ア: 私は元は研究者だったので、実験室での仕事歴は長いです。大量に飼育してはオスとメスを分けたり、薬剤の効きを調べたり、専用の部屋で働いていましたね。
筆: ど、どんな感じの場所なんですか……。
ア: 飼育室には60万匹のゴキブリがいます。ガラス越しに部屋を見渡せるのですが、ガラス一面ビッシリと真っ黒いゴキが張り付いてうごめいています。
筆: ろくじゅうまん……。
ア: 一部屋にです。巣となるアイテムをいくつも床に置いてあり、生活しやすいような環境にしてあります。
筆: 一部屋にろくじゅうまん……想像するだけで阿鼻叫喚の地獄絵……。あ、写真があっても見せないでください。多分気を失うので。で、その施設を外部の人が目にする機会ってあるんですか?
ア: 社会見学で小学生が来ることも。
筆: トラウマになりそう。
ア: 必ず何人かは「ぎゃーーーーーーー」って叫んでますね。大人でもダメな人は本当にダメで、入室前に「覚悟してくださいね、気を確かにしてくださいね」とはお伝えします。
筆: 私はオシッコちびる自信がある。
ア: 外界のゴキブリは病原菌を運んだりするので不潔ですが、実験室で培養したモノはキレイなんですよ。見た目はともかく、不潔ではないです。
筆: 理屈では分かりますけど……。
ア: 死体はふつうに素手で拾うこともあるし、実験ケースから逃げ出したのをほいっと素手でつかんでケースに戻す研究者もいますね。ふつうの光景です。
ゴキブリの遺影を掲げる「虫供養」
ア: あと、これは積極的にメディアの方にお話していることではないんですが、「虫供養」という行事を毎年行います。お寺でお線香をあげ、お経を読んでもらって、ゴキブリの遺影を掲げてお祈りするんですよ。
筆: へーーーーー。
ア: 大量の害虫を培養しては殺しているわけで、たとえ害虫といえど、殺生をしていることに変わりはないですから。
筆: それは面白半分とか酔狂ではなく、いたって真剣にやっているんですよね。
ア: もちろんです。端から見るとシュールに見えるかもしれませんが、マジメにやっています。
筆: 命に感謝しているってことの表れですか。
ア: そうです。動物愛護の精神に近いですかね。面白おかしく書かれるのは本望ではないので、対外的に「こういう活動をしています」的な発信はしていません。一度、どこからか話を聞きつけた新聞社さんが、取材を申し込んできたことはありましたが。
筆: おふざけトーンで記事にされたら心外ですもんね。
ア: ですね。なので基本は社内でひっそりとやります。消費者の方々にわざわざお伝えすることでもないでしょうし。
筆: なんか、ちょっといい話になってきた。どうもありがとうございました。これで人類はGに勝てそうです。家に帰ったら早速殲滅してやります!
中山順司(なかやま・じゅんじ)
ロードバイクをこよなく愛するオッサンブロガー。“徹底的&圧倒的なユーザー目線で情熱的に情報発信する”ことがモットー。freee株式会社勤務&経営ハッカー編集長。ブログ「サイクルガジェット」運営。
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