一定レベルに達したら“単語カード”を活用
しかし私の場合、レベル8の途中で“寺本式単語帳”では完全暗記ができなくなりました。知らない単語が多すぎて、ページ単位で覚えるには効率が悪くなったのです。それで、レベル8の途中からは“単語カード”に移行しました。レベル8以下の単語も難しいものは、カードに移行し、トータルで5000枚くらいカードを印刷しました。
この印刷はExcelから直接できるようにVisual Basicでプログラムを書きました。表(おもて)面には単語と発音記号とSVLレベル番号のみで、裏面に「英辞郎」の語義を印刷しました。
特別なプログラムがなくても、ワードの差し込み印刷機能を使えば、Excelからカード印刷できるはずですし、コピペしたり、もちろん手書きでカードを作ることもできます。暗記するのなら、一生ものですから、作る手間は回収できると思います。筆記具は「消せるボールペン」が便利ですが、耐久性が不明です。安全策をとるなら、消えないボールペンの黒などがいいでしょう。
手前のプリンタがカード印刷用のCanon iP2700。奥のプリンタはRicoh NX96eで、手差しの場合135Kgまで使えるので、A4上質紙135Kgに印刷し、8等分してA7カードを作ることができる。A7カードと5×3カードは、高さはほぼ同じで幅がA7の方が2cm短い
プリントに使用したカードは、コレクト情報カード印字用、5×3サイズ(C-2531)。この「印字用」は、手書き用にしているカードより0.02mm厚く、インクのりもよく、シャッフルしやすい、お気に入りのカードです。
単語カードもアナログがオススメ
今はスマホがありますから、紙カードよりスマホアプリの方がいいと思うかもしれません。それでも、紙カードを使い続ける理由の1つは、冒頭に書きましたが、それ以外にもありますので、ここで整理してみます。
- スマホを見ているとメールやSNSなどで、気が散る。スマホもPCも切って、紙カードを使う方が暗記の効率が断然いい。
- 単語カードは復習用に一生使う。現在のスマホアプリが、20年後も使えるとは思えない。
- 紙は応用性にすぐれ、文字でも絵でも自由に記入でき、どんな暗記にも使え、マーキングや書き込み、仕分けが素早く自由にできる。
- 進捗状況が、カードの厚さで視覚的に分かる。また、物理的にかさばるので、いやでも「片付けなければならない」プレッシャーがかかる。
【応用事例1】表現のためのロイヤル英文法(例文暗記CD付き)暗記例文300文を、A7カードで作成した例。左のモニターがスキャンした本。右のモニターがA4を8等分したレイアウト。奥のカードがA7カード300枚で、手前の5×3カードは10文ずつ手書きしたもの
もちろん、紙カードには欠点もあります。
- 場所をとる。
- カードを作る作業に時間がかかる。
- 両手がふさがる。
- 発音を聞けない。
- 暗い場所で使えない。
薄暗い場所でも勉強できるよう、モバイルバッテリーcheero Power Plus 2にUSB LEDライトをつけて、モバイルスタンドにしている。USBライトの重さ(実測46g)だけで、スタンドができるのは重宝する
途中休憩なし! 一気に覚える
この方法で暗記する場合は、とにかく時間のあるときに一気にやることです。無理やり詰め込む記憶は、驚くほど急速に失われます。きのう完全に覚えたはずの単語が一晩寝たら、まったく覚えていない、なんてしょっちゅうです。実用英文を読めるところまで来れば、読書量にもよりますが、かなり単語を忘れにくくなります。そこまでは一気に頑張りましょう。
【応用事例2】「シェークスピア・ソネット」暗記用154枚のA7カード。裏は現代英語訳。14行の定型詩なので、カードにぴったり。映画「いつか晴れた日に」でケイト・ウィンスレット演じるマリアンヌが、116番 "Love is not love / Which alters when it alteration finds"(愛は愛ではない/相手が変わって変わるなら)を吟じるシーンは最高
1日100枚をノルマとし、100日で1万語覚えることを目標にしました。多義語は、文脈で連想可能な範囲にまとめました。単語を見た瞬間、すぐに意味がひらめくまで覚えます。素早くカードを切って、意味がさっと出てくる手応えがなければ、その単語はまだ覚えていません。
普通の「輪ゴム」より何倍も太い「#130」は、切れにくくカードをしっかり押さえるので便利。輪ゴムなしでカードの束を落とすと悲惨なことになる。汗をかく季節に持ち歩く場合は、カードケース(CP-253P)がないと、カードがぬれるおそれがある
「覚えた」に分類したカードも定期的に見直す必要があります。見直すたびに忘れたカードがぞろぞろ出てくるので、チェックするのが怖くなりますが、そこをふんばって、プチプチをつぶすときのように、忘れている単語があったら、喜ぶくらいの心掛けでいきましょう。きびしいチェックをして、ただの1枚も忘れていないと確認できると、本当に達成感があります。
レベル1〜3の基本語を固めるためと、熟語を強化するのに「英和辞典」を読むのもおすすめ。お気に入りは、左のアクセスアンカー英和辞典。右のニューヴィクトリーアンカー英和辞典は分厚すぎて持ち運びしにくいが、字が大きい点がいい
最初は苦しいですが、だんだん「暗記脳」みたいなのが活性化してきて「さあ〜。今日も100枚、難しい単語でもなんでも、来んか〜い!」というテンションになってきますし、終わったカードを見直して「前はこんな簡単な単語も知らなかったのか」としみじみ思い出すのも楽しく、加速がついてきます。こうなったら、絶対に立ち止まってはダメです。
単語力だけが英語ではないのですが、SVL 1万2000語は、基礎レベルですから覚えておいて損はありません。最も難しいとされるレベル12でも、casket(宝石箱、棺)、lava(溶岩)、decoy(おとり)、constellation(星座)などの語が含まれています。日本語の意味自体は決して難しくないですよね。つまり、ごく普通の語彙です。
この1万2000語で、かなり英語が身近に感じられるようになると思います。「覚えた」カードは定期的に見直すようにしないと錆びつきますので、注意しましょう。また「覚えた」と言っても、カードで覚えたのは表面的な意味ですから、多読で語感を養うことも大切です。
身につければ、英検・TOEICは怖くない
SVL レベル12まで覚えると、英検一級の語彙問題でも余裕で解けるはずです。TOEICにはややオーバースペックでしょうか。TOEICには政治・宗教関係のトピックが出ませんので、英字新聞と比べても必要な語彙は限られています。TOEIC高得点が目的の場合、語彙はレベル10程度にして、やさしい英文の速読に注力した方が効率的でしょう。
楽しく鍛えましょう
紙カードを作り、スマホの電源を落とし、本気で暗記に取り組むと、意外な速さで覚えられます。いったんそれを実感すると「はずみ」がついて、もっと覚えようという意欲もわいてくるのです。英語が伸び悩んでいると感じた場合、悩む前に語彙を3000語、増やしてみてください。英語の実力が確かに上がったと実感できるはずです。語彙は、決して学習者を裏切らないのです。
(寺本あきら)
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