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余命短い弟に『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』をプレイさせてあげたい。そう願う兄をコミュニティが支え任天堂を動かす

ネットへの投稿が注目を集め、兄の願いがかなうことに。

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Image Credit: Gabe & his family

 コミュニティサイトRedditのユーザーjaimage氏にはGabeという名の3歳年下の弟がいた。彼は生まれつき心臓の心室が片方しかない単心室症と、心室・心房間を隔てる組織の障害による完全型房室中隔欠損症という二つの先天性心疾患を患っており、医者からは15歳までしか生きられないだろうと伝えられた。彼の病状では心臓移植を受けることができず、治療する術がなかったのだ。

 Gabeは心臓への負担が大きいので外で走り回って遊ぶことができなかった。そのため子供の頃の兄弟はテレビゲームなどを一緒に楽しんでいたそうだ。マリオをステージごとに交代してプレイしたりポケモンで対戦したり、あるいは『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の攻略を一緒に考えたり。ゲームは彼の障害とは関係なくさまざまな体験を与えてくれ、彼の人生においてとても前向きな力になる。

 任天堂の大ファンだったGabeは『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の発売を楽しみにしていたという。しかし彼の心臓はもう体の負荷に耐えきれなくなってきており、その発売日を迎えられる可能性は極めて低かった。彼が生きているうちに同作をプレイさせてあげるチャンスをもらえないだろうか。そう考えた家族は任天堂に二度コンタクトを試みたが返信はなかったという。そこでjaimage氏は昨年10月、なんとか任天堂につながる方法はないかと情報を求めるために、このいきさつをRedditに投稿することにした。

 そのRedditへの投稿は大きな注目を集め、多くのコメントとUpvote(高評価・支持)が寄せられる。管理者も投稿に「Mod Pick」とタグ付けをしてユーザーに閲覧を促した。そして投稿からわずか数時間後、jaimage氏は任天堂から直接連絡を受けたという。それは彼らが望んでいた『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』を発売前にプレイする機会の申し出だった。彼はさっそく弟にこの投稿のことや任天堂からの連絡について伝えたそうだ。

 それから数週間後、Gabeの任天堂への訪問がついに実現した。歓迎を受けた彼は社内ツアーやスタッフとの昼食を楽しみ、さまざまなグッズをプレゼントしてもらう。そして初期ビルドだが、念願の『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』をプレイさせてもらったという。jaimage氏は都合で同行できなかったそうだが、母親とともに訪問を楽しむGabeの姿を収めた写真を公開している。jaimage氏はその報告をRedditに投稿し、弟を温かく迎えてくれた任天堂スタッフに感謝の言葉を述べている。

 当初15歳までの命と宣告されたGabeは27歳の誕生日を迎えることができた。そして今年1月14日、安らかに息を引き取ったという。弟はただ行方をくらましただけで、いつか朝起きるとひょっこり現れて新作ゲームのことでも話してくれるのではないか、まだそんな気持ちでいるとjaimage氏は語る。そして弟が任天堂社内でゼルダをプレイしている写真を眺めては、まったく別の世界を体験できるというゲームが持つ魔法が、弟にたくさんの楽しみを与えてくれたことを実感する日々だそうだ。

 コミュニティの力が大きな企業を動かした例はこれまでにもあり、今回の件もそのひとつとして語り継がれることだろう。jaimage氏はサポートしてくれたRedditコミュニティに感謝を述べたあと、「Gabeはこの地球から旅立ってしまったかもしれないけど、彼はこのことを決して忘れないでしょう」と記し、投稿を締めくくった。

Image Credit: Gabe & his family

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