大晦日の晩になると、秋田県男鹿では「泣く子はいねが〜。親の言うことを聞かねぇ子はいねが〜」と、鬼が怒ったような形相の怖い大男たちがやってきます。皆さんご存じの「なまはげ」です。
そのインパクトといったらかなりのものです。全国的にも有名ななまはげですが、この風習は秋田県の中でも男鹿とその周辺だけなのです。
「恐ろしいなまはげ」というイメージがありますが、その正体はあまり知られていないのでは……。男鹿に古くから伝わるなまはげの秘密に迫ります。
なまはげって何者?
なまはげは「なもみ」という言葉からきているといわれています。「なもみ」とは、仕事もしない怠け者が囲炉裏にばかり当たっていて手足に火斑ができること。その「なもみを剥ぐ」という意味から「なまはげ」になったといわれています。
なまはげの手にある出刃包丁は「なもみ」を剥ぐために使われるのです。一見、恐ろしいなまはげですが、怠け心を戒める存在だったり、無病息災、五穀豊饒などをもたらしてくれる「来訪神」として大事にされています。
なぜ、秋田の男鹿だけに現れる?
すっかり秋田名物として定着しているなまはげですが、なまはげが現れるのは男鹿とその周辺地域のみ。なまはげが男鹿に現れるようになった起源については諸説あります。その一つが「漢の武帝説」です。
──中国の漢の時代に皇帝である武帝は不老不死の薬草を求め5匹のコウモリを鬼に変身させ、男鹿で働かせていました。ある日、休みをもらった鬼たちは村に行き、田畑を荒らしたり、人々を襲ったりしました。困った村人たちは、千段の石段を一晩で築いたら毎年一人ずつ娘を鬼に差し出すが、できなければ村に来ないようにという交換条件を出しました。順調に石段を重ねる鬼たちを見て焦った村人は石段が999段になったところで、あわてて朝一番を告げるニワトリの鳴き真似をして鬼たちを追い出したといいます。
その999段の石段というのが男鹿にある赤神神社五社堂への石段──と言い伝えられています。
家になまはげが来たらどうする?
なまはげがいざ家に来たらどうすればよいのでしょうか? なまはげはどの家にもやみくもに現れるわけではありません。新しいお嫁さんがいる家、子どもがいる家を狙っています。つまり、新しく入ってきた人がいる家を訪れているのです。
まず、なまはげが入る前に「先立」が来て、家の主人になまはげが入ってもよいか確認をします。もしも、その家に不幸や出産があった場合は入れないことになっています。
なまはげは来訪神ですから、家に現れた場合は料理やお酒などなまはげに振る舞い、しっかりとおもてなしをします。怒り叫んでいるなまはげの姿がよく目にしますが、お膳の前で礼儀正しく座るなまはげの姿もあり、そのギャップが何ともいえませんね。
恐ろしい形相と風体のなまはげですが、その意味を知れば知るほど愛着がわいてくるもの。男鹿には「なまはげ館」など、なまはげについてより深く知ることができる施設もあるので、興味がある方は一度訪れてみてはいかがでしょう。
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