横浜国立大学の研究グループが、マウスを使って毛を作る器官「毛包」を大量に作製する実験に成功しました。今後は、今回の実験を応用して人の毛髪を再生する治療を目指して研究を進めるとのことで、注目が集まっています。
「毛包」とは、皮膚に付属した毛を生産する器官で、いわゆる毛穴(けあな)は皮膚表面に見える「毛包」であると言われています。
今回の実験成功について、実験を行った横浜国立大学の福田淳二准教授にお話をうかがいました。
横浜国立大学 福田准教授にインタビュー
――毛を作り出す器官「毛包」を作り出すのに成功したというのは事実でしょうか。
福田准教授 事実です。しかし毛髪再生医療の分野では、このこと自体は新しいことではありません。今回は、毛包原基(毛包の種のようなもの)を大量に作製できた点が新しいところです。
――そうなのですね。なぜ「毛包」という器官に目をつけて研究を進められたのですか。
福田准教授 毛包は体内の他の組織と比べると、早いサイクルで消失と再生を繰り返しています。これは、毛包組織に存在する幹細胞の存在によって実現されています。つまりこの幹細胞を利用すれば、生体外で「毛包原基」(毛包の種のようなもの)を大量に作れるのではないのか、また毛包原基を移植することで毛髪が再生できるのではないかと考えたからです。
――具体的にはどのような手順で実験を行ったのですか。
福田准教授 実験には特殊な材料で作製した培養器を使用します。この培養器を用いて2種類の細胞群から「毛包原基」を作製します。これをヌードマウス(毛のない免疫不全マウス)に移植したところ、毛を生やすことに成功しました。
――実験はいつころから開始されたのでしょうか。
福田准教授 2年ほど前から開始しました。マウスへの移植実験と言う意味では、5回以上実施しています。
――実験成功を踏まえ、人の薄毛治療に応用する場合の課題を教えてください。
福田准教授 ヒト細胞で毛包原基を大量に作製できた場合に、どのような方法で広範囲に移植するのかという部分が1つの技術的なポイントになってきます。例えば、ハンコ注射のような剣山型の移植器具や田植機のようなイメージのプリンタを使用するのかなどが課題になります。
――福田准教授、この度はお忙しい中ありがとうございました。
福田准教授は10年後をめどに、この技術を治療に生かしたい考えであるとのことで、薄毛治療が革新的に進むかもしれません。
(Kikka)
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