将棋界のトップ棋士でありながら趣味のチェスでも日本ランキング1位の実力を持つ羽生善治名人と、かつて「人類代表」として最強のコンピュータと戦った元チェス世界チャンピオンガルリ・カスパロフさんが、ニコニコ生放送の将棋電王戦特別企画でチェス対決を行いました。
対局は白(先手)と黒(後手)を入れ替えての計2局が行われ、第1局はカスパロフさんが白を持つことに。最新のチェス戦術に詳しい羽生名人の対局を事前にチェックしてきたというカスパロフさんは、相手の罠にはまりにくく純粋な力比べになりやすい「力戦型」に誘導する作戦を選択。既に現役を引退しており、本格的な試合形式でチェスを指すのは5年ぶりだというカスパロフさんでしたが、羽生名人も「この形で来るとは夢にも思わなかった」と語った意表の作戦で往年の力を発揮し、見事に第1局を勝利します。
続く第2局では羽生名人が白の先手番に。チェスでは極めて有利とされる先手を持った羽生名人が序盤をしっかりとリードした状態で進めましたが、途中でカスパロフさんに引き分けに持ち込むチャンスが訪れます。これは同じ局面が3回連続して現われる「スリーフォールド・レピティション(将棋の千日手)」というもの。チェスでは不利な後手番で引き分けに持ち込むのは勝ちに等しい結果と言われていますが、後手のカスパロフさんはあえて引き分けを回避して勝ちを目指す力強い手を選択。これを見たニコニコ生放送の視聴者からは「かっけええ」「漢カスパロフ」といった賞賛のコメントが多数書き込まれました。
その後も一進一退の攻防が続きましたが、盤上から互いの駒が少なくなってくるにつれて形勢ははっきりカスパロフさん有利に。最後はカスパロフさんの「キング」が自ら進軍するチェスらしい展開となり、羽生名人がリザイン(投了)を宣言。かつて「史上最強のチェスプレイヤー」とも称された元世界チャンピオンとしての貫禄を見せつけました。
対局後の感想戦ではカスパロフさんが羽生名人に丁寧な指し手の解説をするシーンも。普段将棋では圧倒的な実力を持つ羽生名人が誰かに教えを受けるという珍しい姿に、コメントも「天才が天才に指導してる」「また羽生さんが進化してしまうw」などと盛り上がりました。貴重なマッチメイクと充実の対局内容に、放送後のアンケートでも99%が「よかった」と答えるなど、多くの人が満足したようです。
(たろちん)
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