現在映画上映中の「ガールズ&パンツァー 劇場版」。エクストリームすぎるアクションが楽しめる、痛快戦車エンタテインメント。「和製マッドマックス」なんて声もTwitterでは頻繁に見かけます。「これ戦車なの!?」というものまで登場。インフレを全く恐れずガシガシとなんでも投入。戦闘規模は尋常じゃなくなりました。
さてその一方で、ものすごく小さい戦車による戦闘を描いたスピンオフ「ガールズ&パンツァー リボンの武者」(〜3巻、以下続刊/月刊コミックフラッパー)が連載されています。
ガルパンで行われているのは「戦車道」。女子としての嗜(たしな)みであり、作法に則った礼儀正しいスポーツです。ところがこの作品に出てくる戦いは、違う。
通称「強襲戦車競技(タンカスロン)」。ルールは一つだけ、10トン以下の戦車であること(ちなみにガルパンの西住みほが乗るIV号戦車は25トン)。それ以外は何をやってもOK。観客はフィールドの中に入って応援するもよし。戦車を何十両持ち込もうが問題なし。対戦中に横から殴りこんで試合をつぶしてもいい。戦車によるストリートファイトです。
主催者なし。非公式の野良試合だから、いくら弾があたっても死なない安全安心のガルパン世界とはいえ、かなり危険。参加する少女たちも、戦車道を取り仕切っている連盟には内緒。
この試合最大の面白さは、1両でも参加できるということ。
勝つために何両も繰り出したり、チームを組んだりして策を練る相手校。それに対して、たった1両の軽装甲車で挑む2人の少女がいた。
姫、戦場に参る
楯無(たてなし)高校に通う鶴姫(つるき)しずかは、成績優秀で物静か、人形のように気品漂うお嬢様。しゃべり方はまるで江戸時代の姫。
彼女は元弓道部でした。ところが「道」がつくものは好かず、やめてしまいます。ちょうどその時、戦車道をやりたいと願っていた松風鈴と遭遇。
学校に戦車道部はない。ならば「戦車道」をやらなければいい、「戦車戦」をやるまで。2人は九七式軽装甲車、通称テケ車に乗り、「タンカスロン」に参加します。もちろん、学校の許可なんてなし。松風鈴が操縦するテケ車に乗って、出陣。
しずかは、戦いに飢えた武者。彼女の目的は栄光でも、名誉でも、プライドでもない。勝つ。それだけのために戦います。気高さに敬意を表して、彼女を「しずか姫」と呼びましょうか。
相手は、アニメ本編にも出てくる、サンダース大学付属高校(アメリカ式)のM22ローカストや、アンツィオ高校(イタリア式)のカルロ・ヴェローチェ。アニメでは名前だけ出てきたBC自由学園(ヴィシー政権と自由フランス式)のルノーR35などなど。
確かにテケ車は史実で活躍した豆戦車。とはいえ、多数で攻め込んでくる相手に対し、彼女らはたった1両。戦車道で戦ってきた歴戦の強豪校に、戦略よりも気迫で切り込んでいく。その様は、一歩進むごとに一人切り捨てる、刀一本だけ持った侍です。
やぁやぁ我こそは百足組也!
通常であれば、見つからないように戦うのが常。ところがしずか姫、高らかに名乗りをあげる。祖先である武田軍団の使い番「百足衆」の旗印を掲げ、「いざ尋常に勝負!!」
しずか姫は、どんな相手であろうと自らの信念を相手にまっすぐぶつけます。「戦う者、いかにあるべきか」を問い続ける。だからどんな相手でも、まっすぐ戦うものには敬意を払うし、強くても戦う心を持たぬものには怒鳴りつける。
彼女が「道」を好まなかったのは、流儀や伝統、礼儀やルールが先立って、戦いの精神が失われることに我慢ならなかったからでしょう。実戦の中でこそ、精神が研ぎ澄まされ、真の心が磨かれていくと信じている。そもそも彼女たち勝ってもなんにももらえません。だって野良試合だもん。なのにみんな、タンカスロンに惹かれていく。戦いたくて仕方ないんだ。
恐れ知らずとも思えるしずか姫。しかし彼女が圧倒される人物がいます。大洗女子学園の面々です。
アニメ「ガルパン」の主人公たち。ものすごい古いおんぼろ戦車をかきあつめ、強豪校に勝ちました。物量で押せるわけもなく、ギリギリの戦い方で死線をくぐってきた強者です。切り込み・組み討ちが得意なしずか姫と違い、テクニックと戦略で一回り上。その存在は、脅威。
テレビ版や劇場版を見た人なら、「大洗の子たちは客観的に見ると、こんなにも育っている」という事実にゾクゾクするはず。3巻では大洗のあるチームと、奉納戦車戦の一騎打ちを行います。相手はベストメンバー。しずか姫、武者震い。
しずか姫を軸に描かれる戦車戦は、劇場版のような派手さはありません。けれども彼女が見ている戦いの世界は「道」のつかない、スポーツではない真の戦い。彼女は、自分より強い戦車乗りとの合戦を所望し続けます。
たとえどんな相手であろうと、しずか姫は騎馬である操縦手・松風鈴にまたがり、一騎で敵将の首を取りに切り込んでいく。
(たまごまご)
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