高畑勲監督のスタジオジブリ最新作「かぐや姫の物語」で、2012年6月に亡くなられた地井武男さんに代わり、三宅裕司さんが「翁」の声の一部を吹き込んでいたことが分かりました。ネットでは「全然分からなかった」「“特別出演”ってそういうことだったのか」と、作品を鑑賞したファンから驚きの声が上がっています。
映画の制作途中に残念ながら亡くなられた地井さんですが、前もって録音した声に絵を合わせていくプレスコという手法で作品が作られていたため、基本的には全パートを収録済みでした。しかし制作後半の2013年夏、セリフの変更などにともないアフレコをすることに。地井さんの過去の出演作から音声を抽出して組み合わせる方法なども検討したそうですが、そんな中で高畑監督から三宅さんの名前があがり、依頼することになったそうです。
三宅さんは当初、「地井さんが真剣に強い思いで取り組まれ、更に映画として遺作となった作品に自分の声を重ねるなんて……」と戸惑ったそうですが、生前の交流への感謝もこめて参加を決意。一方で、代役に観客が気を取られるのを懸念し、名前を公表しないよう求めました。しかし、ジブリ側の「映画の記録として三宅さんの名は残したい」という希望もあり、エンドロールにだけ「三宅裕司(特別出演)」と名前が載りました。このエンドロールを見た観客から問い合わせが多く寄せられたことから、情報を公開することにしたそうです。
「どこへ行ってしまったんだよー。おーい、姫よー」というセリフや、姫が月へ帰ってしまい泣くシーンの息づかいなど、計6シーンを熱演した三宅さん。その声を聞くや高畑監督は「誰が聞いても違和感がない。地井さんそのものだ」と大満足したそうです。一発OKが相次ぎ、アフレコはたった10分で終了したというから驚きです。
今回の発表を受け、三宅さんは「地井さんにはずいぶんお世話になっていましたので、これで恩返しができたかなという気持ちが強いです。その気持ちが大きくて今回の件も引き受けさせていただきました」とコメント。また地井さんの事務所は「三宅さんのお力添えで仕事を全う出来た事に安堵し、感謝しております」と語っています。
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