集英社のWebマンガサイト「となりのヤングジャンプ」で連載中の「有害都市」第7話で、「アメリカンコミックについて不適切な表現」があったとして、作者の筒井哲也さんが謝罪しました。同サイトに経緯説明が掲示されています。
「有害都市」は、表現規制の進んだ2019年の日本を舞台に、表現の自由を巡る漫画界の葛藤を描く作品。第7話ではとある登場人物が、アメリカの商業コミックの歴史について、1950年代に始まった表現規制などによって「多様性を失ってしまった」「ヒーローものしかなくなった」といった旨の説明をしていました。
この内容に対しネットでは、アメコミに詳しいファンなどから「実状と異なる」と苦情が続出。確かに、例えば映画公開中の「シン・シティ 復讐の女神」の原作はアメコミですがスーパーヒーローものとは一線を画すものですし、ピューリッツァー賞を受賞した「マウス―アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語」といったオルタナティブコミックと呼ばれる作品群もあります。
こうした「アメコミはヒーローものだけではない」という批判について筒井さんは、「作者としてもその認識に全く異論はございません」とコメント。作品をより劇的にするため、「1950年代のアメリカで巻き起こった有害コミック追放運動の余波を、その実態より激しいものとして過剰に演出」してしまったと振り返り、謝罪しました。
また筒井さんは、「若干のネタバレになりますが」と前置きし、アメコミ批判が今後のドラマの伏線だったことを説明しています。その伏線とは、「1950年当時、有害コミック追放運動が巻き起こり、全米のメディアからコミック業界が猛バッシングを受ける中、アンダーグラウンドの舞台で風刺とパロディー精神を武器に、あらゆる権威を相手に戦い続けたクリエイター」という、実在人物をモデルにしたキャラクターを登場させるというもの。この人物の境遇をより劇的にすべく、アメコミの状況を誇張してしまったとのことです。
筒井さんは、「演出上の都合があるからといって史実を好き勝手に曲げて描いて良いという道理はありません」「過剰なデフォルメによる表現が、読者の皆様を混乱させ、とりわけアメリカンコミックを愛する方々の心を深く傷つけてしまいましたのは、すべて作者の不徳の致すところです。本当に申し訳ありませんでした」と謝罪。第7話を非公開にし、修正版を改めて公開するとしています。
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プロの犯行。