気が付くと財布の中にたまっている小銭。ぼんやりと眺めていると、同じコインでも汚れの度合いに差があることに気付きます。
取り出してみると、大抵のきれいな硬貨は、平成20年代のように、近頃作られたものであることが分かります。
新しいからきれい。そこには何の不思議もありません。
……本当に?
そういえば、なんで硬貨には製造年が書いてあるのでしょう? 紙幣にはないのに? 根本が不思議ではないか。
というわけで今回は「なぜ硬貨には製造年が書いてあるのか」(紙幣には書いていないのか)についてお話しようと思います。
硬貨は全部がデザインである
いきなり答えを出してしまいますが、「硬貨に年銘(製造年)」が書いてある最初の理由は「そこまで含めてデザインだから」。
硬貨のデザインは政府の閣議によって決定されますが、「コインに製造年を書く」ところまでを含めての決定がなされているのです。
100円玉の製造年が「平成29年」、1円玉の製造年が「平成二十九年」と書かれるように、製造年が普通の数字だったり漢数字だったりするのも「そういうデザインだから」。
近頃話題になった「5円玉には漢数字の『五』しか書かれておらず外国人に分かりづらい問題」も、結局「そういうデザインにしてしまったから」が理由なのです。
硬貨の表面は全てがデザイン。新しいデザインで発行するには閣議の決定が必要になります。
なぜ硬貨に製造年をデザインするのか
では「なぜそもそも硬貨に年銘をデザインしたか」の話に移りましょう。
答えは「硬貨が貴金属で造られていた時代のデザインを残したから」。つまり「昔の名残」。
昔の硬貨には、金や銀が成分として含まれていました(そしてそのこと自体がお金の価値を担保していました)。そしてその含有量は、製造年により異なっていました。つまり、同じ額面の硬貨であっても、「物質としての価値」が作られた年により違ったのです。これが硬貨にもともと製造年が書かれた理由です。
その昔価値を示すために書かれていた製造年というデザインが今も残っているから、硬貨には造られた年が書いてあるのです。
紙幣に製造年が書いていない理由は?
そうデザインされたのが第一の理由ですが、もう少し踏み込んで。
よほどのことがないと壊れない硬貨に対し、紙幣は紙ですからすぐに(数年で)ダメになってしまいます。そのため、紙幣に製造年を印字しても意味がないのです。
ちなみにこの「ダメになった紙幣」は裁断され、焼却処分の他、資源としてリサイクルされることもあります。お使いのトイレットペーパーは、もしかしたらその昔お札だったのかもしれません。
紙幣には、物質としての価値はさほどありません(トイレットペーパーになるくらいですから)。そのためか歴史上、「それ自体で価値を持つ」貨幣よりも登場は遅れることになります。
製造年で分かる硬貨の価値
物質として価値があるからという理由ではありませんが、現代においても製造年によって価値の上がるお金はたくさんあります。
代表例が「昭和64年のコイン」。7日間しかなかった昭和64年に発行されたため、レア度が高いのです(ちなみに昭和64年には50円玉、100円玉は発行されませんでした)。もしもコインに製造年が書かれていなかったら、この硬貨たちも普通のコインに埋もれていたことでしょう。
長い歴史の元に生み出されたお金のデザイン。果たしてこの先どんなデザインのお金が世に出回るでしょうか?
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アレじゃないことを祈る。