芝浦工業大学が、針を使わずに気泡の圧力で試薬や遺伝子までも体内に届けることのできる新しい「針なし注射器」の開発に成功したことを発表しました。
痛みを伴わない「針なし注射」は同大学の機械工学科の山西陽子准教授が開発。これまで“針なし注射器”はバネの力で液体を高圧で発射し、皮膚を貫いて筋肉に薬剤を投与するものなどが開発されてきましたが、これは神経を傷つける恐れや、多少の痛みを感じるなどの問題があったそうです。
そこで山西准教授は2012年に、液体中で電圧をかけることで高速発射されるマイクロレベル(1000分の1)の気泡の破壊力を利用して細胞を切開し、試薬や遺伝子を輸送できる「マイクロバブルインジェクションメス」を開発しました。これまでは液中でしか使えなかったこのデバイスを、構造を改良することで空気中でも使用可能にしました。これにより、注射技術の習熟度に関係なく、直接皮膚に押し当てるだけで痛みをともなわずに試薬を目的の場所へ輸送することのできる新たな注射器が開発されたとのこと。
この針なし注射器は、局部に精度の高い治療ができ、マイクロレベルで孔(あな)を空けることができるので、細胞へのダメージも少なくて済みます。穿孔(せんこう)径は約4μm(マイクロメートル)。ちなみに1ミリが1000μmですから……その小ささがお分かりいただけるでしょう。そのため植物細胞を含むあらゆる固さの細胞への遺伝子導入・治療など幅広い用途に使用できると見られています。
今後はデバイス構造の最適化、試薬の導入量、痛み、穿孔深度の評価を行い、企業と連携するなどして実用化を目指していくそうです。近い将来、注射を打たれるときに、お医者さんから「チクッとしますよー」と言われなくなるのかもしれない……! 実用化が待たれます!
(高城歩)
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