『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下、ブレス オブ ザ ワイルド)は今月3日より任天堂からWii U/Nintendo Switch向けに発売されているシリーズ最新作。近年据置コンソールでリリースされる『ゼルダの伝説』作品はボリュームがあり、エンディングを見るまでの時間も長い。『トワイライトプリンセス』におけるany%(アイテムの取得率などを問わない純粋にタイムのみを競うルール)でのクリア世界記録は約3時間、『スカイウォードソード』の世界記録は約5時間となっている。一方で、『ブレス オブ ザ ワイルド』は発売してからまだ1週間しか経過していないが、すでに1時間に迫る記録を出す猛者が現れている。短時間でのクリアも可能ということで、近年の『ゼルダの伝説』作品のなかではスピードクリア(RTA)に適したタイトルだといえる。
短時間でクリアできるのは、決してコンテンツが不足しているからではなく、オープンワールドを採用しており、従来の作品で存在していた「通るべきレール」が撤廃されているからだろう。最初にいくつかのチュートリアルをこなし、特定のアイテムを入手した後は完全に自由の身となる。おそらく多くのプレイヤーはメインチャレンジと呼ばれる本筋を追っていくだろう。街道をたどりながら、さまざまな出会いと戦いを重ねて、凶悪な敵に対抗できる力を蓄えていく。しかし知識とテクニックさえあれば、さっさとラスボスまでたどり着きエンディングを迎えることも可能。ゲーム開始地点とラストダンジョンの位置はほどよく近く、序盤から来るように誘う意図すらも感じる。『ブレス オブ ザ ワイルド』は、早解きしてもいいし、終わりの見えない膨大なコンテンツを楽しんでもいい。両方の楽しみ方ができる自由度が高い作品だからこそ、短時間でクリアできるというわけだ。
服を着る時間も惜しい
実際に『ブレス オブ ザ ワイルド』のスピードランの映像を見ていると、必ずといっていいほど共通する部分がある。その共通点とは、プレイヤーが操作するリンクの外見は、上半身は裸、下半身はかろうじてズボンを履くという半裸状態なのだ。なぜ半裸なのかというと、本作のリンクは初期装備が半裸となっているからだ。チュートリアルを進めればすぐに衣服を入手できるので、露出願望がない限り着衣するプレイヤーが多いと思うが、服を着るにはメニュー画面を開いて装着しなければいけない。RTAの際には、服を着るための時間すら惜しいのだ。それゆえに、半裸のリンク達が猛然とラストダンジョンを目指すべくハイラルの地を駆けるという、シュールな光景が生まれている。
ほかにも、すでに『ブレス オブ ザ ワイルド』のスピードランを攻略するうえでのテクニックがすでにいくつも編み出されている。もっとも基本的なテクニックとなりつつあるのが「whistle sprint」。口笛を吹きながらダッシュをすることで、スタミナにあたる「がんばりゲージ」を消費しないままダッシュすることができるという一種のグリッチだ。実際に筆者も試してみたが、口笛を吹き続けていれば、いくらダッシュボタンを押しても息切れしない。こうした事情もあってか、猛者たちが操るリンクは半裸であるだけでなく、常に手を口元に当てているという特徴もある。
さらに今Twitterで注目を浴びているのが、スピードランを研究するVenick氏が投稿した、「ビタロック」を利用した高速移動の映像だ。
本作の基本アイテムの1つであるビタロックは、オブジェクトにむけて使用すると、対象のオブジェクトが一時的に停止する。停止している間にダメージを与えると蓄積し、一時停止が解除されると蓄積したダメージが解放され大きな力が働くという仕組みだ。投稿された映像では、岩にビタロックを使いハンマーで殴りつけ、岩に乗ることでフィールド上をダイナミックに移動するリンクの姿が映されている。ランダム性の高さからか、実際にスピードランに利用しているプレイヤーは確認できていないものの、なんらかの形でビタロックを使用するテクニックが生まれることは間違いないだろう。
『ゼルダの伝説』シリーズがスピードランタイトルとして人気であり、『ブレス オブ ザ ワイルド』はクリアまでの時間が短いという魅力を持つ。こうした要素に加えて、自由度が高いという特徴がある。ビタロックを代表とした物理演算要素に限らず、ラストダンジョンに潜入する方法もプレイヤーによってそれぞれで、開拓と研究の余地は多くあるだろう。そういった意味で『ブレス オブ ザ ワイルド』はスピードランにうってつけのタイトルともいえる。
Speedrun.comによると『ブレス オブ ザ ワイルド』の3月11日12時現在の最速クリア記録はTwitchで活動する配信者Orcastraw氏が保持する1時間11秒。毎日めまぐるしく最速記録は塗り替えられており、今この瞬間にも記録は破られているかもしれない。だが誰が一番早いかという結論を出すのは早急だろう。せっかちなスピードランナー達の挑戦は、まだ始まったばかりなのだ。
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まさかの1発撮り。