8年ぶりに公開されたポンプ室にも潜入
11月16日と17日の両日、埼玉県春日部市にある首都圏外郭放水路を一般公開する特別見学会が、同敷地内で催された彩龍の川まつりとともに実施された。
首都圏外郭放水路は、低地が広がる中川・綾瀬川流域の浸水被害を抑えるために地下50メートルを貫く総延長6.3キロメートルのトンネル形式の放水路として建設された。流域の河川が氾濫した際には河川の水を引き込み集め、調整しながら江戸川へと放流する。その施設の一部である調圧水槽には59本の巨大な柱が林立し、見た目から“地下神殿”とも呼ばれている。
普段、この調圧水槽への見学は予約をすれば可能なのだが、基本平日限定でしかも人数が限られ、施設を使用している際には見ることができない。だが、今回は年に一度の予約なしで見学できるチャンス。しかも土日の開催である。さらに特別に調圧水槽から江戸川へと水を吸い上げるインペラ(羽根車)が特別公開されており、8年ぶりに公開されたポンプ室への入室も可能なのだ。これは見てみたい!
見学当日は開場前にも関わらずすでに500人ほどが並ぶ盛況ぶりだった。同会場では彩龍の川まつりも行われており、出店でモチや飲み物を買って並んでいる人も見られた。
地上の入口から調圧水槽へは約20メートルほど116段の階段を下っていかないとたどり着けない。入口が狭いため少しずつだが、目的地の調圧水槽が幅78メートル、長さ177メートルと広大なため、それほど待たずに降りることができた。
そこには確かに地下神殿が広がっていた。林立する巨大な柱。無機質で無駄がないコンクリートの壁が奥まで続いている。このシチュエーションなら多くの映画やドラマの撮影に使用されるのも頷ける。入り口の手前にはインペラがあり、奥は第一立坑へと続いている。まずは地下神殿を堪能する。
巨大な柱の半ばに水が達した跡がある。先日台風が上陸した際にもここには大量の水が流れ込んできた。首都圏外郭放水路の完成後は洪水調整の甲斐あって、流域の浸水被害も軽減している。今年は11月1日現在で11回稼働しており、1713万立方メートルの水量を調節したんだとか。
この調圧水槽へは河川の水が引き込まれてくるため、当然土砂も流れ込んできて堆積していく。見学会の前にはその土砂を機材を使って取り除く作業をしているそうだ。ご苦労様です!
調圧水槽の奥には立坑がぽっかり口を開いている。ここにたまった水が調圧水槽へと流れ込んでくる仕組み。途中、首都圏外殻放水路の施設説明を聞いたりしながら、水の流れに従ってインペラ(羽根車)方向へと戻ってみた。
ポンプインペラの排水量は毎秒50立方メートル。これが巨大ポンプとともに4台設置されている。調圧水槽に引き込まれた水は4台のインペラで効率よく吸い上げられて江戸川へと放流される。インペラの周りも水を効率よく吸い上げられるように工夫がされており、説明員がていねいに教えてくれる。
そしてこのインペラへ回転力を与えているのが直上のポンプ室にあるガスタービンと歯車減速機だ。インペラと同じく4機並んでいる。航空機用に開発された1万300キロワットのガスタービンを改造したもので、洪水調整時でない時も定期的に稼働テストを行いメンテナンスしているという。ちなみに、歯車減速機の周囲にある赤くて丸いものは、二酸化炭素を噴霧するための装置で消火用とのこと。
治水のことも分かるし、地下神殿も堪能できるのでオススメ! 前述したが、一般開放日以外でも調圧水槽は事前に予約をすれば見学することができる(今回特別に公開されたインペラやポンプ室は見学不可)。1人から受け付けている。ここでクラシックコンサートとか見てみたいものだ。
おまけ
地下神殿を堪能した出口にはお祭り会場が。消防車や土砂を取り除くのにも使用されるような機材に搭乗することができたり、埼玉県のゆるキャラたちと写真撮影ができたりする。さらに江戸川への排水樋管を見学できるボートの受付があったりとアクティビティもそろっていた。
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