スタジオジブリ最新作「思い出のマーニー」(2014年7月17日全国ロードショー)の公開に合わせて「思い出のマーニー×種田陽平展」が江戸東京博物館(東京都墨田区)で7月27日から開催されます。映画美術監督の種田さんがデザインした「マーニーの部屋」をセットで再現し展示します。7日に行われたKDDIとの共同発表会ではその一部が先行公開されたほか、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが登場し、作品に対する思いや展覧会の見どころを語りました。
「わたしはあなたを待っている。」――マーニーのかわいらしいお部屋が目の前に
映画「思い出のマーニー」は英国の同名児童文学小説を再構成し、映像化したもの。北海道の海辺の村にある湿地を舞台に、病弱で内気な少女・杏奈と、金髪のロングヘアーで青い瞳をもつ不思議な少女・マーニーとのひと夏の交流と成長を描きます。
マーニーが住んでいるのは海辺に面した「湿っ地屋敷」と呼ばれる洋館。西洋風でありながら、どこか日本的な懐かしさを感じさせる不思議な建物で、このなかにあるマーニーの部屋が今回セットで再現されました。人が実際に中に入れるサイズです。さっそく写真でご紹介しましょう。
船着き場の向こうにはマーニーの待つ青い窓が見えます。中に入ってみると、きゃあ、かわいらしい! 青い窓が印象的なヒロインのお部屋が目の前に広がっていました。映画の中に入り込んだみたい。家具から細かな小物に至るまでこだわりが感じられます。もしかしたら映画のカギになるような発見もあるかもしれないなーと宝探しのような気分でお部屋を見回してみると楽しいです。
このほかに種田陽平展では湿っ地屋敷のジオラマ、湿地にある漁師小屋やボートのミニチュアセット、映画の美術資料などを展示します。KDDIが展開する「au loves ジブリ」キャンペーンではこの展覧会をスマートフォンで体感できるコンテンツ「見つめるジブリ展」を公開するほか、「au スマートパス」会員向けの特典付きチケットプレゼント、「トトロ」や「コダマ」のLINEスタンプ配信を予定しています。
さて、あらためて触れられる距離で映画美術を鑑賞すると、その魅力にひきこまれます。かつて宮崎駿監督は「映画の品格は“美術”で決まる」と話していました。「思い出のマーニー」に登場する建物や室内をデザインした種田さんは今回、実写映画の手法で3次元の空間をち密に設計したそうです。
特に洋館については鈴木プロデューサーが「ジブリでやっていない建物を作っちゃおう。そうすればお客さんにとってジブリ作品といっても新鮮なものを受け取ってもらえるじゃないかということで(この洋館は)種田さんがはじめに取り掛かった仕事だったし、この洋館のデザインを本当に頑張ってやっていただいた」と熱を込めて語るほどでした。
「アリエッティでやり残したことがあった」
発表会では鈴木プロデューサーとKDDIの高橋誠専務によるトークセッションも行われ、映画制作の裏話も明かされました。そもそも「マーニー」が題材に選ばれたきっかけは、鈴木プロデューサーが原案小説を大好きだったから。しかし「心の中を描いている話なので映画化は難しいと僕自身は思っていたんですよ」(鈴木)
そんなとき、同作の監督を務めることになった米林宏昌さんが「もう1本映画をやりたい。アリエッティでやり残したことがある」と鈴木プロデューサーに持ち掛けました。しかし米林監督は企画を特に持っておらず、それならばと登場したのが「思い出のマーニー」だったそうです。
「マロ(米林監督)は女の子を描くのがとても得意なんですよね。マーニーの特徴は2人のヒロインがいること。ということでハッときて原作を薦めたんですよ。女の子が2人も出るんだぞー! この2人の女の子がすごくかわいいんだぞー! と説得した記憶があります」(鈴木プロデューサー)
さらに鈴木プロデューサーはニヤリと「それにこの企画なら……宮崎駿も手を出さないと思った」と続けます。ど、どういうことですか!? 「僕は宮崎駿をよく知っているんですがね、彼が手を出すのは男女の話。女の子2人の話なら手を出さないだろうと思った。それが僕の計算でした!」(鈴木プロデューサー)
宮崎駿監督・高畑勲監督なきジブリが挑む新たな作品は同性の関係性を描く物語……。女の子を描くことが得意な米林監督が手掛ける、ジブリ初のダブルヒロインにぜひ注目して映画を見たいですね。
「あなたのことが大すき」……じゃなかったかも!? キャッチコピーのボツ案とは
「思い出のマーニー」には「あなたのことが大すき」というな胸がキューンとなるキャッチコピーが使われていますが、実はボツになった案があったそうです。鈴木プロデューサーいわく「今回キャッチコピーに悩んだんですよねー。女の子2人のやりとりが中心になっている話なのでね、最初は“ふたりだけの禁じられた遊び”とか、もう1つ“ふたりだけのイケナイこと”とか考えたんですが」
ポスターをよく見ると浮かない顔した杏奈と明るい表情をしたマーニーが背中合わせに寄り添っています。この絵を通して「杏奈ちゃんの心の支えはマーニーである」ということを提示したかったといいます。鈴木プロデューサーいわく、映画の企画者として「男女の問題を扱う映画はこれまでもたくさんあったけれど、今という時代、異性に行く前に同性にある納得を得る話のほうが良いんじゃないかと思って今回の映画を作ってみたんですよ」(鈴木プロデューサー)
映画を見たり、展覧会に出かけたり――、この「思い出のマーニー」の魅力を思う存分味わえる催しが盛りだくさん。ひと夏の特別な体験が「湿っ地屋敷」であなたを待っているはずです。
- 「思い出のマーニー×種田陽平展」
- 会期:2014年7月27日〜9月15日(休館日:8月4日、9月1日)
- 場所:江戸東京博物館 1階展示室
- 開館時間:午前9時30分〜午後5時30分(金曜日は午後9時、土曜日は午後7時半まで)
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