謎の最強能力を使う。
目指したのは“みんな”が夢中になれる作品
なぜこのようなゆるキャラが登場するのだろうか?
「2歳から90歳が番組の対象年齢なんです」と語るのは、番組を手がけた外山雄大監督。子ども向けのヒーロー番組と思いきや、ターゲットはびっくりするほど幅広い。
「薩摩剣士隼人」の前には「オモチャキッド」というローカルヒーロー番組を手がけていたという外山監督。「薩摩剣士隼人」では、「オモチャキッド」ができなかった「あること」を実現したかったのだという。
「『オモチャキッド』の後に、『超神ネイガー』や『ひこにゃん』が全国的なブームになったのを見て、地方からでも十分全国に打って出ることはできるんだなと。それで『薩摩剣士隼人』では、ネイガーやひこにゃんのように、地元に経済効果を生み出せるようなローカルヒーロー番組を作ろうと思ったんです」(外山監督)
それには小さな男の子だけでなく、より多くの視聴者に楽しんでもらう必要がある。いろんなゆるキャラを登場させたのはそのためで、ほかにもアイドルの格好をした女の子を登場させるなど、幅広い視聴者層が楽しめることを心がけた。かくして、ゆるキャラ満載のローカルヒーロー「薩摩剣士隼人」は誕生した。
今では主役の隼人よりも、かわいいゆるキャラのつんつん・こんこんや、悪役のヤッセンボーの方に人気が集まることもあるそうだ。特にヤッセンボーは腐女子層に人気が高く、「薩摩剣士隼人」の人気を別方向から支える重要なファクターとなっている(他の一族のためにあえて悪役を買って出たという設定が受けたらしい)。
奄美大島などを舞台にした第2部「離島編」は目下鋭意撮影中で、放送は2014年予定とのこと。第1部がネットで公開中なので、まずはこちらを制覇してみてはどげんですか?
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