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なぜ風邪は“ぶり返す”のか? 医師に聞く予防法と治し方

“ぶり返す”のは実は「新しい風邪」にかかっているから。

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 「風邪を治す特効薬はない」とはよく聞くお話。ではどうすれば早く治せるのか、またどうすればぶり返さないのか。風邪にまつわる素朴な疑問を、医師に答えてもらいました。

風邪の治し方

取材協力:有明こどもクリニック 理事長 小暮裕之先生

2003年、獨協医科大学卒業。日本小児科学会小児科専門医。PALSインストラクター AHA認定(小児二次救命処置法指導者 アメリカ心臓協会認定)。

2010年に有明こどもクリニック 有明院を開業、2016年には豊洲院を開業。その他、保育園の園医や小学校の学校医なども務める。


風邪にかかる仕組みと治る仕組み

――まずは風邪にかかる仕組みと、風邪が治る仕組みを教えてください。

小暮先生: 「一般的に風邪と呼ばれるのは、ウイルスに感染することで、鼻やのどが急性炎症を起こす“かぜ症候群”の総称です。

 飛沫や手についたウイルスが、粘膜に付着すると感染し、2日前後の潜伏期間を経て発症します。のどの痛みやせき、鼻水、身体の倦怠感、発熱などの症状が起こります。消化管に感染すると、腹痛や下痢、嘔吐などがみられることがあります。

 身体が免疫力を上げて感染したウイルスと戦い、ウイルスを死滅させると風邪は治ります」

風邪を早く治すには?

――では、風邪をできるだけ早く治すにはどうすればいいのでしょうか。

小暮先生: 「特効薬はありません。早く治す薬というのはなく、症状を和らげる薬しかないのです。治すには、基本的なことですが栄養を摂って、睡眠をしっかり取り、体力の回復に努めることです。また、身体を冷やさないで安静にしていることが大切です」

――風邪をひいているときというのは体力が落ちていますが、そもそも体力が落ちていたから風邪をひいたのか、それとも風邪をひいたから体力が落ちたのか、どちらなのでしょうか。

小暮先生: 「両方です。体力が落ちているときに風邪をひきやすくなり、さらに身体は風邪を治すために、体力を感染したウイルスと戦うのに使います。いってみれば、身体は兵隊さんを出動させてウイルスと戦わせるのです。兵隊さんが戦うのには体力が必要なので、風邪をひいているときにも、当然、体力は消耗しやすくなります」

風邪をぶり返すってそもそもどういうこと? 予防法は?

――よく、一度治った風邪の症状が再度悪化する、俗に言う“ぶり返す”ことがありますが、あれはどういう状態なのでしょうか。

小暮先生: 「『ぶり返す』といっても、実はぶりかえしてはいないのです。新しい風邪にかかっているだけなのです。風邪の治りかけというのは免疫力が下がっているため、そこを狙って別のウイルスなどが感染してしまい、再度、風邪をひいてしまった状態が、ぶり返した状態です。

 ウイルスは一度やっつけると身体に免疫ができるため、同じウイルスに感染するのを防げるのですが、次にやってきた別のウイルスの免疫がない場合は、やはり感染してしまうのです。また、ウイルスも賢いので、型を変えて攻撃してきます。同じウイルスでも、型の違うウイルスに感染することもあります。このことから、せきが出る風邪が治りかけているのに、今度はのどが痛くなったり、鼻水が出たりする風邪をひくことがあるのです」

――では、また別の風邪にかからないようにするにはどうすればいいのでしょうか。

小暮先生: 「身体が弱っている状態なので、睡眠と栄養をとって、身体を冷やさないようにして免疫力を上げること。そして、新たなウイルスをもらわないように、手洗いやうがい、マスクを徹底し、人が多く集まる場所などに行かないことです」

風邪に関する素朴な疑問

 風邪の基本的なことが分かったところで、続いて風邪についての素朴な疑問を解消しておきましょう。

Q. 風邪のときにお風呂に入っていいの?

 「疲れる状態なら入らないほうがいいです。お風呂に入ると汗をいっぱいかいて、カロリーを消費します。高熱が出ていてフラフラしてつらいときに、無理にお風呂に入ると、体力を消耗して疲れてしまいます。もし微熱程度でそれほどつらくないようなら、入ってもいいでしょう」

Q. 熱があるときに、お風呂に入って身体が熱くなっても大丈夫?

 「身体が熱くなりすぎると体力を消耗するため、疲れやすくなります。高熱のときに熱いお湯につかるのは避けたほうがいいでしょう。熱があるときに、身体を冷やすのはよくないですが、お風呂や分厚い布団などで温めすぎても、体力消耗の点からよくありません。大切なのは、最も快適な環境で身体を休めることです」

Q. 「風邪を治す薬はない」ってほんと?

 「市販の風邪薬は、風邪の諸症状を緩和させるものです。風邪の菌と戦うのは、人間の体の免疫機能です。例えば解熱剤は、熱を下げることによって風邪のつらい症状を抑えるものです。風邪の症状によって眠りが浅くなったり、食欲が落ちたりすると風邪が治りにくくなります。そのようなつらい症状を和らげて、風邪を治しやすくするために薬があります。風邪薬は、症状がつらいときに使うといいでしょう」

Q. 風邪のときにはなぜ「おかゆ」がいいの?

 「大切なのは、きちんと栄養を摂ることです。ただ、胃腸が消化するのに負担がかかるものは避けたほうがいいです。炭水化物は消化しやすいことから推奨されています。肉などのタンパク質も食べていいですが、油ものは消化に負担がかかるため、避けたほうがいいでしょう」


 風邪の治りかけは、たとえ症状が和らいでいても身体は弱っているため、「次の風邪」にかかりやすいタイミング。食事と睡眠に気を付けて安静を保ち、「次の風邪」によるぶり返しを防ぐことが重要です。

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