「Rのつかない月には食べるな」(例えばAugust(8月)には"R"がつかないから食べるのやめとけ)と言われるカキですが、それはマガキの話。
イワガキは産卵時期が違うため、ちょうど夏場、今が旬です。さらに、保存・輸入技術の向上も相まって、今では通年でカキを味わえるようになりました。
ところで、この「カキ」、漢字では『牡蠣』と書きます。この「牡」という漢字、読みは「オス」(牡馬(ボバ)の牡ですね)。
なぜ牡蠣には牡という漢字が使われているのでしょうか。そしてメスはどうなったのでしょうか。
今回は「カキ小屋で披露すると一目置かれる」雑学を、こっそり皆様にお教えします。
カキのオスメスは顕微鏡で判定する
今でもカキのオスメスは基本的に顕微鏡判定です。そんなわけで、カキに「牡蠣」という漢字が当てられた時代には、その性別を鑑定できる術などありませんでした。
そこで昔の人は思った。「カキは『白子』に似ているからオス」。そんな単純な、とお思いでしょうが、仕方ない事情もあります。
例えば「サザエ」。これは内臓部分が白のものがオス、緑のものがメス。そんなわけで、「身が白い貝=オス」という固定観念が存在しても仕方なかったのです。
こんな観念のもと、カキは全部オスだと思われ、漢字では「牡蠣」と書かれることになりました。もちろん、メスの牡蠣もいます。
昔の人の勘違い「磯のアワビの片思い」
貝のオスとメス。恋の季節に覚えておきたい言葉を1つ。
「磯のアワビの片思い」という、最近ではあまり聞かなくなった言葉があります。言葉の意味は「片思い」。片思いをシャレて言った言葉です。
しかし、なぜ「アワビ」? これも、貝類に対する昔の人の勘違いから来た言葉です。これは「アワビが二枚貝の片側しか無い」ように見えたから。もう片方の「相方」を探している、と考えたのでしょう。
それでは、なぜアワビは片側しかないのでしょう? それは……実はアワビは「巻き貝」だから。巻き貝なのであの形も当然なのです。
二枚貝の殻は「ピッタリ合う」
さて、アワビから派生してもう1つ。雑学を畳み掛ける!
昔の人は「二枚貝の殻はピッタリ合う」という認識を持っていました(だからアワビは奇妙だと思われたのでしょう)。
例えば「ハマグリ」。大昔はハマグリの貝殻を「毛抜き」として使っていました。こんなことができるのも、貝殻がピッタリ合うから。
そして平安時代には「貝合せ」という遊びが生まれます。ハマグリの殻を複数ばらまいて、同じ貝の貝殻を2つ見つける神経衰弱的ゲームです。
ここから生まれた言葉があります。貝合せで失敗したとき、昔の人は「ぐりはま」といいました。「はま」と「ぐり」を入れ替えた言葉です。これが「ぐりはま」→「ぐれはま」→「ぐれ」と来て、現在で言う「グレる」が生まれました。室町時代から「グレる」という言葉が存在したとされています。
「牡蠣」の字を当てられたカキ。メスもしっかり存在するので、オスのカキは片思いでは終わりません。
一方で「牡」なんて言われたメスの側は、今頃グレているかも知れませんね。
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