このほど、日本高野連によって2018年春のセンバツ高校野球から、延長戦に「タイブレーク制」が導入されることが発表されました。
何も急に決定されたのではなく、これまでタイブレークの導入自体は議論され続けており、いよいよ決定に至った、という次第です。とはいえこのタイブレーク制、高校野球ファンでも見たことのある人は少ないはず。
この制度によりどのように高校野球が変わるのか、どんなメリットやデメリットがあるのか、まとめてみました。
そもそもタイブレーク制とは
野球におけるタイブレーク制は、延長戦などでの試合促進のため、回の初めからランナーをおいて始めるというルール。当然、得点は入りやすくなり、試合が動くことから時間短縮が期待されます。
日本のプロ野球にタイブレークは存在しませんが、国際試合であるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では延長11回から無死1、2塁で始めるというタイブレークルールが設けられていました。
今年2017年のWBCでは、延長にもつれ込んだ日本対オランダ戦が、タイブレークでの中田翔選手の決勝打で決着となりました。野球のタイブレーク制が日本での知名度を上げた象徴的な試合でしょう。
高野連は、延長13回からこのタイブレーク制を採用するとしています。WBCの例からも分かる通り、タイブレークを始めるタイミングは各大会のルールによって異なります。
実は、甲子園以外の高校野球では、タイブレークはよく導入されているルールです。もう1つの高校野球の殿堂である明治神宮野球大会や、国体での高校野球においては延長10回からタイブレークとされており、1死走者満塁からのスタートとなっています。
このような背景もあり、高野連はセンバツと夏の甲子園へのタイブレーク導入を近年検討し続けていました。そして、今年のセンバツで15回引き分け再試合が2試合連続で発生したため本格的な調査に入り、ついに導入という運びになったのです。
塁に置くランナーや決勝戦での採用の有無、地方大会への規定などはまだこれから詰められていく段階ですが、ひとまずタイブレーク制の採用は決定事項となっています。
甲子園でのメリット
タイブレーク導入のメリットとしてまず挙げられるのが、選手の疲労や故障を減らすことです。今回の導入においても主な理由として挙げられていました。
特にピッチャーの肩は消耗品とされており、甲子園での連投は以前から問題視されていました。タイブレーク制はこの負担を軽減することが期待されています。
投手の肩への負担については「投球数制限をつければよい」という議論も存在します。しかし投球数制限については、良い投手を複数そろえやすい強豪校が過度に有利になってしまうという見方が強く、導入は難しい状況です。
もちろんデメリットも指摘されている
当然ながら、デメリットも指摘されています。
そもそも、投手自らが背負ったわけではないランナーで試合が決着してしまうことが十分に起こりうるため、野球としての面白さや球児たちの積み上げてきたものを損なう、という見方もあります。
また、毎年話題になる甲子園での各種記録が使いづらくなることも考えられます。タイブレークでの打点の扱いや投手の失点記録の扱いはまだ不透明なまま。記録を楽しむスポーツでもある野球においては、無視できない問題です。
ドラマの場所としての甲子園の魅力が薄れてしまう、という見方も少なくありません。2006年夏・早稲田実業vs駒大苫小牧のような、再試合に至るような熱い競り合いが少なくなってしまうこともまた確かです。
春夏の甲子園は、日本の文化ともいえる特殊な場。理論的な説明だけでは片付かない部分も多そうです。
まとめ
ここまで、タイブレーク制の性質を見てきました。良い点もあり、甲子園ならではの反対意見もありました。
高野連としては、11月までに細部を詰めていくが、基本的にはタイブレーク制を導入することは確定としています。今後の動向に注目です。
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