暑い夏、クーラーでキンキンに冷えた部屋で冷たいアイスを食べていると……アイツがやってくる。
――腹痛。全人類の敵。
トイレに駆け込む。個室が1つだけ空いている。ラッキー、とガッツポーズをしながら入って……絶望する。
和式便器。
かつては日本のトイレ市場を席巻していた和式便器も、戦後爆発的に広まった洋式便器の前ではタジタジ。1977年には洋式便器の販売数が和式便器の販売数を超え、今では一般家庭のトイレはほとんどが洋式便器になっている。
しかし、和式便器はしぶとい。
駅やデパートなどの、多くの人が使うトイレには、必ずと言っていいほど1つは和式便器が残っている。2016年、文部科学省が行った調査では、公立小中学校のトイレの6割が和式便器だという。
日本人の多くは洋式便器を望んでいると思われるのに、なぜ和式便器がなくならないのか。それを探るために、和式便器と洋式便器のメリットとデメリットを確認してみよう。
和式便器
まず第一に、和式便器は価格が安い。さらに単純な構造なので清掃も容易で、洗浄に要する水の量も洋式便器より一般に少なく、節水にもなる。これらは小中学校でいまだに和式便器が過半数である事実とも合致する。
その一方で、和式便器にしゃがみこむ姿勢は下半身に大きな負担をかけるため、肉体的な理由などから使用が難しい人もいる。特に高齢者の中には、洋式でないと用を足せないという人も多いだろう。
また、近年の家庭のトイレ環境はほぼ洋式のため、小さな子どもの中には「和式便器を使ったことがない」という子もいるといわれている。そうした子たちが小学校で初めて和式便器に出会い、「このやり方であっているのかな……?」と疑問に思いながら使っているというケースもあるようだ。
洋式便器
洋式便器は、前述したような使いにくさがなく、高齢者や小さなこどもにもやさしい。温水洗浄便座(一般家庭での普及率は80%を超えている)や自動洗浄などの機能を備えているものも広く普及しており、使い勝手だけでいえば選ばない理由はないようにも思える。
※初掲載時「ウォシュレット」と表記していましたが、TOTOの商標であり一般名称は「温水洗浄便座」であるため修正いたしました。
しかし、中にはもちろん使いたがらない人々も存在する。
洋式便器は、便座に直接肌を密着させなければいけないので、不特定多数が利用する外のトイレに嫌悪感を覚える場合があるのだ。便座を拭くための消毒薬などが設置されている場合もあるが、「無理なものは無理!」という人は和式便器を使うほかない。
比較的少数かもしれないが、このような需要がある以上、全ての和式便器を駆逐するわけにはいかないということなのだろう。
国内の和式便器の出荷比率を見ると、1980年に40%だったところ、現在では約1〜2%まで低下しているという。このまま和式便器は姿を消すのか、それとも上記のような理由から細々と残り続けるのか――。
2020年には東京オリンピックをひかえており、公共施設のトイレ事情は対外的にも重要なものと見られることだろう。“トイレ先進国”としての今後の動向を注意深く見守りたい。
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