かつて日本で流行した「ビーズバッグ」が、今や希少な存在になっていると話題になっています。
発端となったのは、作家・加門七海(@kamonnanami)さんのツイート。「昭和に流行ったビーズバッグ。持っている人は捨てちゃダメだよ」「光り輝く日本のビーズはスワロスキーですら再現できない。なのに、作る人がもういない。凝った口金もご同様。最早消えるのみだから」とTwitterで呼びかけたところ、6万回以上リツイートされるなど大きな話題になりました。
加門さんによれば、需要の低下や職人の減少により、ビーズバッグが製品として流通に乗らなくなりつつあるとのこと。Twitterでは「知りませんでした」「こんなに美しいのに残念」と驚く人や、「大事に保管しています」と所有しているビーズバッグを公開する人も。オークションサイトなどでは現在まだ多数出品があるようですが、加門さんのツイートの通りであれば、いずれは出品すらされなくなってしまうかもしれません。
果たしてそれは事実なのでしょうか。国立民族学博物館にてビーズ細工などの研究を行い、特別展「ビーズ―つなぐ・かざる・みせる」にも携わっていた、池谷和信氏に電話取材を行いました。
池谷氏によれば、ビーズバッグが希少になっているのは「事実です」とのこと。原因としては「主に若い世代での需要が減少していることや、それによって職人が生活困難になり、職人自体が減少していること」など。ちなみにまだ製造している会社もありますが、それも数が減ってきているようです。
また池谷氏からは、ビーズバッグの文化的重要性についても解説を受けました。日本のビーズバッグは「世界的な文化史から見て独自の発展を遂げた、かなりユニークなもの」と池谷氏。例えばイスラム圏におけるビーズは服に縫い込むのが一般的ですが、日本のようにそれでバッグを作るというのはきわめて独特なのだそうです。
加えて、日本人はビーズを「人と人をつなげる珠(たま)」とみなしている側面があり、母親のバッグを娘が譲り受ける習慣などにそれが表れているようです。「単なる製品としてではなく、日本人特有の繊細な価値観や美意識を内包した重要な『文化』のひとつとして考えるべき」と池谷氏は強調しました。
そういった背景もあり、ビーズバッグの数が減少している現状については、池谷氏も憂慮していました。国立民族学博物館では一般からの寄贈も受け付けているため、保管に自信がない場合は、同館に寄贈するのも1つの手段かもしれません。受け入れには審査がありますが、池谷氏によれば「破損などが見られるものであっても収蔵保管されるケースもある」とのことでした。
画像提供:加門七海(@kamonnanami)さん
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