絵本「たべてあげる」がトラウマ級に怖いとTwitter騒然 作者「絵本が怖いというのはとても健全なこと」
好き嫌いのある男の子の前に、もう1人の小さな自分が現れて……。展開が怖すぎると話題に。
好き嫌いをテーマにした絵本「たべてあげる」(文:ふくべあきひろ、絵:おおのこうへい、教育画劇刊)が、子どもの頃に読んだらトラウマになるレベルで怖いとTwitterをざわつかせています。2011年発売の絵本ですが、この度あるTwitterユーザーが内容を紹介したところ、「確かに怖い」と共感をもって10万回以上リツイートされました。
「たべてあげる」のあらすじと反響
あらすじは次の通り。絵本のオチにも触れるので、読み進める際はネタバレにご注意を。
主人公の男の子・りょうたくんはピーマンが大嫌い。食卓で悩んでいたところ、ひょっこり“小さなりょうたくん”が現れて嫌いなものを何でも食べてくれるといいます。こっそり食べてもらいお母さんから褒められたりょうたくんは、次の日はにんじん、と嫌いなものは何でも小さな自分に食べてもらおうと調子に乗り始めます。
すると小さな自分は嫌いなもの以外も食べ始め、りょうたくんよりも体が大きくなってしまいます。この状況を嫌がっていると、「こんどはりょうたくんがいやなの?」と口を開いてりょうたくんをバクン。最終的に食卓にはもう1人の自分が座り、すり替わったことを知らないお母さんから何でも食べるのを褒められる、という結末を迎えます。そのあとちょっぴり本物のりょうたくんのその後も描かれるのでご覧あれ。
Twitterではこのあらすじを「え、怖...」と紹介したツイートが大きく拡散(ツイートはその後削除)。「さすがに怖すぎる…こんなん超トラウマ級だわ」「これは、流石にやばいやろ....背筋ゾクっとするレベルやで..」などその怖さに共感する声が相次ぎました。
「絵本って、『教育』って目的が大きいからね。こういう絵本って、いいと思う」「これ読み聞かせで読まれた。1人、本気で怯えた男の子が無言で席を立って無表情でお母さんにしがみついた姿が可愛かったです」と、教育的だと評価する意見も。一方で「こんな怖い絵本を幼児に見せていいのだろうか…」と心配する声もあがっています。
作者2人の「怖くした意図」
なぜこのような怖い話を作ったのでしょうか。文を担当したふくべあきひろさんは、「子どもには、怖いものが必要だと思っています。自分の理解を超えた、恐ろしい存在がいた方がまっすぐに育つのではないかと思っています」と説明します。
Twitterの反響について「正直、うれしいです。絵本は読まれてこそ、価値があるのでこれを機にもっと多くの方に読んで欲しいです」と喜びながらも、「ただ、これくらいの内容で怖いといわれている現状は、それはそれで、逆に怖いな、とも思います」とも。
「本来、日本の昔話にせよグリム童話にせよ、子ども向けの話というのは相当に怖いです。自分の理解を超えたものを信じさせます。実際の世の中は、そんなことばかりだからです。だからこそ、個人的には、絵本にはあまり大人の世界のコンプライアンス的配慮を持ち込まない方が良いのでは? と思います。なまはげ万歳です。親が怖い。先生が怖い。絵本が怖いというのは、とても健全なことな気がしますね」(ふくべさん)
また同作は、小さなりょうたくんの目に光が無いなど、不気味なタッチもラストの怖さを演出しています。絵を担当したおおのこうへいさんは、「子どもの頃に読んだ、せなけいこ先生の『ねないこだれだ』のような大人になっても覚えてるような衝撃なラストを目指しました」と怖くした理由について。
「怖い絵本として話題になっているのは、狙った部分でもあるので正直うれしいです。絵的には、95%かわいく5%不気味を目指しました。後半にいくにつれて、まさかそんな怖かったなんて! と思ってもらえるような絵の構成にしています。でも後半の目に光が無いりょうたくんはやっぱり怖いですよね(笑)」とこだわった点を語ります。
「ただし怖いだけでなく、個人的には最後の絵でりょうたくんのたくましさを感じるようにしたつもりです(笑) この先のりょうたくんの逆襲を想像してもらえると、それはそれで違った面白さがあるのでは?」(おおのさん)
ちなみに、ふくべさんには「涼太」という息子さんがいるとのこと。あれ、この名前は……。
「そうです。絵本に出てくる『りょうた』君です。彼が生まれたとき、この絵本を作りました。いま5才です。しかも野菜が超嫌いです。彼が現在通っている幼稚園は、給食を残さず食べさせてくれる、まあまあスパルタな幼稚園です。そのため、5才児の彼は浅知恵をフル活用し、野菜を食べないように日々画策しています。机と机の溝に、細長くして埋める。水筒のお茶を飲むふりをして、水筒の中に吐く。などなど、悪行の限りを尽くしています。主人公を『りょうた』にしたばかりに……やはり言霊というのはあるのでしょうか?」(ふくべさん)
絵本にまつわるユニークな後日談も語ってくれたふくべさん。「そろそろ字も読めるようになってきたので、しっかり読ませて、怖がらせようと思っています」と、「たべてあげる」で息子さんを震えがらせる気満々のようです。
(黒木貴啓)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 親と赤ちゃんの関係はカップルに置き換えるとよく分かる? 育児の大変さを描いた漫画に共感の声
愛があっても、キツいものはキツい。 - 「てぶくろを買いに」も萌え萌えに “児童書にかわいすぎるイラスト”の理由を角川つばさ文庫に聞いた
表紙が萌えイラストだと話題になっている角川つばさ文庫の児童書。そこにはどんな狙いがあるのだろうか。 - 「残酷描写に対し様々な意見」 Webコミック「辱(にく)」が公開中止に
「エロ・グロ・ホラー等に耐性のない方は、これより先に進まずウィンドウを閉じて頂ければ幸いです」との注意書きつきで公開されていました。 - 「YouTuberの平均給料は747万円」 女性の職業をソシャゲ的なイラストで紹介する本にびっくり表記
まじかよ今すぐYouTuberになるしかねぇ。 - 遠藤雅伸に聞く:ゲームデザイナーとなるには、ゲームの面白さを知るには、どんな本を読めばいいのか?
ゲームデザイナー&研究者・遠藤雅伸インタビュー。 - 好きな文具を手描きで100ページ紹介 小6が自由研究で作った「文房具図鑑」、内容すごすぎて書籍化される
イラストと文章で文房具を1点1点紹介……商品として成立するのも納得の図鑑! - ミスフル作者が「いじめなどで『死にたい』と思ったときに読んでもらう漫画」を制作 現在5歳の娘が将来悩んだときのため
相談できない悩みを抱えている場合にも、親としてのメッセージを伝えられるように。 - 寝る前に読むと胃もたれしそう なぜか揚げ物たちが野球に励むシュールな絵本が話題に
斬新な飯テロ。 - キンコン西野、3カ月前に発売したばかりの絵本「えんとつ町のプペル」を無料公開して賛否両論
西野さんの行動力に感心する人もいれば、ほかのクリエイターに迷惑がかかるのではという否定的な意見も。 - おしえておじいさん:萌えた萌えた、ハイジが萌えた
角川つばさ文庫のハイジが、クララが、現代風でとってもかわいい。 - 認知症になった母親と家族を救った子猫の漫画が話題に 「涙が止まらない」「心に響きました」の声
だれにでも起こりうる変化と悩みが描かれています。 - 変質者「BLとかってお好きですか?」 注意喚起漫画「オタクを狙ったナンパに遭遇しました。」が話題に
これは怖い!