首を1回チョップして8時間寝るだけで体のゆがみが治る。そんな謎の整体を知ったのはバラエティ番組「モヤモヤさまぁ〜ず2」で紹介されていたのがきっかけだった。番組では三村さんがチョップ体験をしてリアクションを取るというあっさりした形で終わっていたのだが、正直「そんなのでほんとに効果あるの?」と思った。僕は自分の目で見たことしか信じない! というわけで、東京・国分寺にある「チョップ整体院」に行ってきました。
いきなりパンツ1枚に
JR国分寺駅から徒歩10分。閑静な住宅街のごく普通の一軒家に「チョップ整体院」の看板が出ている。院長の秋澤順一さんに出迎えられて中に入ってみると、見た目以上にごく普通の一軒家で、施術を受けに来たというより夏休みに親戚のおじさんの家に遊びに来たって雰囲気だ。
「じゃ、早速着替えてチョップしましょう」と院長に促され、持参した寝巻きに着替える。他人の家にお邪魔して、次の瞬間にはもうパンツ1枚になっている自分。色んな意味で「遠いところに来ちゃったな」と思った。
さまぁ〜ずの写真などに感動しつつカルテを記入したら、診察スタート。腕や手首を回す、アゴの開閉を調べる、といった検査をして体のゆがんでいる部分をチェックしていく。次に足の下に複数の板を入れ、もう一度同じ動きをして体のバランスを調整する。つまり腕や手がしっかり回る時、足の下にある板の枚数が自分の体のゆがみを表すということになる。僕は随分と前後左右にゆがんでいたようで、最終的に足の下が板だらけになった。
聞いてなるほどと感心したのは、「人間は自分で自然と体のゆがみのバランスを取ろうとしている」という話。例えば僕はよく足を組む癖があるのだけれど、普通に座るよりも足を組んでいる状態のほうが手首の回りもいいし深呼吸をしても空気をたくさん吸えるのだ。体がゆがんでいるから足を組みたくなる。これを解消するのが整体の目的だ。
いよいよチョップ
検査が終わるといよいよチョップとなる。チョップといっても瓦割りの要領で僕の首に空手チョップをくらわす、というのではなく、あらかじめ首に手をあててそのままグッと押すようなイメージだ。こう聞くと「なんだ、地味じゃん」と思うでしょう? ところがどっこい、施術台に無防備に寝た状態で首に手をあてられるのは異様な緊張感がある。構図だけ見ればギロチン処刑と同じだ。
院長が角度の最終確認をしている間、院長の股の間から外の景色を眺めてじっと刑の執行を待つ僕。院長が「じゃ、チョップしますね」と言った次の瞬間、「バァン!」という音がして付き添いで来ていた編集さんが「うわっ!」と声をあげた。多分、僕が死んだと思ったのだろう。
実際のところ、施術台の音は大きいけれど僕自身は首を軽く押された程度の感覚で痛みも全くなかった。「えっ、これでいいの?」という感じだが、目の奥がスーッとして全身がフワフワした感覚に包まれたのを覚えている。これがチョップの効果なのか、単にビックリしただけなのかは分からないけれど、立ち上がってみると足の下に板を入れなくても手足がスムーズに回るようになっていた。うーん、なんだか手品のようだ。
おやすみなさい
あとは寝室に移動して8時間寝るだけ。やや固めのベッドに横になると、院長がバスタオルを重ねて作った枕の高さを調整してくれる。治したばかりの首はまだ不安定。これがすぐにズレてしまうのを防ぐために、枕の高さと8時間の睡眠が重要になる。だから寝るだけと言ってもゴロゴロしながら漫画を読んだりDSをやってていいわけではない。そこがチョップ整体と親戚のおじさん家との最大の違いだ。
電気が消えて1人になると、わりとあっさり眠りにつくことができた。ちょくちょく院長が様子を見に来て、枕の位置を調整してくれる。しばらくすると腰や背中の辺りを中心に、全身がじわーっと温かくなってきた。それからなぜか左の足首が妙に痛い。今まで神経が通ってなかった部分、つまり体の悪い部分にこういう症状が出るそうで、僕の場合は施術後2、3日間痛みが残っていた。首をチョップされたのに足が痛いというのは不思議だが、少なくとも体になんらかの効果が現れているのは確かだ。
「寝るだけ」は自分で治す治療法
全ての神経の源である首のズレを直すことで、体のゆがみから内臓の不調までを解消しようというのがこのチョップ整体。実はこうした整体は、「カイロプラクティック」と呼ばれる伝統的な整体で、日本でも以前から行われてきたものだ。
チョップ整体院の真髄は、チョップそのものよりも「8時間寝ること」にあると院長は言う。通常の整体は週に何度も通わなければならないようなものも多いが、チョップ整体の施術回数はわずか1〜2回、多い人でも3〜4回。1回にかかる時間は長いもの、のその分しっかりと体を回復させることで施術回数を大幅に減らすことができるのだそうだ。お財布に優しい整体でもある(料金は初回1万円/2回目以降は検査無料・休息のみ5000円・施術1万円)。
8時間寝るだけ、というとすごいうまい話のように聞こえるけど、仰向けで8時間寝続けるのは結構大変だ。最初の4時間くらいはいいのだけど、次第に眠気もなくなってくるし寝返りもほとんど打てないので体も痛くなってくる。ただ、その分自分が治療に参加しているという実感もある。なんとか8時間を乗り越えた後はちょっとした達成感があった。正直、「寝る」ってことをナメてました。すいません。
体のゆがみの原因は、姿勢や歩き方など日常生活にあることがほとんど。逆に言うと、自分で治そうという心がけがなければどんなに整体に通っても根本的な解決にはならないのだ。チョップ整体院で「寝るだけ」の8時間は、そういうことを身をもって実感させてくれた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 15メートル巨大ダイオウイカのプロジェクションマッピングが出現 六本木が深海に
映像でしか見ることができなかった巨大イカが目の前に! イカとメディアアートの融合を一足早く体験してきた。 - カオスな熱狂:ネットにヤんだ人集まる「インターネットヤミ市」探訪 クラウドカレーにあえぎ声おみくじも
インターネットに「ヤミ」気味な人々が売買するリアルマーケット。そこで売られていたモノは? - 初音ミクの「メルト」を人形浄瑠璃で――「世界ボーカロイド大会」リポート
ネギを振る文楽人形、ボカロ列車、ファンによるボカロライブ……ファン主催によるイベント「世界ボーカロイド大会」は盛りだくさんな内容だった。 - 観光にオススメはできない:いま密やかに注目のスポット「廃道」ってなんだ?
好きな人にはたまらないスポットとして廃墟、廃線があります。そして、いま注目なのが「廃道」らしいということで、廃道家にお話を聞いてきました。激レア「廃道」写真も紹介します。 - 公開舞台げいこリポート:ペットボトルに段ボール……廃材で彩られる舞台版「もののけ姫」 日本で上演スタート
ビデオテープ廃材で作られたタタリ神。アクロバティックな発想は吉と出るか凶と出るか。 - クール&セクシー! サイボーグネネさんの世界と、その舞台裏[1/3]
コスプレイヤー、サイボーグネネさんのコスプレ撮影会に出かけて、現場の雰囲気やちょっとした舞台裏の苦労を体験してきた。 - ウンコ×下水×動物園=無理:脳天貫くウンコの香り→そして昇天 世界一臭い食材を大人が泣きながら食べてみた
新宿ロフトプラスワンで開催された「世界のくさウマ実食会」。“世界一の臭さ”と言われるシュールストレミングをはじめ、世界中の「くさウマ」食材を食べ尽くすイベントだ。 - 初音ミクが演じたメディアアートと演劇の新境地 「THE END」初演
ルイ・ヴィトンが衣装デザインを担当したことでも注目された同作。「初音ミクがいなければ出来なかった新時代オペラ」の中身に迫る。 - 閲覧注意:なんで虫の味もわからん奴らに合わせないかんのだ!――東京虫食いフェスが熱かった
さあ勇気を出して!