複雑な切れ込みが入った木材と木材が、パズルのようにピタッとははまり合う。建築における伝統工法「木組み」を、GIFアニメで分かりやすく紹介していくTwitterアカウント・The Joinery(@TheJoinery_jp)が海外で注目を集めています。
木組みとは 釘や金物、接着剤を使わずに木材をはめ込むだけで高い強度を保つ継手の一種。日本では法隆寺など7世紀には用いられていた技術で、組み合わせ方は200種類ほど存在するそうです。
切れ込みの形を見ただけでは組み合わせ方が分からない複雑な木組みも多いのですが、The Joineryでは木材をはめ込む過程を3Dアニメで描いているので、いずれも仕組みが明快。今年2月から定期的にGIFアニメを投稿し、「四方蟻継ぎ」「天秤組み継ぎ」といった簡易的なものや、特殊な工程を要する「三方組仕口」「四枚鎌継ぎ」など、すでに木組みを70種類ほどを紹介しています。
10月に入って海外の大手ITニュースサイト・The Next Webが、「日本古来の木組み芸術を呼び戻すTwitterアカウント」としてThe Joineryを紹介。「仕組みを眺めているのがたまらなく好き」「1つ作ってみたくなる」と話題になりました。一見ごちゃごちゃした形同士がキレイな外面を為していく様子は見ているだけでも気持ちいいもの。これが力学的に理にかなった構造になっていることを思うと、昔の人々の創意工夫にうならされます。
「静止画では木がどのようにはまっていくのか分かりにくかったので、3Dアニメにすれば理解しやすくなると思いました」と、The Joineryを運営している植山良さん。普段はメーカー企業で企画を担当しています。
興味をもったのは、書店で木組みの関連書籍を偶然見つけたのがきっかけ。「釘や接着剤を使わずに、ただはめ込むだけで高い強度を保てることに感動しました。以来、世界中から木組みに関する書籍を集めては研究していますが、全種類を網羅する本には出会えません。これほど素晴らしい技術なのにまとめられていないのはもったいない、ということで自分で3Dアニメを作ろうと決心しました」。
そのためにもまず2013年から独学で3DCGを習得し始め、翌年には木組みの3Dアニメ制作に着手。「最初は1個作るのに何十時間も掛かっていましたが、最近では早く作れるようになりました。今では失われつつある日本の伝統技術を網羅した『木組み大全』を作ることが目標です」と意気込みを見せます。木組みへの情熱がハンパない。
海外で注目されたことについては「海外の方々に木組みに興味を持っていただきとてもうれしいです。海外にも木組みを取り上げた書籍があったりと熱狂的なファンはいるようなので、マニアにはウケるかなと思っていましたが、これほどまで注目されるとは思っていませんでした」と驚きます。
「最近では3Dプリンタやレーザーカッターなどを使えば、複雑な形状も簡単に作れるようになりました。デジタルファブリケーションの普及により、素材そのものだけで組み立てるという木組みの技術が、これから再認識されるのではないかと思っています。私が作った木組み3DCGをきっかけに、木組みを活用してもらったり進化させてもらえれば」。The Joineryそのものが古来の伝統技術の“継手”となることに期待大です。
(黒木貴啓)
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