人としてそれはどうなのか 小学生女子のお金でガチャを回す『今日から俺はロリのヒモ!』という脳みそハッピーライトノベル:あのキャラに花束を
大富豪・二条藤花とクズ男・天堂ハルの華麗なる生活。
ちっちゃい少女と仲良くすごす妄想。ほっこりしますね。でもこの作品は、見る人によって夢か狂気か分かれそう。
今回は『今日から俺はロリのヒモ!』の小学生ヒロイン・二条藤花と、彼女に甘えまくる元男子高校生・天堂ハルをご紹介。
藤花、ピクシブでハルのファンになる
絵はうまくて担当がついているけど、ストーリーがヘタでデビューできない、高校生の天堂ハル。ある日、ピクシブで彼の漫画を見て大ファンになった少女・二条藤花に出会います。彼女いわく、ハルが高校に通っていたら作品づくりの時間が割かれてしまい、それは文化的な損失だとのこと。
藤花「でしたら、わたしが先生のパトロンになります」
小学5年生にして、投資と企業コンサルで1日2億円近くもうけている藤花。彼を自宅に住まわせ、仕事場も提供するという。「先生には漫画だけに打ちこんでほしいんです!」
ハルは即高校を辞め、小学5年生の豪邸に招かれることに。藤花の友人で超絶お金持ちな、ツンデレっ子・丹沢千鶴、不思議ちゃん・小森紗奈ら3人の元で、ヒモ生活を開始します。
ハルの悪行三昧
問題はハルが全然漫画を描かないということと調子にのってやりすぎること。それが全部許容されることです。苦労せずオールオッケーになる世界って、感覚がおかしくなる。
小学生のお金で同人誌大人買い
藤花は支援するのが楽しいので、ハルが「資料代」だと言えば何でもお金を出します。「先生がほしいと思うものにかかるお金は、すべて必要経費です」。
同人誌に興味があったハルは「資料」だと説明して、秋葉原で買い物三昧。「ロリのヒモとなった俺は! ロリのお金で! エロ同人を好きなだけ買うことができるのだ!」これがハルの理性の糸をプッツンと切るきっかけになります。
小学生のお金でソシャゲガチャ課金
どうしてもほしいSSR巨乳キャラがいるということで、課金をお願いしたところ即OK。これも資料扱いらしい。
「アイデアとは、ガチャみたいなものだからだ。どちらも求めているものが出るときは出るし、出ないときは出ない」ハルは、超理論を出すことにおいては天才。「あきなめなければいつかは出るわ!」「にいさまならできるにゃ」と応援されながら小学生のお金でガチャをまわした男子は、現実二次元あわせてコイツだけだと思う。
ロリキャバクラ
キャバクラを体験してみたい。しかしキャバ嬢と話すより藤花たち3人と話すほうが楽しい。だから小学生がキャバ嬢になって接客してくれたら最高ではないか、という理論。指名をもらえた人には賞品として「天堂ハル1日乗車券」が手に入るということで対戦形式に。ヘンに下心を出さず、遊びの範ちゅうに持っていったのは巧み。
お酒はないものの、ふとももをぴったりくっつけてきたり、鎖骨を触らせたり、髪の毛を触らせたり、ひざまくらしたり、おへそ当てゲームをしたり。まあ、確かに藤花にお金をもらって本物のキャバクラに行くよりは、マシ……かなあ?
小学生にお風呂で身体を洗わせる
一番アウトな行動ですが、思考的には一番まとも。「ヒモ」として慣れてきたハルは、自らをクズとして下げまくることで、藤花たちを喜ばせる術を身につけていきます。そのひとつとして、水着を着た3人に洗わせる、というゲスい名目で、スキンシップをはかることに。
ハルは生粋のおっぱい星人で、ロリ性癖ゼロなので、お風呂でのじゃれ合いは明るく楽しい雰囲気。なるほど、一応は3人のことを妹的に好きなのはわかった。
無邪気なフェアリー、藤花ちゃん
この作品が幸せかつホラーである要因の一つが、藤花のキャラクター性にあります。
藤花はハルの頭の先から足の先まで全肯定。作品だけでなく、彼自身のことを好きで好きで仕方ない子です。だから、彼には湯水のごとく出資します。正直だいぶネジがとんでいるので、周りにストップさせられることもマレにはありますが、イヤイヤやったことはありません。
彼女は、ハルを甘えさせているという発想ではなく、全て「自分がそうしたいから」「楽しいから」「先生の漫画が好きだから」やっています。
何もかもを無邪気に楽しむ妖精的な子で、別に仏心を示しているわけではない。ハルをクズだと知った上で、自分たちを楽しませてくれるお抱えエンターテイナーとして接しています。彼女視点で読んでみると、意外とWin-Win。
幸せってなんだろう?
一方で状況を第三者から見ると、ハル・藤花まわりの空間は完全に閉じています。現実の倫理が通用しない、痛みが一切ない極楽。
ハルは3巻時点で、商業誌に載る漫画は一切書いていません。お金は全て藤花任せなまま。「最終的に努力して、成長する」というのがすっぽり抜けています。
ハルが藤花のためだけに漫画を描くシーン。藤花があることで涙したのを見て、彼女が求めているものが全部詰まっている漫画を描きます。商業誌には出しません。
この行動は「自分の内から出る、表現のあり方」を問うものです。ただ1人のためだけに描いて、あとはそばにい続けることが幸せなのか。自分が描きたいものをプロとして描くために、パトロンになってもらうのが幸せなのか。彼と藤花が選んだのは、前者でした。
藤花「先生は、わたしのヒモです。でも、わたしはそれでいいと思うんです。先生がそばにいてくれるだけで、わたしは楽しいんですから。これでもっと漫画を描いてくれたら、本当に言うことなしです」
ハルの担当編集さんは、散々に彼のことを「最低のクズ」と、もっともな罵倒した後、ポロッと言います。
「大好きな作家が、自分のためだけに漫画を描いてくれるんだぞ? そんなの、究極の贅沢じゃねえか」
幸福はお金では買えない。藤花は今、幸せなようだ。
7月25日には4巻が、7月28日にはドラマCDが発売になるそうです。甘さしかないパライソ。素直に萌えキャラに囲まれた幸せと受け取るべきか、萌えの果てにたどり着いた極彩色の歪みと見るべきか。
(たまごまご)
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