小学校のテストから、ゴールデンタイムのクイズ番組まで、われわれの生活と「難読漢字」は切っても切れない関係にあります。
あまりにも種類が多く、普段使っている日本人すら苦しめる漢字。おまけに厄介なのが、1つの漢字に複数の読み方が割り当てられていることです。
例えば「明」という漢字の音読みを、あなたはいくつ思い付きますか?
辞書によって説明に多少のばらつきがある場合も考えられますが、基本的に正解は3つです。明暗(めいあん)の「めい」、明星(みょうじょう)の「みょう」、明朝(みんちょう)の「みん」です。
音読みは同じ中国から来たはずなのに、1つの漢字に複数あることも少なくありません。これが漢字の読みを覚えることそのものを難しくしています。
「呉音」と「漢音」と「唐音」
日本語に複数の音読みがあるワケ、その鍵となるのが「呉音」と「漢音」と「唐音」の3つです。
日本語に漢字文化が流れ込んできたのは歴史上で一度だけ。そんなイメージを抱いている人もいるのではないでしょうか? しかし実は、その考え方は間違いなのです。
呉音
最初に漢字文化が日本にもたらされたのは、4世紀末から5世紀初め、日本ではまだ古墳時代の頃でした。このときに漢字文化は、朝鮮半島にあった百済(くだら)という国を経由して、仏教とともに日本に入ってきました。これが呉音です。脚気(かっけ)、工面(くめん)、兵糧(ひょうろう)などの難読読みは、全て呉音とともに伝わった言葉です。
ちなみに、仏教とともに日本に流入したため、建立(こんりゅう)など仏教関係の言葉は呉音で読むことが多いそうです。
漢音
続いて、7世紀から8世紀、奈良時代後半から平安時代前半にかけて、遣唐使たちによって新たにその時代の発音が伝えられます。これが漢音です。
漢音は現代の日本語に最も深く影響を与えた読み方で、私たちが考える「普通の音読み」の多くはこれに当たります。
しかし、漢音が日常にあまり定着しなかったケースも少しだけ存在します。風体(ふうてい)、知音(ちいん)、参差(しんし)などが好例です。
唐音
さらに13世紀以降、つまり鎌倉時代に入ると、中国に留学した禅宗の僧侶が、主に禅宗特有の用語とともに、新しい漢字の読み方を輸入しました。これが唐音です。
金団(きんとん)、胡乱(うろん)、庫裏(くり)、行宮(あんぐう)は、全て唐音の読み。呉音や漢音と比べてそれほど大規模にもたらされたわけではないので、異彩を放つ読み方が多い印象です。
また、椅子(いす)、提灯(ちょうちん)、暖簾(のれん)など、この時代に中国から日本に持ち込まれた日用品も、唐音由来の読み方をします。
日本語の漢字に複数の音読みがあるワケが、お分かりになったでしょうか?
読みにくい漢字が存在する理由、それは音読みが(大きく分けると)3段階にわたって、中国から日本にもたらされたからというものでした。
これを覚えておけば、漢字を勉強する際の手助けとなってくれるかもしれませんね。
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