渋谷区の太田記念美術館にて、動物をテーマにした浮世絵の企画展「浮世絵動物園」が開催されます。会期は前期が4月1日から4月26日、後期が5月2日から5月28日までです。
浮世絵に描かれる動物といえば、真っ先に猫を思い出す人が多いのではないでしょうか。今回の展示では蝶を見上げる猫の目線が可愛らしい鈴木春信の「猫に蝶」や、猫と戯れる江戸美人が華やかな月岡芳年の「風俗三十二相 うるささう 寛政年間処女之風俗」など、巨匠が描いた個性的な猫の絵が多数出品されます。歌川広重「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」は、窓の外をじっとみつめるにゃんこの哀愁漂う背中がたまらない1枚です。今も昔も変わらない猫の魅力にノックダウンされてしまいそう。
さらに今回の展示は、擬人化された動物たちの絵がまとめて見られるチャンスでもあります。いつの世も動物擬人化モチーフは大人気ですが、江戸時代には人間そっくりに着物を着たスズメたちが美女(美スズメ?)に見とれる歌川国芳「里すゞめねぐらの仮宿」などのユニークな作品が描かれました。他にもタコや猫など、おなじみの動物たちを人になぞらえて描いた不思議な作品が多数出品される予定です。
おなじみの生き物以外にも、珍獣や架空の生き物を描いた浮世絵を見ることができます。緻密に描かれたサンショウウオ、女性の着物前面に描かれたコウモリなど、思わず二度見してしまう題材のものも。中でも、太田記念美術館のツイッターアイコンにもなっている石に虎の手足としっぽが生えた生き物「虎子石」は見逃し厳禁です!
そして今回の見どころの1つが「象」の絵です。文久2年(1862)に横浜にもたらされた象をモデルに描かれた歌川芳豊「中天竺馬爾加国出生新渡舶来大象之図」は、江戸っ子が象を福を呼ぶ霊獣と考えていたことを示しています。河鍋曉斎が描いた生き生きと曲芸をする象の絵と合わせて鑑賞すれば、当時の人たちが象に寄せていた関心の大きさが実感できそうです。
今回の企画は2010年に行われた同名の展覧会のパワーアップ版で、前回の2倍となる160点もの作品が展示されます。さらに前期と後期で展示内容が変わるので、何度も足を運びたくなってしまいそうですね。この春は美術館でじっくりと動物たちを観察してみてはいかがでしょうか?
(正しい倫理子)
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