共同通信が2月1日、早稲田大学ジャーナリズム研究所の運営する調査報道メディア「ワセダクロニクル」に対して抗議文を送付していたことが明らかになりました。これは、ワセダクロニクルが2月1日に掲載した共同通信の配信記事に関する特集記事に、「重大な事実誤認を含まれている」ためとしています。
特集記事は、過去に共同通信が配信していた脳梗塞予防薬(抗凝固薬)の記事について、電通PRから報奨が支払われていた――と告発する内容。報酬を受け取った証拠として、ワセダクロニクルは独自に入手した電通PRの内部資料を公開。また関係者にも取材し、電通PRから株式会社共同通信社(報道機関である一般社団法人共同通信社の子会社)に当時、「抗凝固薬広報支援」「媒体費」という名目で55万円が支払われていたことを明らかにしていました。
通常、新聞などにニュースを配信しているのは「社団法人共同通信社」であり、企業の広報支援などを主な事業とする「株式会社共同通信社」は厳密には別会社です。しかし、両社の間には密接な関係があるとし、掲載された記事は「カネで買われたものだった」というのがワセダクロニクル側の主張でした。また記事では「医薬品の記事の見返りにカネが支払われるという関係は、電通側と共同通信側の間で少なくとも2005年から続いていた」とも指摘していました。
こうした記事内容を受けて、共同通信はワセダクロニクルに対し「重大な事実誤認」があるとして抗議文を送付。抗議文自体は非公開ですが、共同通信に問い合わせたところ、主に以下のような内容を送付したそうです。
一般社団法人共同通信社のコメント
- 指摘された記事は社団共同編集局が「報ずるに値する」と判断し執筆して配信した
- 社団および執筆記者は対価を受け取っていない
株式会社共同通信社のコメント
- 株式会社共同通信ではプレスリリースなどの各種広報情報を報道機関に紹介するPR活動も行っている
- 広報資料を社団共同に紹介し、事業の正当な対価として報酬を受け取った
要約すると当時、電通PRから株式会社共同通信社に報酬が支払われていたことについては認めつつも、あくまでそれは「広報資料を社団法人共同通信に紹介した」ことに対する対価であり、社団法人共同通信社は記事化にあたり一切対価を受け取っていない、というのが共同通信側の主張です。
あらためて株式会社共同通信社にも確認しましたが、報奨はあくまで「広報資料を社団法人共同通信社に紹介した」という部分に対して支払われたものと説明。実際に記事化するかどうかはあくまで社団法人共同通信社側の判断に委ねられており、資料を持ち込んでも選別の結果によっては掲載されないこともよくあるとのことでした。ただ、55万円という高額な報酬の内訳については分からないそうです。
またこの件についてワセダクロニクル側にも取材を試みましたが、電話がつながりませんでした。
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