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「いじめを認めると校長の退職金は5000万から2000万に減額?」 ウワサの真相を元教師と都育庁に聞いた

横浜市のいじめ問題をきっかけに「なぜいじめを認定できないのか」と物議をかもしています。

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 「いじめの問題を認めてしまうと校長は5000万もらえる退職金が2000万に減ってしまう」――こうしたウワサがTwitterで広まっています。そんな事実はあるのか、定年退職した元教師と東京都教育庁を取材しました。


退職金

 福島第一原発事故で横浜市に自主避難した児童が150万円余りを同級生らに支払わされていた問題について、横浜市教育委員会の岡田優子教育長が「いじめという結論を導くのは疑問がある」と1月20日に発言。批判を受けて、岡田教育長は23日に釈明しましたが、なぜいじめ問題を学校側が認定できないのか、「おごってもらった」といえばいじめにはならないのか、などと炎上が続いています。

 そんななか、注目を集めたのは校長の退職金に関するツイート。市の教育相談を受けた際、「いじめ問題を認めると、校長は退職金を半分以下に減額されてしまう」と校長職を退職した元教諭から聞いたというものでした。ツイートは大きな注目を集め、投稿2日で2万1000件以上リツイートされたほか、多くのリプライが寄せられています。

 定年退職した元教諭が語るいじめ調査の背景

 ツイートの内容について、数年前に定年退職した非管理職の元教諭に話を聞きました。

――Twitterで「いじめを認めると校長の退職金が大幅減額されるらしい」と話題になっていますが、そうした話を聞いたことはありますか

元教諭:いじめを認定したからといって、校長先生の退職金が減額されるというのは聞いたことがありませんね。ただ、校長という立場は「責任」を求められるポストですので、処分されたり、早期退職などを求められた際などは、結果的に定年まで勤めればもらえたはずの退職金を満額もらえないということはありえるかもしれません。

――早期退職を求められる場合というのは

元教諭:これはあくまで仮定ですが、例えば「いじめの事実を隠蔽していた」「対応が非常にまずかった」などという場合は責任を問われる可能性があると思います。

――なるほど。校長先生の退職金が5000万円という話は聞いたことがありますか

元教諭:直接的にお聞きしたことがないので分かりませんが、一般職の教員、つまり私の場合は定年での退職金が2300万円でした。余談ですが、ここ数年私が教べんを取っていた地方では退職金の金額が下がっていて、早期退職すれば退職金を増やすという提案も受けました。

――昨今のいじめ問題についてはどう感じておられますか

元教諭:私のいた地方だけでの話かもしれませんが、基本的に学校側は「いじめは存在する」という前提で問題に臨むケースが多かったです。今のご時世、いじめがないなんて考えられない、というか言い切れないというか。

――例えばいじめが発生した場合はどうするのでしょうか

元教諭:まずは学校内で調査が行われることになります。今回の横浜市の問題に関してもそうだと思いますが、この調査の時に「客観的に事実を見られる生徒」を教師が見極められるか、というのがまず第一です。次にその生徒がどれぐらい正直に話してくれるか、これにかかっています。

――「客観的に事実を見られる生徒」とは、どういうことなのでしょうか

元教諭:教師もクラス内で起こっていること、全てを把握しきれているわけではありません。ですから「客観的に事実を見られる生徒」に対して聞き取りをする必要があります。しかし、ここで教師にとって都合のいいことをいう生徒の話を重要視すれば、当然「いじめはなかった」「悪ふざけだった」という話になっていく可能性はあると思います。

――いじめられたとする生徒の話は重要視されないのでしょうか

元教諭:もちろん聞き取りに関しては十分にやると思いますが、そのお話が100%事実として発表されるというわけではありません。「いじっていた」「いじられていた」という学校発表もよく耳にする表現の1つですが、それをいじめられたとする生徒が話したのか、教師が「いじめたとされる子は君のことをいじったといっているけれども、どう?」と聞いたのかでは全然違うと私は思います。また聞き取りの結果、教師が把握している内容といじめられたとする生徒の主張内容が食い違った場合に、教師側の情報を発表するというケースも存在します。

――なぜいじめを認定する学校が少ないのでしょうか

元教諭:いじめが発生したと疑われる場合には、学校は教育委員会などに報告しなくてはなりません。ただこの「報告」の手間が大変だからと、「いじめはなかった」とするケースも少なくないのでは、というのが私個人の意見です。またいじめに関しては、市や県単位で統計を取るというのがスタンダードになりつつあるのですが、その統計結果に配慮して、いじめの件数をあげたくないという気持ちが(学校・教委ともに)あるのではと感じていました。

――いじめ問題に対して、教師はどう対応していけばいいのでしょうか

元教諭:子どもさんに関しては、「顔で笑って、心で泣いて」という表現がよく使われます。教師がその子の心情に寄り添って話を聞いてあげられるかどうか、まずはそこが一番重要だと思います。


 取材に協力してくれた元教諭によると、いじめ問題に関する認識や差別問題、学力問題に関する対応が県単位で異なることも珍しくないとのことでした。

教師の退職金が減ることはある?

 では、なぜ退職金が減額されるというウワサが広まるに至ったのでしょうか。東京都教育庁・退職手当担当者に、教師の退職金のシステムについてお話を伺いました。


退職金 東京都教育庁(公式サイトより)

――教師が退職金についてはどのようにして決められるのでしょうか

東京都:東京都の場合は「職員の退職手当に関する条例」に基づいて計算されます。

――退職金が減額される場合に、いじめを認定したからというものはありますか

東京都:条例をご覧いただければ分かると思いますが、そうしたものはありません。


退職金 職員の退職手当に関する条例(東京都)

――退職金の減額が発生しうる状況としては、どういうものが考えられますか

東京都:条例には懲戒免職などを受けた際には、「一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分を行うことができる」と書かれています。


退職金 条例の懲戒免職を受けた際の退職金についての項目(東京都)


 「いじめを認定すると退職金が減額される」というウワサについては、やや大げさな表現という印象を受けましたが、いじめ問題をきっかけとして何らかの処分に発展したり、退職につながることがあれば、退職金が減額されるという可能性があるということが分かりました。

 このようなウワサが流布するきっかけとなったのは、学校をはじめとする教育機関や教育委員会への不信感が要因とも考えられます。一方で、教育だけでなく、部活動なども含めて教師への負担が増加しているといわれる昨今。教師側の負担を考えると、声高に「生徒への十分な対応ができているのか」とは言いづらい面もあります。いじめ撲滅はもちろんのこと、生徒、教師ともに負担なく学校生活を送ることができるようなシステム作りが早急に望まれます。

(Kikka)

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