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五輪エンブレム、使用中止も「盗作」否定 「ロゴに問題はないが、国民の理解を得るのは難しい」

訴訟があったから取り下げるのではなく、あくまで「国民の理解を得られなくなった」のが大きな理由としています。

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 デザイナーの佐野研二郎氏が制作した2020年東京オリンピックのエンブレムについて、大会組織委員会は9月1日、記者会見を開き、正式に使用を取りやめることを発表しました。


画像 武藤敏郎事務総長(ニコニコ生放送の会見生中継より

 武藤敏郎事務総長によると、各所で指摘されているロゴの類似について、佐野氏はあくまで「自分のオリジナル」と、盗作疑惑を否定。しかし騒動後、佐野氏本人や家族に対する誹謗中傷が続いていることや、東京五輪のイメージそのものを損ないかねないことなどを踏まえ、原作者としての立場から、ロゴの使用取り下げを申し出たとのことです。

 また、組織委側もロゴについてはあくまで「佐野氏オリジナル」であるとの考えを崩していませんが、一方で、現在の状況で「一般国民の理解を得るのは難しい」との判断から、佐野氏の申し出を受け入れたとしています。新しいエンブレムについては引き続き公募で決め、具体的な方法などはあらためて発表するとのこと。

 佐野氏がデザインしたロゴをめぐっては、7月下旬、ベルギー・リエージュ劇場ロゴとの類似が指摘され問題に。組織委は当初より「まったく違うもの」と“盗作疑惑”を否定していましたが、その後、佐野氏が当初作成していたロゴの「原案」が公開されると、今度はこれが、2013年の「ヤン・チヒョルト展」ポスターに類似しているのでは――と新たな疑惑が浮上。加えて、ロゴの「展開例」として使用されていた写真素材に無断転用が見つかったこともあり、組織委は8月31日、佐野氏および永井一正審査委員長を急きょ招集。話し合いの結果、取り下げの方針を固めました。


画像 Studio Debieによる、ベルギー・リエージュ劇場ロゴとの比較画像(関連記事

 無断転用が指摘されていた「展開例」の図については、もともと内部向けの資料として作ったもので、それが発表時に使われてしまったと説明。クローズドな場で、許可を得ていない画像を使うことはよくあるが、公の場で使う際には権利者の了解を得るのが当然であり、今回は不注意でそれを怠ってしまった――と、無断転用を認めました。



 一方、「ヤン・チヒョルト展」ポスターとの類似については、展覧会には確かに足を運んだものの、「ポスターがどういうものだったかは記憶にない」と佐野氏。あくまでエンブレムは自身のオリジナルであり、「まったく模倣はしていません」と主張しました。ロゴについては永井審査委員長も同じく、「佐野さんの言うとおりオリジナルなものとして認識されると自分は思います」との見解。しかし前述のとおり、「一般国民の理解を得るのは難しいだろう」との判断から、最終的には使用取り下げの方針を固めました。


画像 組織委が後日公開した、佐野氏による「原案」(画像は発表されたエンブレムデザインを元に編集部で作成したもの)

画像 ポスター右下の「T.」の文字が、佐野氏の原案とほぼ同じ、と指摘されていました(ギンザ・グラフィック・ギャラリーのサイトより

 武藤事務総長はあらためて、「国民のみなさまに大変ご心配をおかけし、東京都、政府、JOC、JPC、IOC、IPC関係者にも大変申し訳なく思っております。またスポンサー各社のみなさまにも大変なご迷惑をおかけいたしました」と謝罪。今後は「広く国民のみなさまに愛され、支持されるエンブレムを作っていきたい」とコメントしました。


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