電王戦、将棋ソフトがまず1勝 無観客の有明コロシアムにロボットアーム……シュールさも見どころ:現地リポート、「やねうら王」問題も(2/2 ページ)
習甦が菅井竜也五段を破った第1局、「やねうら王」をめぐる衝撃のラスト……。当日の現地模様やニコニコ生放送の雰囲気を写真を中心にリポートしよう。
衝撃のラスト 「やねうら王事件」
質疑応答も終了し、残すところは第2局の紹介PV&意気込みコメントのみ――といったところで“事件”が起こった。第2局に出場する将棋ソフト「やねうら王」が、バグを修正した改訂版になるというのだ。そして、対戦相手の佐藤紳哉六段によるとアップデートにより棋力が“明らかに”上昇したという。それは、「事前に本番と同じソフトを貸し出す」という大会ルールにそぐわない。それでも、ドワンゴと将棋連盟が協議した結果、特例で認めることになった(参考:将棋電王戦、出場ソフトにバグ修正の“特例”認める 「棋士に失礼」「興ざめ」と非難の声も)。
筆者はPV公開前にやねうらおさんの(やねうら王開発者)ブログ記事「佐藤紳哉六段と会ってきました!」やツイート「川上会長が心配になって直々をかけるほどの内容なのか…。PV、怖えーーー!!!」を読んでいたこともあり、PV内容は過剰なプロレス的演出だと受けとった。しかし、その後の佐藤六段のコメントが大変シリアスだったため判断に困った。現地会場はこれまでに感じたことのない雰囲気に包まれ、また(会場が広いため)物理的に寒かった。
“特例”判断は意見は分かれるだろうが、個人的には「より強いソフトがあるのなら、そちらの方を見たい」というのが本音ではある。そもそも第2回将棋電王戦では、「統一ハードウェアの使用(クラスタ接続不可)」「ソフトの事前提供」といったルールはなかった。その結果、前回はプロ棋士の1勝3敗1分に終わった。正面からの読み合い勝負ではあと一歩まで迫るもコンピュータに勝てていない。約700台をクラスタ接続したGPS将棋に至ってはA級棋士をも圧倒した。
新ルール導入について、ドワンゴは「コンピュータプログラムの勝負に力点を置きたい」と説明していた。将棋連盟によると、「ソフトの事前提供」もドワンゴ側の意向だという。こうした経緯のため、一部ユーザーからは「プロ棋士を優遇している」と指摘されていた。今回の決定には、そうした懸念を払拭する狙いがあるのかもしれない。だとすれば、変更をするのは両陣営のトリックスターが対決する第2局を置いて他はない。
それにしても、改めてPVを確認すると“やりすぎ”だったと言わざるをえない。ニコニコの将棋の煽り映像はこれまで八面六臂の活躍をしてきたが、こと近日はSTAP細胞騒動で“(理研の)過剰演出”が問題視されるなどタイミング的にも逆風が吹いていた。余談だが、前回出場者の伊藤英紀さん(Puella α開発者)は、PVでヒール役を務めたせいか、将棋界の重鎮でもある内館牧子さんの逆鱗に触れ、残念なことに裁判沙汰に発展している……。
ほとんどの人が予想しなかった衝撃のラストは、番組アンケート「1:とても良かった43.7%」「5:良くなかった17.7%」という将棋放送における過去最低記録をもたらした。視聴者の声は重い。しかし、今後の展開次第ではこうしたマイナスがバネとなり、プラス方向に一気に躍進する可能性もある。来週の第2局がこうしたゴタゴタを忘れさせてくれるような内容になることを期待している。
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