週刊少年チャンピオンで連載中の、板垣恵介先生による人気格闘漫画『グラップラー刃牙』シリーズ。累計発行部数は6500万部を超え、最新作の『刃牙道』本編では、満を持して宮本武蔵と刃牙の戦闘が開始(はじ)まろうとしています。
最強死刑囚編のアニメ化発表もあり、まだまだ人気加熱中の刃牙ですが、先日ねとらぼ社内にて元板垣先生担当かつチャンピオン編集のY氏、格闘漫画大好きなねとらぼ編集たち、そしてなぜか僕で、おのおのが好き勝手刃牙の話をする会が開かれまして。
なんで自分が呼びだされたんだ……と身構えていたところに、「じゃあ、これからしばらく刃牙の記事書いてね」と最後にスッと言われ、正に「そうきたかァ〜〜〜ッッッ!」状態。
結局1から10まで好きにやれと放り投げられたのですが、そんな曖昧な内容でも十分に書けてしまうのが刃牙という個性あふれる作品の素晴らしいところ。
そんな訳で、今回は刃牙ワールドと板垣先生の特異な感性による擬音を探してきました!
刃牙ワールドの代表的な擬音たち
まず刃牙の擬音を語る上で絶対に外せない音が「サモ・・・」。
このシーンは毒手の使い手「柳龍光」が、その毒手の恐ろしさを確認するため満開の花を一瞬で枯らせるというシーンなのですが、出てきた擬音がまさかの「サモ・・・」。毒手を操る殺法家が花をなでると「サモ・・・」という音が鳴るという学びがあります。「サモ・・・」には、大麻を吸っていなくとも誰もが「ヒアッヒアッヒアッ」と笑ってしまうという刃牙擬音の魅力が凝縮されています。
刃牙の擬音で外せないといえば食事シーン。擬音でなくとも刃牙自体に食事シーンは欠かせない大切なアクセントとなっています。そもそも刃牙の初登場も食事からですし。
例えばこのジャック・ハンマーの食事の際の擬音。「ガプ・・・」「ギュウウウ」はわかるとして、その後の「ナポ・・・」が素晴らしい。
更に畳み掛けるように続く「モニュ・・・モニュ・・・」なるかわいい咀嚼音。日に30時間の鍛錬という矛盾のみを条件に存在する男でも、咀嚼音は常人と同じくかわいい音が鳴ることがわかります。
元担当のY氏いわく、「板垣先生は水の音の表現に重きを置いている」とのこと。刃牙の食事シーンでの擬音にやたらマ行やパ行が多いのは水分に注目されているからなんですね。それでも「ナポ・・・」はよくわからないですが。
個人的なオススメの食事シーンは、ピクルが烈海王の左肩を食いちぎるショッキングなシーンに出てきた「エロ・・・・・」。この後に食事シーンの基本である「モグ・・・」「モニュ・・・」に続く様式美も完璧ですね。今まで食物に対して使われた擬音が人間に使われることで、ピクルの規格外の強さが印象付けられます。
『グラップラー刃牙』に使われた魅力的な擬音たち
刃牙での擬音の重要性は前述したので、続いて初代『グラップラー刃牙』での印象的な擬音たちを紹介していきましょう。ちなみになぜ『グラップラー刃牙』のみに絞ったかですが、一から読み返していたら最凶死刑囚編あたりで熱が入りすぎて擬音のメモを完全に忘れていたからです。
初めに紹介したい擬音はコレ。範馬刃牙が飼っているムサシの咀嚼音。人間たちですらあのような咀嚼音なのですから、当然犬の咀嚼音も汚いです。武蔵とムサシでなにかあると思いきや全くでてこなくなりました。もう範馬刃牙は愛犬よりカマキリの飼育に夢中なのでしょうか。
同じく2巻では、犬なんかの咀嚼音に負けるかといわんばかりに、独歩も「ゾボボボ ボボッ ズズッ」とすさまじい音を立てて麺を食べています。あまりの大きな音に加藤も少し引いているように見えるのもポイント。
まだ処女らしいかわいらしさがあった頃の梢江。厳粛な雰囲気の静寂を切り裂くように刃牙のトレーニング音「バグダ」が鳴り響きます。
2巻時点でこれだけ擬音の基本形が完成しているのですが、抑えておきたいのがエレベーターが到着した際の「ちんッ」。この頃から既に文末の「ッ」が台頭する片りんが見えます。
まだ顔が若々しく感じる範馬勇次郎と『刃牙道』で大活躍を見せた本部の対面。緊迫する両者の間に割って入るポップな「ぐにー・・」がかわいらしい。
独歩の心臓をマッサージしているコマ。名医による皮膚越しのマッサージの際には「キュウゥ」「ムワァ」という音が鳴ることを僕らに教えてくれます。
「すンげェェェェ」は、入場してきた刃牙に対しての観客の反応。こんなルフィみたいな声をだす純粋な人間が地下闘技場にいることに吃驚。
上のコマはよくネタにされる有名シーン。刃牙伝統の政治ネタですが、今なら殺害予告で炎上するセリフです。もちろんこのコマの衝撃は言うまではないですが、その前のダイヤルが回る音を「ジ〜〜〜コッ」「ジ〜〜〜コッ」と表現したシュールさは、スマホ時代になった現代にこそ語り継がれてほしいところ。
痺れるカッコよさの2つ。独歩の登場シーンを彩る「こオオオオオオオオオ」や、回転する貫手の解説する際に放った「ボゥリュッ」のカッコよさたるや。正に「武神の名に恥じぬ男」。
最大トーナメントも中盤に入り、両者ともに相手選手を秒殺した三崎健吾とジャック・ハンマーの試合。1秒間に12連攻といわれる少林寺の技は「チカチカチカチカチカ」と切れかかった電球を思わせる音を響かせます。こんなに良い音を鳴らせたというのに、ジャックには「遊戯の域はでていない」と一喝されてしまいました。
個人的にグラップラー刃牙で一番痺れた擬音。古流殺法「眼底砕き」により窮地に陥ったように見えた渋川剛気が、直ぐ様逆転した後に放った名セリフ「とっくの昔に義眼じゃよ」からのかわいらしい「チュピッ」。とても自分の眼窩に指をつっこんでの音には思えません。
前述した板垣先生の水音への拘りを感じさせる良い擬音ですよね「チュピッ」。
ちなみにこの「チュピッ」ですが、実はもう一度使われる場面があり、くしくも渋川剛気の入場前シーン。狙ってやっているのか、はたまた素で起きた偶然なのか判断つけがたいのも板垣先生の魅力でしょう。
渋川剛気の魅力は「チュピッ」だけでなく、ジャックの猛攻を合気で返した後に魅せた「座ッ」も作中で一二を争う迫力があります。つくづく達人ッッ!
最大トーナメントの佳境、決勝戦前には基本に立ち返り食事シーンが挟まれます。初登場から刃牙の食事シーンを彩ってきた擬音たちの豪華フルコース。ファンにとってここまで感慨深いサービスはあるでしょうか。
先ほどの食事のコマできれいに締めようと思ったのですが、どうしてもこれだけ紹介したかったのが決勝戦にでてきた「ギャル」。常人ならぶっとんでいく主人公の擬音に「ギャル」は使わないでしょう。
というわけで、グラップラー刃牙の擬音たちでした。もちろん、ここに掲載したのは大分厳選したのでごく一部。むしろグラップラー以降の方が板垣先生の擬音センスにも磨きがかかってくるので、これを機にみんなも擬音へ注目していきましょう。画像付きだとねとらぼが載せてくれないので文字だけにしますが、例えばSAGAでの刃牙が梢江の乳頭を弄る際にでてきた「クリ」などが好きです。
(にゃるら)
(C)板垣恵介(週刊少年チャンピオン)
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