週刊少年ジャンプで連載中の、青春部活マンガ「ハイキュー!!」の特大ポスターが、6月9日から15日まで新宿駅に貼り出されるという。いち早く届いたデザインを見せてもらったが、納得いかない点が1つだけ。あの地味で残念な1年生控え選手、山口忠くんがどこにもいないじゃないか!!!
そもそも山口くんとは誰なのか。山口くんは烏野高校男子バレー部の1年生4人の中で、唯一レギュラーに入れていないミドルブロッカー(MB)。同学年で幼なじみの長身MB・月島蛍にいつも付きまとっては、「ツッキー(月島)って188センチあるんだぜ!」などと持ち上げては月島にうざがられ、「ゴメン ツッキー!」と謝ってばかりの情けないキャラだ。
しかし、山口くんのほろ苦い部活動だって立派な青春の1ページじゃないか。特に大学時代、就活で70社全滅しそのままフリーターとなった筆者にとって、山口くんはとても他人とは思えず、どうにも放っておけないキャラの1人だ。
「ハイキュー!!」名シーンがポスターに
ポスターは「ハイキュー!!」第11巻発売を記念した、「ハイキュー!! セイシュンモーメント」という企画モノ。作中の名シーンにキャッチコピーを添えたデザインで、これを8種8枚、京王線新宿駅と小田急線新宿駅のホームにずらりと掲示する。
どのコマも青春の1コマを思い起こさせる名シーン。「かつて、部活をしていたキミへ。いま、部活をしているキミへ――」というコピーのとおり、部活をしていた大人、部活に打ち込んでいる学生に響きそうだ。ただしどれもレギュラーメンバーのコマばかりで、山口くんのコマが一切使われていない。
だったらこちらで作ってしまえ、というわけで、勝手に「ハイキュー!! セイシュンモーメント」山口くんバージョンでパロディを作ってみた。
「ベンチから試合を見るのが、もどかしくてたまらなかった。」
【オリジナル版】
最初に選んだのはこのキャッチコピー。控え選手の山口くんなら、試合に出られない悔しさがにじみ出たナイスなポスターに仕上がるはずだ。初の練習試合でスタメンを発表されたときと、その試合中ベンチにいたときの山口くんのコマに替えてみる。
【山口くんバージョン】
……あれ? あんまりもどかしそうじゃ、ない? スタメン発表時、1年で唯一レギュラーから外されて沈んでいるけど、コメディタッチで描かれているのと、体育座りのおかげでベンチキャラとしてすごく収まり感がある。試合中も悔しがるどころか、大好きなツッキーを応援するのにめちゃくちゃ夢中になっている。おまえは保護者か。
「いつの間にか、かけがえのない仲間になってた。」
【オリジナル版】
部活動で苦楽を乗り越えてきた仲間とは、特別な絆が築かれているものだ。小学校から一緒にバレーをしてきた仲間、ツッキーを思う山口くんのコマを抜き出せば、きっとふさわしいポスターになるはず。
【山口くんバージョン】
ツッキーツッキーやかましすぎだろ。コミックス第1〜3巻の山口くんの発言を数えてみたら、38回中19.5回も「ツッキー」って言っていた(0.5回は「ツッ…」という言いかけ)。口を開けば5割以上「ツッキー」って、もはや仲間の一線を超えてしまっているような。
「あの日の挫折があったから 今の自分があると思う。」
【オリジナル版】
【山口くんバージョン】
雰囲気が変わってきたぞ。
物語が進むにつれ、コートへの思いが強くなる山口くんはいよいよ具体的な行動に出る。ジャンプフローターサーブ(無回転のブレ球を打つサーブ)を習得すべく、烏野高校バレー部OBに教えを請うシーンだ。
「これから先も 1年で俺だけ試合に出られないのは嫌だから」――すぐレギュラーに入れないと分かっていても腐らず前を向く。コンプレックスを抱えているだけに見えた山口くんが、コンプレックスを原動力に成長しようとする姿に励まされる。
「デビュー戦のほろ苦い記憶は、心の片隅にしまってある。」
【オリジナル版】
【山口くんバージョン】
インターハイ県予選中のある試合、絶体絶命のピンチに山口くんはピンチサーバーとして投入され、念願の初出場を果たす。与えられた役目は、試合の流れを変えるようなサーブを打って再びベンチに戻るという責任重大なもの。緊張でガチガチの山口くんはなんとか自分を鼓舞してサーブを放つものの、無情にも球はネットに当たってしまう。ほろ苦いってレベルじゃない。
ただ、山口くんのこのプレーは無駄ではなく、これがきっかけで結果的にチームはいい流れに向かう。どうしてサーブに失敗したのにいい方向へ変わるのか。山口くんがコートを出て行くまでの一部始終はぜひコミックで確認してみてほしい。
「悔し涙が出ちゃうほど 部活がすべてだった。」
そして最後のポスター。
【オリジナル版】
【山口くんバージョン】
部活動に全力で取り組めないツッキーを奮起させようと、山口くんが胸ぐらをつかんで叱咤(しった)する名場面だ。どれだけ練習したところで世の中には上がいる。いつか誰かに負けるのにがんばる理由が分からないと訴えるツッキー。そこへ才能のなさを1年生で一番痛感している山口くんがこのセリフをぶつけていく。
「プライド以外に 何が要るんだ!」
ようやくやる気になって練習したフローターサーブは初試合で入らなかった。それでも腐らず練習を続けるのは、サーブを決めたい、ほかの1年生に負けたくないというプライドが本物だからだろう。才能のなさや失敗を知る山口くんだからこそ、強く胸に響くセリフだ。山口くん、カッコいいじゃないか!
1人1人に青春がある、そして衝撃の事実……
5本作ってみた山口くんの「セイシュンモーメント」。情けないものから胸が熱くなるものまで、いろんな意味で泣けてくるいいデザインに仕上がったと思う。山口くんだけでなく、ほかの控え選手やレギュラー陣、マネージャー、コーチや顧問の先生……あらゆる部活動生1人1人の青春をていねいに描いている「ハイキュー!!」という作品だからこそだろう。
ちなみに本家「セイシュンモーメント」ポスターにはQRコードが付いていて、専用のスマートフォン用サイトにアクセスすることが可能。こちらでは12種類の「セイシュンモーメント」画像をパララックスで体感することができるので、見かけたらぜひチェックしてみてほしい。
と、ここまで作っておいて驚きの事実を知る。「セイシュンモーメント」のポスターは新宿駅だけでなく渋谷駅にも別デザインで掲示されているのだそう(むしろ渋谷駅の方がデカイ)。そして渋谷駅バージョンでは例の「プライド以外に 何が要るんだ!」のコマが使われているのだとか。うわー、ここまでの労力っていったい……。
ええと、さっき使ったコピーの中で今のぼくにふさわしいものは。
「あの日の挫折があったから 今の自分があると思う。」
今日も山口くんに負けじとがんばるか。
(C)古舘春一/集英社
提供:株式会社集英社
アイティメディア営業企画/制作:ねとらぼ 編集部/掲載内容有効期限:2014年6月23日
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