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「ぷよぷよ」のクローン? パクリ? 物議かもした「Magical Stone(マジカルストーン)」開発側の発表全文【全文書き起こし】

「Magical Stone」発表時の映像から、れそ氏の説明を書き起こしました。

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 「ぷよぷよ」のeスポーツ化をうたったゲーム「Magical Stone(マジカルストーン)」が物議をかもしています。ルールは「ぷよぷよ通」をほぼコピーしているものの、グラフィックやキャラクターなどは別モノ。また「Magical Stone」側は「セガの容認を得た」と説明している一方、セガホールディングス側は「公式に許諾した事実はございません」とコメントしており、両者の見解に一部食い違いも見られています(関連記事)。

 この食い違いはどこから来ているのか、またなぜ「ぷよぷよ」のトッププレイヤーでもあった「れそ」氏が「Magical Stone」を開発しようと思い立ち、どのような経緯でここまで来たのか。同作が発表された、「『ぷよぷよ通』統一王座戦」のアーカイブ映像より、れそ氏の発表全文を書き起こしました。




れそ氏の発表全文

 統一王座戦をご観覧の皆さまこんばんは。「ぷよぷよ」では“れそ”というハンドルネームで活動しております、上西恒輔と申します。

 先ほどPVによる発表にもありましたように、このたびPC上で動く、「ぷよぷよ」のプロスポーツ化を目指した「Magical Stone」のβ版をリリースさせていただきました。

 そこで本日は、そのご紹介と合わせまして、我々がなぜこの「Magical Stone」の開発を開始したのか、その経緯をご説明させていただきたく存じます。少し長話になってしまいますが、最後までお聞きいただけますと幸いです。


 今からおよそ4年ほど前、くまちょむさんを代表とし、有志の手によって日本ぷよ連盟が発足いたしました。その活動目的には次のようなものがありました。

  • 1.ぷよぷよの競技性の確立
  • 2.ぷよらーの社会的地位の向上

 当時これを目にし、心を打たれた私が、selvaと一緒にALFさんに提案をし、企画・実行したのが「第1回ぷよぷよ通A級リーグ」になります。

 リーグ戦自体は非常に充実したものとなりましたが、私の心には、本当にこれだけでぷよぷよの競技性が確立されるのだろうか、ぷよらーの社会的地位の向上を果たせるのだろうかといった疑問が残る結果となりました。


 それから2年後、今から約1年半ほど前、私は海外のeスポーツ文化を知りました。海外ではゲームがゲームで終わらずに、プロスポーツ化しており、1年間の間に、もっとも多いタイトルで、22億円を超える賞金総額が出ておりました。

 当然疑問が浮かびます。一体どこから、どうやってそれだけの賞金が出ているのかです。答えはシンプルでした。これらのゲームはソフトを1本5000円や6000円で、売り切りで販売するのではなく、基本的に無料で誰もが遊ぶことができ、ダウンロードコンテンツなどの販売を収益源とすることで継続的な収益を出し続けることができる仕組みとなっておりました。そしてその収益の一部を毎年の賞金付き大会の原資に充てたり、コミュニティの支援などに充てていました。

 これを知った時、ぷよぷよもPC上で、誰でも無料で遊ぶことができて、継続的に収益を出し続けることができる仕組みを作れたのならば、同じシステムでプロスポーツ化が実現できるのではないか、そう感じました。


 時を同じくして、カンブリア宮殿という番組で、卓球の用品メーカーのバタフライ社の社長が登壇されていました。

 その会社は創業者である社長も含め、社員もほとんど全員が卓球の元国体選手やオリンピック選手といった、卓球を会社社内でこよなく愛している会社です。そこで社長がこうおっしゃられていました。

 「私どもは毎年、利益の中から約3億円を、卓球を愛する方々への恩返しとして使っています。例えば社員が元選手なので、学生を対象にインストラクターとして派遣したり、合宿を行いたくても行えない学校に施設として貸し出したりなどです。たまに勘違いをしているメーカー様をお見かけしますが、私たちメーカーがあるからの顧客、コミュニティではないんです。お客さま、コミュニティがあっての私たちメーカーなんですね。たまに株主の方々から無駄遣いをするなと叱られることもございますが、私はこれを無駄遣いだと思ったことはただの一度もありません」

 ――心が震えました。同時に悔しさがこみ上げました。どうしてぷよぷよはこうならない、なれないんだろうと。


 また、同じタイミングで「ガンダムぷよ」という存在を知りました。

 「ガンダムぷよ」は昔、バンダイナムコから出されたぷよぷよのシリーズ作品になります。ぷよの代わりにガンダムに登場します、色違いのハロが落ちてくるというものでした。

 そのとき私は「ガンダムぷよ」と同じ要領で、PC上で動き、基本無料でプレイすることができる、そしてメーカーがこのeスポーツの、もっと言えば感謝のビジョンを忘れない、そんな「ぷよぷよ」を、セガがリスクを取れないのであれば、僕たちコミュニティの人間でリスクをとって開発をさせてもらおう、そう決意しました。


 そしてもう1つ、やるからには改善したい課題がありました。

 それは仕様が毎回微妙に違う問題です。現在まで「ぷよぷよ」シリーズは「ぷよぷよ通」をはじめ、「15周年」「ぷよぷよ7」「ぷよぷよクラシック」「ぷよぷよ20周年」「ぷよぷよテトリス」とたくさんのバージョンが公式から出ております。

 確かに同じ色が4つ以上くっついたら消えて連鎖になる、という意味では「ぷよぷよ」なのは間違いないのですが、連鎖が消えるスピードや、ツモを落とせるスピードなどが毎回微妙に違っていて、今までのバージョンだったら、このタイミングでの2連鎖ダブルが有効だったのに、今回のバージョンだと有効打にならない、といったようなことが頻出しました。

 これはテニスで言い換えれば、大会ごとにネットの高さや、コートのアウト・セーフラインが違うようなもので、決められたルールの中で技術を競い争うから競技なのに、ルールが決まっていないのでは、何を元に競い争えばいいのか分からない。では一度、このプラットフォームを統一しよう、そして競技性の再確立を行おうと。

 ではどのバージョンが今もっとも競技性が高いという評価がつけられているのか? AC「ぷよぷよ通」だ。じゃあ「ぷよぷよ通」に準拠したPC版を開発しよう――。


 そして去年の2月の頭、私はセガに法人窓口を介して連絡をいたしました。

 そのとき対応してくださったのが、「ぷよぷよ」はもちろん、「龍が如く」や「ソニック」などのゲームのドロップアウトの責任者の方でした。

 その場で私は簡単に自己紹介をさせていただき、「ぷよぷよ」の開発を「ガンダムぷよ」と同じ要領で、オフィシャルにやらせてほしい旨、現状「ぷよぷよ」コミュニティが抱えている複数の課題点、問題点、単純にこのすばらしい競技性を持つゲームでなんとかしてプロスポーツ化を目指したい――その旨、それらを解決し、実現するために必要な具体的な計画案などを説明し、ライセンスの貸出でも、ジョイントベンチャーの設立でも、どんな形態でも構わないのでぜひ僕たちにやらせてくださいとお願いをしました。

 しかしながら、答えはNG。理由は至極単純で、「御社は東証一部のゲーム制作会社ではないですよね、万が一にも我々が築きあげてきた、この『ぷよぷよ』のブランドに傷がつくことは許されないんです」といったものでした。


 これまで僕たちが遊ぶ環境をご用意くださったこと、コンパイルさんセガさんには本当に感謝してもしきれません。しかしながら僕は、一緒に「ぷよぷよ」を遊んでくれる仲間や、一緒に「ぷよぷよ」を遊ぶコミュニティにも感謝をしています。

 セガさんにとっては取るに足らない一部のコアユーザーかもしれません。ですが私にはこれが全てなんです。もしどちらかにしか恩返しができないのであれば、私は後者を、コミュニティの方を選びます。具体的には先ほどご提案させていただいた内容で、私達の方でPC版の開発をさせていただきたいと思います――。

 すると責任者の方がこうおっしゃられました。

 「まあそれは法のもとに許されている範囲でどうぞご自由にやられてみてください。知っているとは思いますが、ゲームの対戦ルールに著作権はありません。ストーリーやキャラクター、商標などを侵さない範囲でどうぞやられてください。ただし御社のその『ぷよぷよ』は成功しないと思いますよ。なぜならば、我々セガはキャラクターを通じて『ぷよぷよ』シリーズをブランド化しているからであり、競技性にばかり注目しているあなたたちにはそれはできないでしょう」と。

 ではもし万が一に、もし万が一にですよ、私たちのPC版が大成功し、ゲームのプロスポーツ化が実現できたとしても、そのときは御社のキャラクターブランド、これを覆すだけの競技性という部分での我々の経営努力があったことをお認めいただいたうえで、民事裁判も刑事裁判も一切起こされないということでよろしいでしょうか。

 「まあそれはそのときは仕方ないでしょう。ただ、もしそんなことが実現できたのであれば、それはさぞかしすばらしいぷよぷよなのでしょうから、その時は逆に、私たちのほうからキャラクターの統合であったりといった、業務提携をご提案させていただくかもしれません」。

 こうして話し合いは終了しました。


 私は悩みました。このプロジェクトはやるからにはプロスポーツ化を実現するために絶対必要な継続的な収益基盤を達成しなければなりませんが、それ以前にみんなに、ぷよらーにこの企画を喜んでもらえなければ、この企画は誰のためでもなくなってしまいます。しかしオフィシャルを得ることが私はできませんでした。

 これを同い年の、共同創業者である、ネットぷよ出身のぷよらーに相談をすると、こう言われました。

 「本当にそう言われたんですね。れそさんのグランドデザインはあくまでもオフィシャルにだったと思いますが、それは僕のグランドデザインです。いいじゃないですか、やってやりましょうよ。ライセンス使用料、払わなくていいんですよね。その分ありったけの予算を全部突っ込んで、最高のゲームを作ってセガにコミュニティの底力を見せてやりましょうよ」。

 ――その通りだと心から思いました。

 そしてコミュニティをけん引する、S級、A級プロや、スタープレイヤーと直接会って、こういうことをやりたい、でもすごく悩んでる、どう思う? という相談を20〜30人くらいにしました。もこうさんとお会いさせていただいたのもこの時です。

 すると1人欠けることなく、全員が「ぜひやってください、応援してます。自分にできることがあれば何でも言ってください」そう言ってくださいました。中には「そういうことであれば、おれもその夢に賭けたい。れそくんの会社で働かせてもらえないか」と言ってくれる人さえもいました。

 こうして去年の3月より企画、開発を開始したのがこのMagical Stoneプロジェクトになります。


 この作品の特徴は大きく2つあります。

 1つは操作性。「ぷよ通」に準拠してはいるのですが、さまざまな、全てのぷよらーの方にも楽しんでもらうべく、8方向操作に対応しております。なのでぜひこれを機に、いままでハードが違うとかといった理由で対戦をすることがなかったぷよらー同士での交流や対戦も深めていただければなと思います。

 そしてもう1つはプロスポーツ化。今はまだβテスト版なのですべての機能、コンテンツを無料でお使いいただける状態ですが、製品版と同時に一部のコンテンツを有料化いたします。

 その際に生じる売上のなかから、先ほどのPVにもありましたように、20%を賞金付きの大会の原資として積み立てていきます。そしてその様子は、ゲームのランチャーのトップ画面で、常にリアルタイムで公開し続ける予定です。イメージとしては「現在の世界大会賞金総額何百万円」といった具合で、ランチャーのトップに公開され続ける形になります。


 また、このプロジェクトには競技人口を増やすことも当然目的に含まれます。それには私はスマートフォン版の開発が必要不可欠だと考えています。

 しかしながら、スマートフォンで「ぷよぷよ」の激しい操作性の実現はまだできそうにありません。従って、ターン制という形で携帯版の開発を現在進めております。予定では6月の中旬ごろに形にできる計画になっています。なにをもってターン制とするのか、この場では長くなるので割愛させていただきますが、また別の形でお知らせさせていただきたいと思います。


 大変長くなりましたが、これをもって発表あいさつを終えさせていただきたいと思います。

 まだまだβ版ということで、観戦、リプレイの機能がなかったり、その他、細かい点で多くのご迷惑、ご不便をおかけしますが、ぷよぷよのプロスポーツ化を実現するために、開発メンバー一同、誠意を持って開発を続けてまいりますので、なにとぞ温かい目で見守ってあげてください。

 それでは失礼いたします。ご清聴ありがとうございました。配信もこれで閉じさせていただきます。



Magic Stone書き起こし 「Magical Stone」ゲーム画面

「Magical Stone」PV


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