耳かきブランドとして知られる「ののじ」が今、キッチングッズとしても注目を集めていることを知っていますか。広報担当者に戦略や人気があるというピーラーの特徴などを聞きました。
3連ワイヤーが特徴の「爽快ソフト耳かき」、クワ状の先端で耳垢をキャッチする「KAGAプレミアム」――無類の耳かき好きである筆者にとって「ののじ」とは画期的な形状の耳かきを開発する「耳かきのブランド」というイメージがあります。しかし、今、主婦層の間では「ののじはキッチングッズブランド」と答える人が増えていると話してくれたのは、「ののじ」社の星野世司子さん。
実際に東急ハンズなどの量販店に行ってみると、「ののじ」と書かれたピーラーやおろし器、スプーンなどたくさんのキッチングッズが並んでおり、なかでも「サラダおろし」や、「キャベツピーラーライト」は東急ハンズのキッチン部門で1位を獲得するなど勢いに乗っています(各税別900円から1200円程度)。
ののじはなぜキッチングッズに参入したのか
星野さんによると、ののじは2017年6月に「レーベン販売」から分社化し、主力商品としてきた耳かきをはじめ、キッチン、学校給食、ボディーケア、ヘルスケアの分野の商品企画・製造・販売を行っているとのこと。それにしても気になるのはやはり、なぜ耳かきのブランドであるののじがキッチングッズ業界に参入したのか。
これについて星野さんは「ある1本のスプーンがきっかけ」と話します。従来スープを“飲む”ことを目的としてきた西洋式のスプーンは、スープをたくさんすくえるようにサジの底が深くなっていました。しかしこの形状についてののじは、カレーやピラフといった“食べる”食品にはあまり適していないのではと研究を始め、食べることやすくうこと、切り分けることや口からスプーンを抜くときに食材が残らないことなどに特化したスプーン「カットスプーン」を2000年に発売します。
このスプーンは洗練されたデザイン性に加えて、右利き用だけでなく、左利き用も開発したことが評価され、グッドデザイン賞・ロングライフデザイン賞を受賞しています。
これをきっかけとしてののじはユニバーサルデザインや学校給食・業務用器具の開発にも着手。大量の食材を効率よく調理しながらも安心で衛生的な製品を追求し、今日ではキッチングッズの開発にも取り組んでいるというわけです。
近年特にピーラーに力を入れていることについては、「ピーラーを使えば特別な技術がなくても誰でも簡単に野菜の下ごしらえができるので、ピーラーを使ってより多くの野菜を食べてもらいたいという思いがある」とのこと。包丁では難しい飾り切りも簡単にできるよう設計されています。
また「日本人は『目で料理を食べる』とも言われているように、盛り付けを重視している面もあるので、見た目の美しさは重要。ピーラーを使用することで食材の見た目を華やかにできる」と星野さん。「見た目をかわいらしくすることによって、特にお子さまがお野菜への興味を持って、食べていただければうれしく思います」と話してくれました。
実際に使ってみた
料理は好きだけれども、「切る」作業は余り得意ではない筆者。今回はののじの協力を受けて、実際に各ピーラーを使ってみました。
まず手に取ってみたのは、前述の「キャベツピーラーライト」。包丁では難しい極薄の千切りキャベツが簡単に作れるピーラーで、刃の幅が広いことと、刃にギザギザがついているのが特徴。とんかつ屋さんなどで出てくるレベルのキャベツがザクザク作れ、カット断面がギザギザになっているのでドレッシングもしっかりとからみます。
実際に使ってみると他メーカーのピーラーと比べて“引っかかりが強いこと”が分かります。キャベツをピーラーで削るという手法はかなり浸透してきていますが、基本的にはキャベツの断面をスライドさせるように使用するのが一般的です。しかし、「キャベツピーラーライト」の場合はキャベツの側面(球体の状態)に当てたとしても、ギザギザ刃がしっかりと面をとらえるのでガシガシ削れるところが特徴です。
もっとすごい商品はないのか、星野さんに伺ってみたところ網目状の野菜スライスが作れる「ワッフルピーラー」がオススメとのこと。特許技術の「出っ刃構造なみなみ刃」を使い、2ステップでワッフルのような見た目に野菜を削ることができるといい、ズッキーニや大根といった野菜はもちろん、チーズなどにも使用できます。実際に使ってみると、カルビーの「サッポロポテト」に似た感じの形の野菜がガシガシ削れます。このまま油で揚げればおつまみにもなりそうですね。
この他にも「マイクロ三角刃」で断面が薄い波型に仕上がる「根菜フリルサラダ・削り〜ナ」、2枚刃構造で食材に筋を入れ、非常に細いはるさめ状に食材を削れる「糸はるさめ削り」、筋切りからみじん切りまでに対応できる「スージー&みじん」など食材の見た目を楽しくすることができる商品がそろっているとのこと。今回はいろいろな食材を用意して削り心地を試してみます。
今回は大根、にんじん、ズッキーニ、キャベツ、きゅうりといった野菜から、キウイ、桃、レモン、オレンジといったフルーツ、ハムとこんにゃくといった削りにくそうなものもそろえてみました。
まずは野菜から。どのピーラーもやはり引っ掛かりが他社製品より強い印象で、力を入れずにすーっと引けます。特に「根菜フリルサラダ・削り〜ナ」は野菜が透けるような薄さで削れるので、大根や人参などに使ってお鍋に入れると華やかな雰囲気になりそうだなと感じました。
フルーツに関しては厚すぎず、薄すぎずの厚みで皮がむける他、レモンの皮などちょっとした風味付けに使いたいという場合にも、ギザ刃によって香りがよく立つところが便利です。また桃などの皮が薄いフルーツにも対応できるのはうれしいところ。
意外とすごかったのは、「キャベツピーラーライト」でブロックのハムを削れたこと。サラダにハムを添える際などに活躍しそうです。
耳かきのブランドとしてスタートしたののじ。これからも耳かきを中心にボディ―ケア用品の開発は続けていくとのことですが、11月10日には野菜を麺に見立てた「べジ麺」を作ることができる「ヌードルピーラー」が発売され、ますますピーラー市場に新しい風を吹き込みそうです。
(Kikka)
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