アニメ「エロマンガ先生」は、中高生の作家がめっちゃヒットしているので、なんかこう、おじけづいてしまいます。すごいよね。
中でも「強い」と思ったのは、キュートでゴージャスでデリシャスな金髪系美少女ラノベ作家・山田エルフ先生です。
縦ロールで攻め攻め気質。ツンデレからツンを抜いたのが山田エルフです。
山田エルフ語録
累計200万部、オリコン1位の山田エルフ大先生。分かりやすいえっちラノベ、というゴリゴリの娯楽特化型の作家で、作風はおバカでハイテンション。主人公の和泉正宗も、彼女の小説の大ファンでした。しかも料理がとてもうまい、百発百中の弓の使い手(?)という、大変チートな女の子。
その実は残念女子。高飛車にして高圧的、独特の理論で動く猪突猛進少女で、とにかくよくしゃべる。そしてセリフの中身がしばしばおかしい。原作もアニメも迷言名言の嵐なので、いくつかあげてみます。
「全裸こそが神が人に与えたもっとも自然な衣服、全裸こそが最上なのよ!」
ラブコメディーは「チラリズム」が命。彼女が書く小説はそんな回りくどいことはしない。全裸が命。開始早々ヒロインが全裸。そんな彼女は、お風呂上がりに全裸でピアノを弾くのが趣味です。腹冷やすぞ。
「私以外の全ラノベ作家は時代遅れのカスとなったわ。そして、今や私の書く読みやすくわかりやすい文章が、新しいライトノベルの世界を切り開いているの。つまり、私こそがラノベ業界の救世主、否、私がライトノベルよ!」
ラノベ作家のみなさんに謝れ。山田エルフ=ライトノベルなので、今後はライトノベルのことを山田エルフと呼んでもいいのでは。こういうビッグマウスをてらいもなく言えるのって、ちょっとまぶしい。
「男なんてエロの力の前には無力よ!」
これは純然たる事実だと思います。「いやいやストーリーが」といいたくなるけれども、エロが入るか入らないかで売れ方は格段に違う。とはいえ山田エルフ先生は男にだけラノベを売っているのかなあ? なお山田エルフ先生もエロマンガ先生も、えっちなもの大好きです(18禁世界は分からないようです)。
「私のような天才に締め切りなんて必要なのかしら。否、断じて否! 我が心は自由であってこそ、想像の翼を羽ばたかせる!」
正論の多い彼女ですが、単なる甘え発言まで強い。実際、怖いもの知らずの彼女も、締め切りには負けています。それでもギリギリ間に合わせるから天才なんだよなあ……。
「いい? マサムネ? 世界の真実を教えてあげる――巨乳とはデブよ!」(7巻より)
原作から1つ。世界中の巨乳の人に謝れ。こういうツッコミどころの多い、バッサリとした分かりやすさの文体で書かれたラノベなら、絶対面白いよ!
ツンデレじゃないんやで。でもデレデレじゃないんやで
冒頭に書いたように、「ツンデレからツンを抜いた」彼女。かといって「デレデレ」ではないのです。
基本的に彼女、好きなものは好きとガンガン言うスタイル。ここが彼女の「全裸好き」と通じるんだと思う。自分の心はさらけだす。小説も正宗も、好きだと思ったら「好き!」と言う。ちゃかしごまかしはしない。
「……ラノベと違って、現実世界だとツンデレは甘えだと思うのよね」(6巻より)
これまた名言。ツンデレになりかねない自分を制して、努力して真っすぐ生きているのが、山田エルフ先生です。
正宗に彼女がほれ込んでいく様子は必見(3話以降)。自分の作品を愛してくれているのを知ってから、彼を自然と好きになっていきます。この作品のキャラクターたちは、自分の作品は自分そのものに感じている部分がある。正宗の純粋な愛情に、心打たれるのは必然でしょう。
中学生パワー
正宗は高校生、山田エルフは中学生。この差は大きい(紗霧もムラマサ先輩も中学生)。
エルフは「わが能力“サモンダークネス”で、魔界から完成原稿を召喚した!」と、いわゆる中二病的な言動の多い子です。しかしそのエネルギーを現実のものとして生かしている場合、「中二病」という言葉は適切じゃない気がする。
バンド・マキシマム ザ ホルモンのマキシマム ザ 亮君が「中学パワー」という単語を使っていたことがあります。中学生時代は、独自の止めることのできない、爆発的な力がわきあがることがある、という意味。中学生の頃「今じゃ絶対できないなー」という行動を取った経験、誰しもあると思います。
山田エルフは、その中学パワーを自分で理解して、全て使っている。
「やる気ない時に面白く書いた文章より、やる気MAXファイヤーで書いた文章のほうが絶対に面白いに決まってるでしょ!」
「だったらやる気MAXファイヤーの時以外死んでも原稿なんか書くなよ!」
プロとしては間違いなんですが、この発言は痛いほど分かる。高校生の正宗は、職業作家としての意識が強くなっているので、このやる気MAXファイヤーができずにいた。それでボツをくらい続けた。しかしやる気MAXファイヤーな山田エルフに出会い、全てをなげうって一作品書いたことで、売り物にはならないけど最強の作品を書いて、山田エルフを負かしました。このへんが『エロマンガ先生』という作品が業界作品である以上に、青春物語である理由の1つ。
やる気MAXファイヤーで生きていけるだろうか? ぼくはあまりできていない。だから山田エルフという女の子の生き方に、ものすごく憧れる。真っすぐでいつも全力で、何もかもを楽しむことができる、ということこそが、天才たるゆえんだ。
「小説は趣味だもの。私は趣味でプロの作家をやっているの。もっとわかりやすく言うなら、遊びね。この世の何よりエキサイティングな、人生で一番ハマったゲーム」
こんなこと言ったら編集さんに怒られるけどね。でもそう言って、実際に成し遂げられるから、彼女はすごい。天才でもあるけど、売り上げるための戦いに全力を尽くせる努力家でもあります。
異常な懐の広さと幼さ
頭をなでなでしたくなる彼女。妹じゃないけど妹力がある彼女。実は懐が異常にでかい。紗霧は恋敵なんだけど、紗霧のことも大好きで仕方ないし、それを受け入れてる。
あまり詳しくは書きませんが、原作での彼女は正宗のためにとんでもない提案をし続けています。自分のあらゆるものを投げうてる、と言っても過言じゃないような発言。
6巻タイトルが「山田エルフちゃんと結婚すべき十の理由」というところから察していただきたい。
ていうか、何で山田エルフちゃんと結婚しないんですか。いや分かってるけどさ、すごい逸材だよ。正宗も嫌いじゃないでしょう? ぼくは好きだ。
ぶっちゃけ山田エルフはメインヒロインとして1本作品ができるほどの、高すぎるヒロイン力の持ち主。それを上回るスーパーヒロイン紗霧がいるから、絶対勝てないのは分かっているんだけど、『山田エルフ先生』とかの名前でスピンオフ作ったら、めちゃくちゃ面白い作品ができるはず。熱血、恋愛、根性、夢、えっちハプニング、全部持っている。なんてゴージャスなキャラなんだ。
彼女が幸せになるところを見たい……なんてこと言えません。だって、山田エルフ先生は今幸せなんだもの。ぜひこのまま爆進していただきたい。話がどう転んでも、彼女は絶対幸せなはずだ。
(たまごまご)
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